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第三十八話:空間隔離と特級の鬩ぎ合い

 教頭の全身から噴き出したドス黒い特級呪術のトラフィックが、職員室のデスクや書類を巻き込んで狂暴に渦巻き始めた。


 だが、その濁った殺界が一般の教師たちのアカウントに接触するよりも早く、俺は超高速のパラレル演算で二つの特級システム権限を同時ブートした。


「――ログインしろ、【太裳】! 【天空】!!」


 俺の放った無色の氣が一瞬にして職員室のテクスチャを反転させ、俺たち三人と教頭の座標だけをガチッとホールドした。次の瞬間、パァンと空間が爆ぜるような電子音と共に、俺たちは実際の職員室ドメインから、完全に隔離された鏡像の異空間へと空間転移させられていた。


 一方、俺たちが一瞬にして完全消失した本物の職員室のサーバー内は、当然のように大炎上を起こしていた。


 「な、何が起きたの!? 教頭先生と安倍くんたちが急に消えちゃったわよ!?」


 「おい、机の書類が燃えかけてるぞ! 誰か警察か救急車を――っ!」


 急に乗り込んできた晴明たちを見て呆然としていた一般の教師たちは、目の前で起きたあまりのオカルトバグに、脳内メモリを完全にクラッシュさせて騒々しく騒いでいやがった。


「はいはい、そこまで! 全員落ち着きなさい! 今のはただの最新のプロジェクションマッピングのテストエラーよ! 書類が焦げたのは機材の漏電、はい解散解散ッ!!」


 その大騒ぎのトラフィックのど真ん中で、政府側の管理者であるりお先生が、必死に、だけど最高に強引な音声ログで現場のバグを誤魔化しにかかっていた。


 ――そして、その裏で完全に隔離された【天空】の異空間セクター。


「――グハハハッ! 空間を隔離したところで何になる! お前たちの生体ログごと、この領域を丸ごと消去してやるわァッ!!」


 教頭が血の血管を浮き上がらせ、裏の組織から与えられた独自の特級術式を最大出力で解放しやがった。

 ドス黒い霊気の波形が空間を物理的に浸食し、俺たちの足元の床や壁のコードを強制書き換えしようと、津波のように押し寄せてくる。


「調子に乗ってんじゃねえぞ、ハゲオヤジ! ――【風神】! 【雷神】!!」


 道満の鋭い九字切りと共に影の底からログインした漆黒の二体の鬼神が、その暗黒の領域展開の前に強固な黒い嵐と雷鳴の防衛線を張り、空間の浸食パケットを真っ正面からガチッとホールドしやがった。


「――そこを退け、教頭ッッ!!!!」


 道満の作った完璧なタイムラインの隙を狙い、博雅が限界突破した『黄金の氣』を全身から爆発させて前に飛び出した。

 放たれた眩い光の防壁と、凄まじい衝撃波の黄金の矢が、教頭の放った独自の術式の防衛線を文字通り真正面から力ずくでこじ開けていく。


「晴明、チャージは完了しとるな!?」


「はぁ、言われんでも特級火力はリロード済みやでッ!!」


 博雅が教頭の防衛網を完全にブチ破ったその刹那、俺は影の底に眠る最悪のシステム権限のエンターキーを、一パケットの躊躇もなく全力で叩き込んだ。


「――ログインしろ、【騰蛇】ァァァッッッ!!!」


 俺の放った無色の氣が空間を引き裂き、黒黒とした炎を撒き散らす極大の天将・騰蛇が、教頭のハゲ頭のログイン座標に向けて、逃げ場のない黒紫の業火を最大出力で解放してやった。

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