第三十五話:サルベージ・ログと暴かれる裏コード
旧校舎の影に潜む有世のノートPCの液晶画面が、突如として禍々しい漆黒のシグナルを点滅させ始めやがった。
夜の職員室へとログインした道満の風神・雷神が、教頭のプライベートサーバーの最深部へと到達し、内側から防衛プロトコルを食い破った合図だ。
「――っ、来ました! 晴明先輩、道満先輩の風神・雷神が教頭の私設端末を完全にジャックしました。現在、内部ストレージから地脈改変のログをこちらの画面へ強制サルベージ(転送)しています」
有世のシャープな音声ログと同時に、液晶画面の暗黒ドメインへ、教頭のサーバーから抜き出された不気味な裏データが、次々と濁ったコードとなってレンダリングされ始めやがった。
画面をスクロールするたびに溢れ出す、おぞましいアクセスログの数々。
そこには、俺たちがデバッグしてきた学園七不思議のシステムエラーを、裏から強制起動させるための実行コマンドが、日付入りでびっしりと記録されていやがった。
「うわ……マジで。名越先生をハックして美術室の怪談を道満にチクらせた命令ログも、全部ここから送信されてるやんか」
画面のトラフィックをスキャンしていた道満が、忌々しそうに拳を握りしめる。
「それだけとちゃうぞ、晴明。この『地脈反転パッチ』の通信履歴……教頭の個人サーバー、学園の外部にある見たこともない巨大な裏組織の暗号ドメインと、二十四時間体制で常時同期(通信)しとる。教頭はただのハッカー(内通者)や。この学園の底に、もっとデカいバグの温床を呼び込もうとしとる奴が裏におんぞ」
外周の監視に回っていた博雅が、インカム越しに冷徹なプロファイル分析を俺たちの脳内OSへと同期してきた。
なぁ、あんたならどう思う?
タバコがバレて停学になった不良生徒たちがさ、真夜中の闇の中で、学校のナンバーツーである教頭の犯罪ログ(国家転覆レベルの違法術式)を、鬼神を使って根こそぎブチ抜いてるんだわ。
だけど、画面にレンダリングされていく最後の1パケット――教頭が裏組織とやり取りしていた、次のシステムエラーの暗号暗号をスキャンした瞬間、俺の脳内CPUは最悪な胸騒ぎで一気にフリーズを起こしかけていた。
「……チッ、やりたかないねー、ホンマによー。証拠ログは100%確保したわ。だけど教頭のオッサン、俺たちを学校からシャットダウン(停学)させてる間に、この学園ドメインそのものを丸ごと裏社会に売り渡すつもりだわ」
俺はポケットから五芒星のジッポを抜き出すと、カチャリと軽い金属音を響かせ、液晶画面に並ぶ黒幕たちのソースコードを冷徹に見据えた。
学園七不思議というプロローグの裏で回っていた、真の本編プログラム。その最悪な全容が、真夜中の職員室の底から、今まさにすべてレンダリングされようとしていた。




