表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/51

第11話:第三騎士団、黄金の衣に散る

「…団長。後ろ、気づいてます?」


トンカツをフォークに突き刺したまま団長に告げる。


厨房の入り口の暗がりに、ギラギラと光る十対の眼があった。

ガシャリ、と鎧の触れ合う音とともに姿を現したのは、ヴァイン直属の部下――夜間の神殿警備を一手に引き受ける、第三騎士団の精鋭10名だ。


その先頭に立つのは、副団長のギル。ミルクティー色の爽やかな短髪に涼しげな顔立ちのイケメンだが、今はその爽やかさをどこかに置き忘れてきたらしい。


「報告します、団長!我ら、深夜の巡回任務中ですが、あまりに善き香りが鼻腔を蹂躙したため、戦線の維持が困難と判断しました!」


…格好つけているが、要するにお腹が空いたんだ。


ギルの背後では、屈強な精鋭たちが、捨てられた仔犬のような目でこちらを見つめている。


「…チッ。ギル、貴様ら。職務中だぞ。」


お前が言うな。


「団長!その黄金の塊を一口いただけるなら、明日の訓練は3倍に、いや、5倍にしても構いません! 頼みます、このままでは夜勤が越せません!」


ギルたちの決死の訴えに、私は損得勘定を働かせた。一角猪ユニコーン・ボアの残りの肉を一気に片付け、かつ強力な味方を作るチャンスだ。


「…わかりました。団長、彼らにも振る舞っていいですね? その代わり、今後私が厨房で何をしていようと、騎士団の特権で見逃してください。」


「…勝手にしろ。ただし、俺の肉を奪うなよ。」


ヴァインが諦めたように肩をすくめた瞬間、私の深夜営業ざんぎょうが始まった。


シュワァァァッ……!


フライパンに次々と投入される、魔法で柔らかくした魔獣の肉。サクッ、ザクッ、と、静寂を切り裂く快楽的な音が、再び深夜の厨房にリズミカルに響き渡る。


「はい、お待たせしました! 10名分、揚げたてです!」


皿のトンカツを精鋭たちが一斉に口にした瞬間、彼らは文字通りがくっと膝をついた。


「っ……!! なんだ、この……暴力的なサクサク感は!」


「肉汁が…肉汁が溢れて止まらん! この脂、魔力が直接血管を駆け巡るようだ…!」


ギルは震える手で最後の一切れを口に運ぶと、憑き物が落ちたような顔で空を仰いだ。ソースのついた口元を拭いながらしみじみと呟く。


「…はぁ。深夜の凍えるような警備の合間に、こんなに温かくて、魂が震えるほど旨い飯にありつけるなんて。」


感極まったようなギルの言葉に、背後の騎士たちも揃って深く頷いた。


「ここは救いそのものですよ、オト様。夜勤が初めて楽しみになりました」


私にすっかり懐いた騎士たちは「お代わり!」と皿を差し出す。ヴァインは、部下たちの情けない姿を冷ややかに見つめながらも、自身もまた、お代わりの皿を差し出す前に、ソースの最後の一滴をキャベツで拭い取っていた。


食べ終わったら、皆に血のついた床の掃除をしてもらおう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ