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【110話】ランディ帰還

諸事情により、最後空白の改行をたくさん使っています。


 国王であるウィルソン・フォン・アルカディアは、自分の息子サンジェルマン王子に、怒り心頭だった。


 まさか息子の悪ノリに、王宮騎士の代表であるキャリスまで乗っかるとは思いもしていなかった。


 さらに、元王宮騎士のスクット・リッツまでやってきて、サンジェルマンの企てに参加してしまった。



 結果、この特別観戦室は騒がしくなり、その後静まり返ってしまった。



 そう、国内最強騎士団の王宮騎士のトップと、元王宮騎士十傑の二対一の戦いで引き分けたのだから。



 戦いに疎い公爵もいるが、それでも理解できる。

 ランディと言う少年が、ぶっちぎりで国内最強の男だと。


 国王は罰として、サンジェルマン王子に逃げたランディの捜索を命じた。


 この後、国王は6人の公爵に取り囲まれる事になった。



 ◆◇◆◇◆



 僕は今、だれもいない場所で、ひっそりと隠れている。


 にげる気になれば、余裕で逃げられるけど、シオン兄弟に会いに来たのが目的だし、王様にも挨拶したい。


 ただ、あのバカ王子には、冷たくしてやろうと、タイミングを計っていた。


 さすがに他の人がいる前で暴言なんて吐いたら、死刑を宣告されてしまう。

 まあ、死なないけど。


 しかし、僕の隠れ場所は簡単に見つかってしまった。


「クンクン……ぼっちゃまの香りが強く……ここですね。……ほら見つけました」


 レジーナさん!? いったいどんな嗅覚をしてんの?



「やあレジーナ、久しぶり。元気にしてた……ウプッ」


 勢いよく突進してきたレジーナの巨乳に挟まれた。

 な、なんと心地よいのか。


 こたつ、床暖房、ビーズクッションに並ぶ程の一品。


 まるで、ダメ人間製造器だ……


「ぼっちゃまが来たって事は、生活基盤が出来たのね。私を連れていって下さいまし……」


 淡々と話していたレジーナは、泣いていた。

 そうだ、レジーナは僕を慕っているのに随分と放置プレイをしたもんな。


「学院は問題なく辞めれる?」


「えっ!? は、はい大丈夫です。今日にも辞めますから。でも、アリサはどうするのかしら?」


 娘より、僕かよ?

 でも、ハゲジィと国王には報告しておくか。


「解った、レジーナ……一緒に王都に行こう。そうだ、これから役に立ってもらうから、王様に紹介しよう」


 レジーナはビックリした顔をする。


 そうか、ただの国民が王様と会わせるなんて、常識はずれだったな……反省。


「そんな、国王様に結婚の報告なんて、畏れ多いです」

 幸せそうに顔を紅く染めて、もじもじしてる。



 畏れ多いのは、お前の考えだよ! だれが結婚の報告なんてするか!!

 恐い、レジーナめっちゃ恐い。


 油断してると、取り返しのつかない事態まで、足を踏み入れてるかも知れない。


「いやレジーナには、食を担当して欲しいんだ」


「ぼっちゃまの胃袋を掴めと? 自信あります」


 微妙に話が伝わらない。


「まあ、いいや。後、シオン兄弟を見つけてから、王様に謁見の許可を貰おう」


 ◇◆◇◆◇



 それからは、トントン拍子に事が進んだ。


 シオン兄弟と親を見つけ、ウエストコート公爵に事情を話して、王様との密会の約束を取り付けた。


 そして、レジーナ、アリサをこの場で王都に一緒に連れて行く事を報告して、ランディ商会を立ち上げる話と、中枢人物の紹介をした。


 これにより、ランディ商会の正式な発足はもう少し先になるが、実質的に商会の立ち上げは完成見た。


 ランディ商会

 会長、イルムナ・シオン

 食品部門長、レジーナ

 創作担当、アーティス、テイン

 人身売買担当、カッティー・ドーン

 影のオーナー、ランディ・ライトグラム


 主な取引先

 王都、知り合いの皆様。

 ウエストコート公爵領、シオン商会、担当メクルカ・シオン。

 ムアミレプ王国、女王直轄の商会。

 ターベール王国、宰相ムニエル・フォン・ターベール。

 アルテシアンナ王国、ドルデルガー公爵他多数。


 後ろ楯

 表向き……ランディ・ライトグラム男爵

 裏では……王族特務隊、王宮騎士団



 因みに、後ろ楯におかしいのがいるけど、アルテシアンナ王国との取引は、国家レベルになるだろうって事で、こんな事態になったらしい。


 全ては、バカ王子のいない所で話は進んだ。


 そして、帰り際に王様に呼び止められた。


「ランディよ、周囲には気を付けるのだぞ。この国では、王の力は絶対ではない。6名の公爵や宰相も表向きは忠誠を誓っているが、裏では解らん。もう一度言う、気を付けるのだぞ」


 やっぱり、この国の王様は好きだなあ。


 そうだ、こんどドリアさんから貰ったマヨネーズを、ご馳走してやろう。


 4種の秘薬の空き瓶に、マヨネーズが詰まってるんだよ。

 あの匣に入れてる限り、賞味期限は無期限だからね。



 ◆◇◆◇◆



 王都に到着して、久し振りに我が家に着いた。


 カレンダーなんて持ってないし、僕も特に気にしていた訳じゃないから、正確には解らないけど、1年半くらい家を空けていたんだな。


 クラリスとロイエンは元気かな?

 だいたい、こんなに頑張ってるのは、2人の老後を、幸せに送って貰うためだし。


「ほえぇ、おっきい屋敷……ランディって本当に男爵になったんだ。悔しいけど、他人が見てる時は気を使うね」


 さすがアリサ、物分かりが良いな。


「私も正式な妻になるまでは、自重しますね」


 レジーナは申し訳ないけれど、ずっと自重してくださいなって、もう内縁の妻気分ですか?



「これから、男爵様に正式に雇われる」

「やったな、アーティス。今度の飲み会で自慢してやろうぜ」


 アーティス、テイン、これから頼みますよ。


「俺は、黒尾騎士団の所に行ってくる」


「ああ、わかった」


 ダナムが、知り合いの所に出掛ける。

 そう言えば、往路では世話になったんだよな。

 土産でも用意するか。


 イルムナ・シオンは諸事情で遅れて来るし、テスターは王都に到着した事で任務が終わり、ロイヤルフォートに戻ってしまった。



 敷地内に入ると、庭でクラリスが子供達に囲まれて、困った笑いを浮かべていた。


 子供達を見てると、クラリスに随分となついているのが判る。


「あっ、ランディお兄ちゃん!? ランディお兄ちゃんだ!!」


 すると、最初に奴隷から救った子や、10前半の子供らは僕の方にすっ飛んできた。


 おおっ、お前達……僕を覚えてくれていたか。

 ちょっと感動。


 クラリスが僕を見て、目をパチパチしている。


「ただいま、母さん。僕、頑張ってきたから、収入がドーンと増えるかもよ」


 グッと親指を立てて、にっこり微笑む。


「えっ!? ラ、ランディ、なんて事を……」


 クラリスは青ざめて、屋敷の入り口に向かって走って行く。


「あなたぁ! ランディが、ランディがまたやっちゃったみたいなのぉ! あなたぁ、あなたぁ!」


 クラリスは大声を出しながら、屋敷の中に消えていった。


 僕、まだなんにもしてませんけど?



 ……

 …………


 それから、旅支度をするクラリスとロイエンを取っ捕まえて、大人しくさせた。


 どうやら、事情通の貴族から、僕の活躍した話を聞いていたらしい。


 まあ、実際の2割位しか伝わってないけど。


 それで『来年には子爵になるかもねっ』っておだてられたら、小さい娘を持つ貴族達に、包囲されたらしい。


 その時は、お喋り貴族の冗談と言うことで、なんとか収まったらしいが、僕の頑張ったを聞いて、とりあえず逃げようと思ったって事だ。


 確かに、王様は推薦するだろうな。


 そんな小さなイベントはあったけど、レジーナとアリサを屋敷に迎えて、久し振りに家族が全員集まった。


 ロイエン、クラリス、レジーナ、アリサ、セナリース、シープレスを見て言葉には出来ない達成感を覚えた。


 こうして、僕は幸せに暮らした。





























 ◆◇◆◇◆


 ランディが家族の団欒に浸っている頃……某国内では……



 好戦的で有名な筈の隣国に潜入している密偵が、ついに秘密を見つけていた。


(そうか、これが戦争を中断した理由か……こんな装備が、軍隊に行き渡ったら……ゴクリ)


 男が見たのは、飛距離や貫通力がけた違いの武器、剣や槍を通さず、弾いてしまう防具。


(このペースなら数年で、いくつもの騎士団や部隊に行き渡ってしまう。は、早く、早く、ダークダガー様に知らせなければ……)


 男は、施設を脱出する途中、別の製作所を通りがかった。


(こ、これは……なんだ? 武器や鎧と同じ材質で出来ているが、攻城兵器には見えない。……だけどなんだ? ものすごく嫌な予感がする)


 この時、男の肩に弓矢が刺さる。


(ぐっ!? しまった! 今、見た物は絶対に知らせなければ……早く対処しなければ我が国は……)


 男は懸命に逃げた。

 この施設には他に2人の密偵がいたが、集合場所には1人しかいない。


 この男ですら、遅刻してやって来ているのに、いないと言うことは、見つかって捕らえられたか、殺された可能性がある。


 男は緊急事態のサインを手ぶりで知らせる。


 それは『重大機密事項の入手。全てに最優先し、それを本国へ届けろ』のサインだった。


 徹底的に教育されたこの部隊は、自己保身のために、このサインは使わない。


 待っていた男はすれ違いざまに『生きろよ』とだけ言葉を発して、この場に残った。


 少しでも逃がす時間を稼ぐために。



 だがこの男も、この時点で生きる事を諦めていなかった。


 生い茂る木々、薄暗い視界の中、男自身が得意とする環境だった。


 この場で戦うなら、王宮騎士にだって互角に戦える自信があった。


 ただ、追手(おって)の規模が違った。


 追手の数は、100名を超えていた。


(バカな……なんて規模だ……それほどの秘密を見つけていたのか……)


 男は命の続く限り、時間を稼いだ。


 ……

 …………


 だが、先に脱出した男も、先に死んだ男の一時間後には、追い付かれ殺された。





 この『密偵行方不明事件』が発覚してから数ヵ月後、王族特務隊は北の大国に密偵の数を増やす計画を立ち上げた。

一段落しました。

次回は閑話を1話だけ挟んでから、スタートします。



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