第三十九話:火生三昧の終焉と九州からのシグナル
――オ、オガァァァァァァァァァァァッッッ!!!!!
【天空】の隔離空間のなかに、この世の終わりのようなおぞましい悲鳴の音声ログが響き渡った。
博雅の『黄金の矢』によって防衛線を完全にこじ開けられた教頭のログイン座標へ、俺が放った特大の天将・騰蛇の黒紫の業火が、一パケットの容赦もなく真っ正面から直撃しやがったんだ。
独自の特級術式も、裏組織から与えられたドス黒い霊気のトラフィックも、その圧倒的な無色の氣を乗せた【火生三昧】の絶対火力の前に、みるみるうちに分子レベルへと強制上書き(完全消去)されていく。
「おの、れ……掃除屋の、ガキども、が……ッ!!」
最後に醜いエラー画面のごとく引きつった教頭のハゲ頭が、漆黒の炎のなかに消えていく。
学園のシステム中枢に深く常駐ハック(侵食)を完了させていた内通者のアカウントが、今度こそこの世界線から完全に、根こそぎタスクキルされた。
パァンッ、と鏡が物理的に粉砕されるような冷たい電子音が鳴り響き、俺たちを隔離していた【天空】の異空間セクターが霧のようにログアウト(消滅)していく。気づけば俺たちは、ドアのブチ破られた、いつもの放課後の正常値を取り戻した職員室へとリブート(帰還)していた。
「……ふぅ。これで、本当のゲームセット、やな」
俺は影の底へと騰蛇を静かにログアウトさせながら、ポケットから五芒星のジッポを抜き出し、カチャリと軽い金属音を響かせてタバコに火を点けた。
だが、その安堵 the タイムラインに割り込むように、有世のタブレットが突如として、これまでにないほど激しい警告アラート(最悪な波形)を点滅させやがった。
「――晴明先輩、博雅先輩、道満先輩! 見てください、消滅しかけた教頭のプライベートサーバーの最深部、データが完全に瓦解する直前に、とんでもない裏コードの暗号パケットが弾け飛んできました!」
有世がシャープな目のままタブレットの画面を俺たちの網膜へと突きつける。
そこには、教頭が学園の地脈を売り渡そうとしていた、学園の外部にある巨大な裏社会組織の、真のアカウント名がレンダリングされていた。
「……九州の、睦会……!」
画面の暗号ログをスキャンした博雅が、その聞き慣れない、だけど圧倒的な質量を持った組織の名前を低く口にする。
道満もその爛々とした瞳を限界まで見開き、「九州の睦会……。なんであのコレクターと一緒になって姫路に来てた巨大なフォルダ(組織)が、またうちの学園ドメインにアクセスを仕掛けてきとんねん……っ」と、背筋に走る戦慄のコードに息を呑んでいた。
なぁ、あんたならどう思う?
学校の怪談バグ(七不思議)を片付けて、裏切り者の教頭を力ずくで強制終了して、今度こそ一件落着だと思った途端にさ。そのサーバーの奥底から、神戸のストリートすら丸ごとオーバーレイ(上書き消去)しかねない、あの姫路での死闘の因縁を抱えた最大組織『睦会』の殺意のシグナルがオンライン(参戦)してくるんだ。
教頭というローカルエラーはただのバックドア(入り口)にすぎなかった。俺たちの新しい新生徒会のタイムラインは、ここから西日本の裏社会全体を巻き込み、菱王会も参戦し、さらに狂暴にクロックアップしていきやがるんだ。




