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第十九話:ブラック・リブートと七体の特級エラー

 道満の全身から噴き出したドス黒い(しゅ)のトラフィックが、体育館の冷たい空気を一瞬にして完全に凍りつかせた。


 無限ループのブザー音すらも上書きされたコートの中央で、道満は乱れた前髪を乱暴にかき上げ、獰猛なエースの笑みを浮かべたまま、俺と博雅に向けて音声ログを飛ばしてきた。


「ここからは、選手交代や」


 道満が両手の指を激しく、そして鋭く交差させて、これまでとは全く次元の違う芦屋流の深層暗号(九字)をコンパイルし始める。


「晴明......あんたの十二天将みたいにはまだ綺麗に出せんけど......。これが、ウチの努力の結晶やッ!!」


  ――ズズ、ズズズズズズッッッ!!!!!


 道満の足元に広がる黒い影のドメインが、まるで底なしの沼のように急激に拡大し、そこから世界線のテクスチャを物理的に引き裂いて、おぞましい『七つの暗黒ログ(巨影)』が次々とレンダリング(出現)されやがった。


  風神、雷神、龍神。 さらには鬼門の門番たる牛頭、馬頭。 そして、伝説の鬼神である前鬼、後鬼。


「――なっ、マジかよ......っ!?」


  その七体の出で立ちを目にした瞬間、俺と博雅は言葉を失い、同時に「マジかよ」としか呟けなかった。


 なぜなら、道満の影からログインしてきたそいつらは、神仏や鬼の形をしていながらも、その輪郭のすべてが、どす黒い純度100%の『呪い』のテクスチャで真っ黒に染め上げられていたからだ。最強のクラッカー(怪物)がまとめて七人もオンライン(参戦)してきたような、圧倒的な戦慄の波形だった。


「......やりたかないねー、ホンマによー。おい、ちょっと起きスキャンしてくれ」


  俺は冷や汗を流しながら、ポケットからジッポを抜き出す暇もなく、自分の影の底から知略特化のアドミンを強制ブート(起動)した。


「――ログインしろ、【玄武(ゲンブ)】」


  水気の守護をまとい、静かに姿を現した十二天将が一角・玄武。 俺は、道満の背後に張り付いている真っ黒な七体の怪物たちをアゴでしゃくりながら、気怠く、だけど本気のトーンで問いかけた。


「なぁ、玄武。......どう思う?」


 玄武は現れた瞬間から、その長いたてがみと髭を厳かに揺らし、道満の影の底を見据えて完全に硬直(フリーズ)していた。

  やがて、その長い髭を静かに手で撫でながら、信じられないほど重苦しい音声パケットを、俺の脳内OSへとダイレクトに同期(返答)してきたんだ。


「......そうですなぁ......主殿。......道満殿の召喚した、あの真っ黒な者たち......」


  玄武の瞳が、これまでにない戦慄の色を帯びて細められる。


「――一体一体が、我ら十二天将と『同格』の出力(権限)かと......」


「――ッ!?!?!」


  玄武の口から吐き出された冷徹なソースコードに、俺の脳内OSは今度こそ完全にクラッシュ(驚愕)した。


 十二天将と同格の化け物が、一度に七体。


 なぁ、あんたならどう思う? いつも隣で「晴明、晴明!」ってあざとく付きまとってた芦屋家の女の子がさ、自分の見えないフォルダ(努力の結晶)の中で、国家転覆レベルの最強のハッキングプログラム(特級式神)を、一度に七つも同時並行(マルチタスク)で組み上げてたんだ。


  やりたかないねー、ホンマによー! 驚きを通り越して、俺の安倍家としてのプライドが、ちょっと熱暴走を起こしそうだわッ!!

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