第四十七話:博多のプラットホームと乾いた宣戦布告
凄まじい風圧とともに、山陽新幹線の白い巨体が博多駅のホームへと滑り込んだ。
自動ドアが開いた瞬間、蒸気のように吐き出された熱気のなかから、一際カタギ離れした威圧感を放つ金原が、鋭い眼光をギラつかせながら九州の地へと足を踏み出した。
後ろに従う若い衆たちの誰もが、懐に重たい鉄の質量を忍ばせ、周囲を圧殺するような殺気を隠そうともしていない。
「……ここが睦会のド真ん中か。随分とぬるい風が吹いとるやんけ」
金原は駅のロータリーを見下ろしながら、フンと鼻で笑い、待ち構えていた現地の菱王会系の組員たちが用意した、黒塗りの高級車の車列へと迷いなく歩み寄った。
出迎えた現地の幹部が「金原の兄貴、ようこそお越しで。瀬戸の親分からの御指名です、すぐにでも宿へ――」と頭を下げたが、金原はその言葉を片手で冷酷に遮りやがった。
「宿なんか要らんわ。九州の芋侍どもが阿蘇の龍穴とやらに向けて腰を上げる前に、まずはあいつらの本陣の喉元、真っ正面からブチ抜いたる。……車、睦会の本拠地事務所へ直行や」
その一言で、現地の組員たちの目の色が一瞬で変わった。
挨拶も、前置きも、交渉も一切なし。博ネタのストリートに滑り込んだ十数台の黒塗りの車列は、テールランプを夜の闇に溶け込ませながら、睦会の本拠地へと向けて一斉に獰猛な加速を始めた。
――それから、わずか数十分後。
博多の裏通りに佇む、睦会の紋章が刻まれた重厚な自社ビルの前に、菱王会の車列がけたたましいタイヤの悲鳴を上げて一列に急停車した。
「おい、若い衆ども。菱王会の代紋に泥塗ろうとした代償、きっちり身体でわからせたれ!」
金原が車のドアを蹴り開けると同時に、手にした拳銃を睦会の事務所のガラス窓へ向けて容赦なくぶち込みやがった。
カァン、カァンと夜の博多に鳴り響く乾いた銃声と、激しく飛び散るガラスの破片。
それが、日本一の組織による容赦のないカチコミの合図だった。
若い衆たちが一斉に車から飛び出し、ドスと拳銃を手に睦会のビルへと怒号を上げながら突入していく。
あのコレクターの残党どもの口車に乗り、怪異の力を借りてまでのし上がろうとした九州の極道どもに対して、純度100%の菱王会の暴力が真っ正面から火を噴く、命の取り合い。
割れたガラスを踏み荒らす金原の足音の背後で、夜空を焦がすような激しい銃撃の火花が、西日本を揺るがす全面戦争のボルテージをどこまでも熱く、激しく燃え上がらせていやがった。




