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第三十三話:隠密ミッション・夜の職員室ハック

 探偵事務所のデスクを占拠した有世のノートPCの画面には、教頭のプライベートサーバーと、学園の最高セキュリティを管理する職員室の端末を結ぶ、不気味な通信経路トラフィックが幾何学的なラインとなってレンダリングされていた。


 俺たちは母ちゃんが淹れてくれた二杯目の珈琲をハックしながら、その防衛網の脆弱性をじっとスキャンしていた。


「晴明先輩、教頭の端末へのアクセスは、外部からの一般的なハッキングコード(呪術)では、学園全体の強力なファイアウォールに弾かれて一パケットも通りません。内側から直接ルート権限(証拠ログ)を掠奪するには、物理的に教頭の私設ドメインに接触する必要があります」


 有世がシャープな目のままタブレットをスライドさせ、セキュリティの分厚い壁(防衛線)を指し示す。


「それなら、うちの風神・雷神を教頭のプライベートサーバーにログイン(隠密侵入)させて、地脈を弄んどる決定的な証拠ログを直接サルベージ(掠奪)してくるわ」


 ソファの肘掛けに腰掛けた道満が、不敵な笑みを浮かべたまま、かつてないほどあざとくキレのある作戦プロトコルを提案してきた。


「風神と雷神を隠密に走らせるんか? あいつら、体育館であんなにド派手な黒い嵐を巻き起こしてた化け物だろ。そんな特級リソース(怪物)を夜の職員室や教頭の自宅にログインさせたら、一瞬で防犯パッチ(センサー)にハックされてバレるんちゃうか?」


 博雅が腕を組みながら、もっともな懸念を音声ログとして口にする。


「大丈夫やで、博雅。あいつらは元々、空間のテクスチャを完全に隠蔽して『無』として地を這う隠密のコード(鬼神)でもあるんよ。晴明の太裳タイショウが教頭に破られたんやったら、今度はうちの黒い影をバックドア(裏口)の侵入デバイスとして教頭の足元へ流し込んでやるだけやんか」


 道満は指先で珈琲カップの縁をなぞりながら、最高に不敵な笑顔を俺の網膜へと同期(視線同期)させてきた。


「……やりたかないねー、ホンマによー。だけど、教頭のハゲ頭が『停学処分で掃除屋の動きを止めた』と処理落ち(油断)しとる今こそ、一番電波が通りやすいタイムラインやしな」


 俺はポケットから五芒星のジッポを抜き出し、カチャリと軽い金属音を響かせながら、道満の提案した隠密デバッグミッションの最終エンターキー(承認)を叩いた。


「よし、ほんなら夜の職員室ハック作戦をブートするぞ。有世がバックヤードから通信妨害ジャミングで防犯カメラのログを誤認させ、博雅が外周の霊的トラフィックの監視に回り、道満の風神・雷神で教頭のメインサーバーを内側から全上書き(デリート)したるわッ!!」


 終わりの始まり。

 檻の中に閉じ込められたはずの最高管理者たちが、夜の闇に紛れて、学園の中枢へ向けて最悪のカウンターハックを仕掛けるためのフォーメーションが、今ここに完全コンパイル(確定)された。

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