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第2話:漆黒の厨房と、黄金色の背徳飯

私が転生したのは、ローゼンブルグ帝国の荘厳な大聖堂だった。

女神に召喚された54番目の聖女として丁重に迎え入れられた―はずだったのだが。


「オト。悪いけど、1番から10番の聖女様たちの朝の洗顔水を用意しておいてね。あとで、11番から30番の聖女様たちのシーツ交換もね。」


「あ、はい……承知いたしました!」


そう。たいした魔力も無い上、54番目ともなれば、聖女の中でも雑用係である。


魔力の強い聖女様たちは、日々強力な結界を張り、王や高位貴族と交流しなければならないので、可哀想にいつも疲れているらしい。


一方の私はといえば、魔力が低すぎて結界一つ張れないので、神殿の隅々を掃除して、事務職の経験を活かし備品の管理をする係である。

忙しい聖女様たちと違いゆったり過ごせる上、同僚と一緒におやつを食べたりと、とても仲がよい。さらに衣食住が保証されて、適度な運動の時間もある。

ここは天国か!


それに、私にはこれがある。

女神様から授かった『生活魔法』だ。

この魔法、実は超が付くほど便利で、聖女仲間たちからも重宝される優れもの。


自身のレベルの都合上、高級食材を召喚するような真似はできないけれど、前世の調味料なら大抵のものは再現できるし、パサパサに乾燥したパンだって生活魔法で蒸し直せばこの通りふんわり。水分量が完璧に調律され、まるで焼き立てのようなもっちりとした極上の食感が蘇るのだ。



―そして、運命の夜は唐突に訪れる。


深夜、私は我慢できずに厨房へと忍び込んでいた。

昼間に薬草園の隅で見つけたローゼンブルグ版・九条ネギのような野草とカチカチの干し肉。これらを見てしまったら最後、どうしても前世で愛した『深夜のネギチャーハン』を再現せずにはいられなかったのだ!


聖女たるもの、常に健康的ヘルシーで清らかでいなければならない。

けど! お腹は空くんだもの!


私は女神からもらった魔法を、贅沢にもたっぷり油へと注ぎ込んだ!!!

フライパンの中の酸化した古いラードを、不純物ゼロの最高級ラードへと調律し、刻んだたっぷりのおネギを少し焦がし気味に炒める。

冷やご飯の一粒一粒を熱々の黄金色でコーティングしていく。

カチカチの干し肉は魔法でしっとり柔らかくほぐして、フライパンの中へ。

お塩と胡椒で少し味を整え、フライパンの縁からお醤油を絡める。


深夜の静寂に響く、ジュウゥゥッという脂の爆ぜる音と、醤油が焦げる芳醇な香り。


「ふふふ…完璧。これぞ背徳ギルティ!」


出来上がったネギチャーハンをレンゲですくい、まさに至福の一口を運ぼうとした、その時。


ギィ……ッ。

古びた厨房の扉が、心臓に悪い音を立てて開いた。

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