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第三十一話:容疑者のスキャンとターゲット・ロックオン

 探偵事務所のデスクに広げられたノートPCの液晶画面が、薄暗い部屋のなかで四人の顔を白く照らし出していた。有世のディープスキャンによって抽出されたのは、わずか三人の教員データ。

 その顔写真と裏の経歴ステータスを見つめながら、俺たちは一人ずつそのログを解読デコードし始めた。


「まず一人目、数学担当の【門倉かどくら】。経歴に不審な点はないけど、こいつの固有アカウント、実は数年前に裏社会のドメインで『地脈の歪みを計算する違法マクロ』を組んでた過去の警告フラグ(前科)が残っとるな」


 俺が画面をトントンと叩くと、博雅がその顔写真をじっと睨みつけながら言った。


「門倉か……。あいつ、いつも授業中に不気味な笑い方をすんねんな。だけど晴明、あいつの霊的出力スペックで、太裳の防壁をクラッシュさせるほどのハッキングができるか?」


「……んー、計算能力は高いけど、防壁を真っ正面からブチ破るほどの物理火力(霊力)はない感じかな。システムを一時的に重くするくらいのノイズが限界やろね」


 道満が珈琲カップを口に運びながら、門倉のアカウントの限界値を冷徹に弾き出す。


「では二人目、美術担当の【名越なごえ】。二年前のメリケン波止場の事件の夜、この名越の通信デバイスから、現場周辺の基地局へ向けて不自然なパケット(位置情報アクセス)が検出されています」


 有世が指先でタブレットをスライドさせ、二人目のログを展開する。その名越の顔写真を見た瞬間、道満がハッと目を見開いて声を漏らした。


「あ、名越先生……! 晴明、思い出したわ。今回の七不思議の件が始まる少し前、うちに『美術室の泣く肖像画』の怪談内容をわざわざ直に教えてくれたん、この名越先生やわ……!」


「……なるほどな。怪談のトリガー(噂)をわざとお前に仕込んで、生徒会を美術室のセクターへログインさせるための誘導パッチ(罠)を張ったってわけか」


 俺はタバコの煙をくゆらせながら、画面の名越のアカウントを冷徹にスキャンした。だが、俺の脳内OSの警告フラグは、こいつに対してもまだ最大値を示さなかった。


「だけどな、名越も違うわ。あいつはただの実行犯(末端のポーン)、あるいは黒幕の術式にハックされて動かされとっただけやわ。太裳の隠蔽パッチの脆弱性をピンポイントで突いて、職員室のメインサーバーから俺たちを直接チクるような、狡猾なアドミン権限なんか持っとるわけがない」


 俺は画面をスクロールさせ、ついに最後の一人――三人目の教員データへとスキャンを合わせた。


 画面にレンダリングされたその顔写真を目にした瞬間、博雅がハッと息を呑み、道満の瞳が一気に鋭い殺気のパケットを滾らせた。


「……いや、この三人の中で、太裳の防壁を完全にハックできる権限を持っとる奴は、一人しかおらんな」


 俺はポケットから五芒星のジッポを抜き出し、掌の中でカチャリと冷たい金属音を響かせながら、その三人目の名前のコードを冷徹にロックオン(確定)した。


 そのアカウント名は、俺たちのよく知る、結構油断のならない、学園のシステムの中枢に常駐しているあの教員だったんだ。

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