第三十六話:カウンター・パッチと決戦のカウントダウン
有世のノートPCの液晶画面が、教頭のプライベートサーバーから吸い上げられた膨大な不正ログの光を放ち、四人の冷徹な瞳を真っ白に照らし出していた。
地脈改変の実行コマンド、巨大な裏組織との二十四時間同期トラフィック。これだけの決定的な裏コード(証拠)が揃えば、もう言い逃れの余地なんざ一パケットもありゃしねえんだ。
「これだけのログがあれば、教頭のアカウントを裏社会ごと完全に社会的にデリートできます。……晴明先輩、このデータを政府にある麗子総理の最高管理回線へ直接転送しますか?」
有世がシャープな目のまま、キーボードの上に指を置いて次のコマンドの承認を求めてくる。
「いや、そんなお役所のトロい処理パッチを待っとる猶予はない感じかな。そんなことしとる間に、あのハゲ頭にメインサーバーを丸ごと裏社会へ書き換えられたら、それこそ本当のゲームオーバーやし」
俺は椅子の背もたれから上体を引き起こし、両拳に無色の氣を静かにリロードし始めた。
「――よし、この特級の違法ログを持って、明日の朝一番に教頭がいる直接職員室へカウンターハック(突撃)を仕掛けたるわ」
「はは、いいなそれ! 停学処分を食らったその翌朝に、最高管理者の顔をして職員室の真正面からログインしにいくわけか。教頭のあのニヤケ面が、どんなエラー画面にフリーズするか今から楽しみやわ!」
博雅が両拳の黄金の氣を爆発させるように低く鳴らし、不敵なイケメンパッチを最高出力でリブートさせる。
「うちも大賛成やんか。うちらを檻に閉じ込めたつもりで油断しとるあのオッサンを、明日の朝一番に正面から直接強制シャットダウンしたるわ」
道満も戦闘用コートの袖を強く握り締め、その爛々とした瞳の奥に、芦屋流のドス黒くも獰猛な殺気のパケットを同期させていやがった。
なぁ、あんたならどう思う?
タバコがバレて一週間の家庭謹慎を食らったはずの不良生徒たちがさ。その処分の翌朝、職員室のメインドメインへ真っ正面から殴り込みをかけて、学校のナンバーツーを力ずくで強制終了しにいこうとしてるんだ。
向こうが学則という壁を使って俺たちのリソースを制限しにきたつもりなら、こっちはその死角から、安倍家の特級出力と芦屋の鬼神、そして全員の絆を掛け合わせた最悪のカウンタープログラムを直接脳天に流し込んでやるだけだ。やりたかないねー、ホンマによー!
「有世、お前はフォックス・テイルの二階からバックヤードの通信ジャミングと、証拠データの常駐プロトコル(バックアップ)を頼むわ。博雅、道満、行くぞ。……プロのデバッガーをハックした代償、あのハゲ頭のメモリに骨の髄まで叩き込んでやるんだわッ!!」
俺はポケットから五芒星のジッポを抜き出し、カチャリと軽い金属音を夜の闇に響かせながら、液晶画面の教頭の顔写真に向けて冷徹に言い放った。
学園七不思議を超え、動き出した新生徒会の本編プログラム。最高管理者たちの命をかけた、明くる朝の決戦へのカウントダウンが、今ここに完全コンパイルされた。




