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第4話:深夜のケチャップは愛の味

深夜、私は再び厨房に立っていた。


昨夜のヴァインの『肉の多いやつ』というリクエストが頭を離れず、結局、鶏肉を贅沢に使った特製オムライスを作ることにしたのだ。


そうと決まれば、まず鶏肉を大きめのぶつ切りにし、軽く火を通してからフライパンから出しておく。その脂の入ったままのフライパンに、たっぷりの高品質なバターをフライパンで熱し、ご飯に均等に絡めながら炒める。具は鶏肉の他にはシンプルに玉ねぎと人参にした。ちゃんと野菜も採らなきゃね。


フライパンに戻した具とともに炒めた、黄金色のバターが香ばしいチキンライスができあがったその時、背後から強烈な甘い声が突き刺さった!


「んん〜っ! なにこの、魂を揺さぶるデリシャスなフレグランスは!?」


振り返ると、そこには派手なピンクリボンのツインテールの美少女が立っていた。51番目の聖女、16歳のマナミだ。


「あ、マナミさん。こんな時間にどうしたのですか?」


「え〜、さん付けはやめて!マナミでいいよオトちゃん。 お水飲みに来たんだけど、それより何それオムライス!? 私のソウルフードじゃん!」


マナミは前世でメイドカフェ勤務だったらしく、この神殿でも『萌え』を布教しようとしている、ある意味私以上の?変わり種だ。


「一口、食べる?」


「食べる! むしろ食べさせて!」 


抱きつくくらいの勢いで迫ってくる……距離感がバグっているような。



生活魔法チートで卵のタンパク質を完璧に整えて、シルクのような滑らかさを実現した卵でチキンライスを包み込む。仕上げに自家製ケチャップで波模様。


「はい、どうぞ。お口に合うか分かりませんが。」


マナミは差し出された皿を前に、スッと背筋を伸ばして指を振る。


「ちっちっ、オトちゃん分かってないわね。オムライスにはサービスが必要なのよ!」


そう言うと、彼女は指でハートを作り、キラキラした笑顔を振りまいた。


「おいしくな〜れ、萌え萌えキュンキューン☆

ふふ、これで完璧。いただきまーす!」


…やっぱりこの人、面白いな。

少し呆れながらも苦笑する私の前で、マナミがオムライスを小さなお口へと運ぶ。

その瞬間、彼女の動きが止まった。


「…っ!? ……ふぇ、あ…

たまごが、熱くて、とろとろで……わたしの舌を、なでなでしてるみたい……っ!

お肉とバターがすごく濃くて、なんだか体が熱くなってきちゃったぁ…」


「………大袈裟だよ…」


うわぁ…ちょっと、というか、かなり引くわ。


「大袈裟じゃないわよ! ねえオトちゃん、あなた最高!決めた、今日からあなたの専属メイド…じゃなくて、あなたを私の『推し』にする!」


マナミが潤んだ瞳で私の手を握りしめ、上気させた顔を近づけてくる。さっきのオムライスの何がそうさせるのか、獲物を狙う肉食獣のように私の手をがっしりと掴んで離さない。

…近い。この人、やっぱりちょっとソッチ系?


「ねえ、オムライスあーんして? そしたら私のとっておきの魔法、教えてあげ……」



ギィ……ッ。

空気を読まない重厚な音が厨房に響いた。

現れたのは、約束通りごはんを求めてやってきた死神こと第三騎士団長のヴァインだ。

彼は私に詰め寄るマナミを見て眉間のシワを深く刻んだ。あ、困惑しとる。


「…貴様ら。夜中に何をしておる。」


「あ、団長。これは、その…」


「あら、団長さん? ん〜邪魔しないで。今、私とオトちゃんは愛の儀式の最中なんだから。」


マナミの爆弾発言に、ヴァインの額に青筋が浮かぶ。


一方で、彼のその鼻腔は、オムライスから漂う甘酸っぱいケチャップの香りをしっかりと捉えていた。

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