あとがき
彼らとの日々が、終わった…終わってしまった……
と同時に、
なに、これ??
なんだ、………これ!?
という気持ちしか出てきませんでした。
今回は異世界グルメ物に軽く挑戦してみるつもりが、自分の中に産まれたプロットは約80話分に……
そしてそこからこの物語を書き上げていくまでの期間はおよそ10日ほど。その後は日々ひたすら文章を推敲し、私にできうる限りの表現を吟味しながら仕上げて公開しています。
私の中で突如鮮明に息づき始めた彼らは、常に頭の中を生き生きと自由に動き回り。彼らのやりたいこと、やるべきことをやるそれを必死で追い、見える光景をただ写し取るその工程は、私の中に蓄積されていたものすべて削り出すような作業になってゆきました。
本の虫と揶揄された小学生〜高校時代、人生の経験、また自分でも気づかなかった、もしくは絶対に気づきたくなかったその深層にある意識。
意識が半分眠っているような時ですら彼らの背中を追いかけていました。物語が降りてくるとはこういうことなんでしょうか。潜在意識の中で、彼らの行動が、その思いが、全てのピースが、はまってゆくあの感覚。
そのせいか、普段は触れることのない深層心理の奥底を漁ってかき混ぜたような言葉や展開が溢れ出しています。
小学生低学年の頃に繰り返し読みふけっていたシェイクスピア等の影響も幾ばくかは残っていたのかと思ったり、スマホのメモの長文の打ち込みを朝に読み返し「これ、本当に私が書いた?いつの間にこんな話に……!?」と自分で驚くこともありました。
作中のクライドのセリフ――「魂を半分くらい削られた気分なんだよ?」は、まさに書き終わった瞬間の私。
顕在意識と潜在意識の境界線が曖昧になってゆく中、自分の中身をすべて浚さらって書き上げ、消耗しきって数日真っ白になっていました。こんな経験は人生で初めて。もう無理、二度と無理。(ちなみに3キロ減りましたw)
第一章の、女神の平和管理システム崩壊に伴いその安寧が終わりをつげた世界に、第二章ではじわりと胎動してくる魔族はこんなに恐ろしいんだよとその余興デモンストレーションを熱量高すぎると思いながら描き(あの、ひたすら推敲と表現を吟味する悍ましい作業…w)、その後この世界に残った聖女たちが各地で活躍し始めるのだろう…となった瞬間にはたと止まりました。
この物語はここで終わる!どうやったって終わってしまう!!と。
そもそも、これまで平和が約束されていた世界には、魔王と戦える勇者がまだ存在しない。魔王なんて伝説レベルの認識で、まともな備えもない時代。そんな彼らが今戦うのはどう考えても無理がある。
もちろん、魂の繋がりによってレイの無尽蔵な力を共有したクライドにどっかんどっかん無双(笑)させることはできなくはない。でもどう考えてもそれはこの物語の進むべき形ではない、となりました。各地に侵攻してくる魔族たちとの戦いは、後に現れるであろう勇者様にお任せすることにします。
それに、魔族たちとの争いが勃発する未来を考えるとなると、彼らの誰をも死なせたくない、欠けさせたりしたくないと思ってしまったんですよね。そうなるともう、用意していた最終話を先に清書することにして、そこから遡っていた部分もあります。
もし第三章を《神々と魔族の時代》として描くなら、どうしてもその戦闘を描くことになってしまうので、アイ、クライド、レイという永遠を得た彼らとその家族に焦点を絞り、魔族の侵攻は這い寄る混沌的な予兆として描くにとどめました。この世界がどうなってゆくかは、それも想像にお任せということで。
この章の77話と78話は、当初はこぼれ話になる予定でした。当初はその後の3話分で《神々の時代》として短くさらりと終わっていたので、かなり悩んでから本編へと。これも彼らの声で書かされたとしか言えないです。
そもそもアイという名前は、女神自身であることを示す記号として、英語の「I(私)」のつもりで付けたものでした。書き始めた当初は、そこに《愛》という意味を重ねるつもりはまったくなかったのですが、彼らが自分たちの意志で、アイに愛を与える行動を始めたのです。
彼女が目覚めたのは十年後かもしれないし、数百年が過ぎたのかも知れない。女神となったアイの姿はあえて詳しく描写していませんが、羽化した彼女は、きっと外見も言動もオトに影響を受けた子になったんだろうな……と思っています。
一本の時間軸で敷かれた本編、このあとがき後には、本編を補完するような零れた話があります。
もしこれからも彼らが語りかけてくることがあれば、こぼれ話はぽつぽつと書いてみたいと思っています。
この物語は、私にとって本当にあり得ないほど何事にもかえがたい経験になりました。この物語を生み出すきっかけをくれたすべてに感謝しています。
読んでくださっている方がおられましたら、私の拙い物語にお付き合いくださりありがとうございました。




