第四十六話:波止場の制圧と九州への同期
激しい銃声と陰陽術の嵐が止んだ廃倉庫のなかには、引き千切られた怨霊の残滓と、ひっくり返った睦会の連中が転がっていた。
立ち込める硝煙の向こうで、山本組長は手にした拳銃を懐へと収めると、床に這いつくばって命乞いをしているコレクターの残党の首領格の頭を、その革靴で容赦なく踏みつけやがった。
「おい、九州の芋侍。菱王組のナワバリを荒らしといて、このままタダで帰れると思うとんのか。……有世ちゃん、こいつの懐、好きなだけ漁ってええぞ」
山本組長が獰猛に笑いながら顎をしゃくると、有世が足元に歩み寄り、男の胸ポケットから血に汚れた一枚の古い書付けと、奇妙な文様が刻まれた電子端末を迷いなく掴み取った。
有世はそのシャープな瞳のまま端末の画面を鋭く叩き、すぐに俺と博雅、そして道満の三人に向けて画面を差し出してきた。
「――晴明先輩、出ました。睦会がこの神戸をハサミ打ちにしながら、九州の本拠地で企んでいる次の凶悪なターゲット。……奴らが次に狙っているのは、九州の地脈の最深部、阿蘇の龍穴です」
有世のその言葉が静まり返った倉庫の空気に同期した瞬間、博雅が低く息を呑み、道満もその爛々とした瞳をさらに鋭く尖らせた。
「阿蘇の龍穴やと……? 睦会のクソども、西日本全体の霊的ラインを根こそぎ腐らせる気か。……おい晴明、こうしちゃおれんぞ」
博雅が両拳の黄金の氣を再びピリピリと滾らせながら俺を見る。
俺はポケットから五芒星のジッポを抜き出し、掌の中でカチャリと冷たい金属音を響かせながら、煙草に火を点けて深く煙を吐き出した。
「焦んなや博雅。神戸の泥はこれで綺麗に掃除できたんやから。ここから先は……あっちの仁義に任せる番だわ」
俺の視線の先、遥か西へと続く夜空の向こう側。
時を同じくして、闇夜を切り裂いて猛スピードで疾走する山陽新幹線の車内では、金原が座席の背もたれに深く寄りかかりながら、車窓を流れる街灯りの群れを静かに見据えていた。
その厳つい顔には、これから日本一の看板の威光を九州のド真ん中で証明してやるという、剥き出しの狂暴な覚悟が刻まれている。
「……ハル坊らが神戸で片付けたんや。今度はうちらが、睦会の喉元を直々にブチ抜く番やろ」
金原は隣に控える若い衆たちへ低くドスの利いた声を飛ばし、懐の乾いた弾丸の感触を確かめた。
神戸の波止場から、新幹線のレールを伝って、物語の舞台はついに九州の戦場へと完全に同期していく。
吹き抜ける乾いた夜風のなか、五芒星のジッポの火種が消えるのと同時に、西日本を揺るがす全面戦争の本当の火蓋が、疾走する鉄の塊とともに、暗闇のなかで静かに、だけど熱く切って落とされた。




