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【閑話⑫】ランディのいる場所を目指して

 ランディの仲間である、『人外四人衆』(命名キンジ)のカーズ、アーサー、ガルと『ランディガールズ』(命名キンジ)の香織、リリス、マーニャ、ひなた、カミーラ、そして、このチーム最弱の男、キンジの9名は、ランディのいる場所を目指して歩いていた。


「冥王の言葉通りなら、あと3日で兄さんの居場所にたどり着きます。私のシャイニングロードとも方角が一致しています。やっとですね」


 この時、ランディガールズは感慨深い気持ちに溢れていた。


「香織さん、私と考えてる事は同じみたいね」


「マーニャ、2人だけじゃないわよ」


 マーニャは周りをみると、リリスもひなたもカミーラでさえ頷いていた。


「そっか、みんな同じだよね。でも違うのは空気よね。あの時はこんなに和気藹々(わきあいあい)としてなかったもん」


「そうね、あの時は時間が足りなくて、ひなたが危なかったからね」


 香織とマーニャの会話に、ひなたも参加する。


「大丈夫、もうあんな事は言わない。それに言わないだけの力は貰った」


「そうだの、妾も格と武器を手に入れたし、あの時とは違う」



 ランディガールズが話していたのは、以前ランディと離れ離れになった時があり、絶望的な状況の中、一筋の希望を信じて、ランディを探していた過去があったためだ。


「と言うわけで、アーサー殿、主殿と再会するまで、久し振りに稽古を付けてくれぬか? せめて少しでも成長してから、主殿と会いたいのじゃ」


 その言葉に反応したのは、ガルだった。


「よく言ったカミーラ。だがカミーラの相手は俺様がしよう。みんなやる気満々の様だから、俺様がカミーラ、アーサーは香織とひなた、カーズはマーニャとリリスと構ってやってくれ」


「仕方ありません。兄さんに良いところを見せたいとあっては、断れません。2人に合わせて準備をしましょう」


「解った 任せろ」



 そして、キンジは自分のバックパックから、ダミーのマイクを取り出す。


「これから、ランディガールズの皆さんと、ランディさんを除いた人外四人衆の、指導バトルが始まります。はっきり言って、お金が取れる好カードっすよ」


 キンジは、解説役がよく似合う。


 カーズが闘いの準備を始めた。


「استدعاء الشذوذ اليد اليمنى اليد اليسرى المساعدين، بالتوازي مع الحياة」


「カーズさん、謎の詠唱を始めましたぁ。こ、これわっ、超キモいあれを出すのかぁ!?」


 カーズの右手には、赤と青のコードの様な物が、飛び出た血管の様にドクドクと動きながら巻き付く。

 そして、掌に口が浮き出てきた。


 左手には、肩から細く小さい腕が2本出現して、手首付近を掴んだ。


「さあ、好きに撃ってください。相殺しますから」


 リリスとマーニャが左右に分かれて、攻撃に入る。


「行っけぇぇぇ、火弾」

「光を束ね弾けよ。光破」


 マーニャから拳大の火の玉が、細い光がリリスの右手の先に集まり、直径10cm程の玉になり、光線となって、カーズに向かって発射された。


「光破」


 カーズはリリスと同じ魔法を使い相殺した後、身体捻って火弾を避けた。


「マーニャ、火弾程度は相手の虚を突く布石にしか出来ません。そう言う使い方をすると良いですよ」


「リリス、光破程度なら、そろそろ詠唱の短縮化を目指しなさい」


「流石カーズさぁん! 2人の魔法を玩具扱い!! 因みにカーズさん曰く、左手を並列設置させて、心臓から掌までの魔力抵抗を減らせば、誰にでも光破は使えるそうです! だけど左手の並列設置なんて、出来そうなのはアシュラ○ンしか、思い付きませぇん!」


 キンジが解説している間に、闘いは進む。


「どりゃぁぁ、魔破 火炎弾」

「我が力、魔の下に凝縮し魔光となり弾けよ。魔光破」


 《魔破 火炎弾》

「我が力、魔光となり弾けよ、魔光破」


 この攻撃に対してカーズは、右手の口が『魔破 火炎弾』を唱えて、マーニャの火炎弾を相殺し、リリスの魔光破も、カーズ本人が詠唱を少し短縮化して相殺した。


「2人とも、芸がない……むっ?」


「今よっ、魔破 爆炎燼(ばくえんじん)!」


 カーズの目の前に、炎の壁が出現する。


「火弾、火弾、火弾、火弾、魔破 灰塵流(かいじんりゅう)!」


 《魔破 火炎弾》

「第4レベル呪文アイスウォール」


「マーニャ選手凄い! 炎の煙幕を作り出した後に、火弾の目眩ましをかけてかぁらぁのぉ、渾身の一撃! しかしカーズさん、炎の威力を弱め相殺しきれない分は、氷の壁で防ぐぅ!! ああっ!?」


 リリスはこの間、魔力を溜めて、カーズの右側に移動していた。


「冥府の番人よ、混沌の闇より黒龍の力を開放し、その力を彼の者に浴びせよ。魔天黒龍破」


 カーズもリリスの動きに反応して、左手を向ける。


「黒の使者よ我と共に力を束ねよ、強力な魔光となりて、敵を打て。黒魔光破」


 右手をかざすリリスの背後に、黒龍の幻影が見える、その黒龍の顎が開かれ黒い閃光を吐き出し、そしてカーズの左手の先には、禍々しい黒い線が集まり球状になってゆく……それが、60cm程の大きさになったとたん、魔天黒竜破に向かい弾け跳んだ。



「キター、魔法合戦! しかし、攻撃力はリリスちゃんの魔法が圧倒的に高い」


 カーズは威力の弱まった魔天黒竜破に突き進み、リリスを捕まえマーニャの方に向ける。


「うっ、早っ」


「そこまでですね。対策をしたにも関わらず、わりと簡単にダメージを受けてしまいましたね。流石です」


 2人を褒めたカーズは、急に老け込んだ。

 カーズは強引な魔法を使った代償として10年歳を経てしまったのだ。


「かーずさん大丈夫?」

 リリスは術の反動でおじさんになったカーズを見て、ドキドキしながら心配する。


 マーニャもゴクリと唾を飲む。


 それも仕方ないだろう。

 元々大好きなランディとソックリで、見た目は30代半ば……言い換えると、見た目は大人の魅力を醸し出すランディなのだ。

 ランディとカーズを見分ける手段は、髪型と話し方くらいなのだから。


「第8レベル呪文……アンチエイジング」

 カーズは元に戻った。



「おおっ、なんとあのカーズさんから合格を貰いましたぁ! 羨ましっす。 術の反動で老けたのに、あっさり若返る……もう反則っすね。そしておれの解説を待っていたかの様に、アーサーさんが動きました。対する相手は、暗殺者香織さんと吸血姫ひなたさん! おおっ!? アーサーさん箸を出しましたぁ!」


 アーサーは香織とひなたの訓練のため、一番殺傷能力の低い物を取り出した。


「箸以外 使った 勝ち」


「通訳します。 アーサーさんに箸以外を使わせたら、御二人の勝ちって事だぁ! アーサーさん流石に舐めきっています」



 ひなたは、空を飛び上から勢いを付けて攻撃してきた。


「発動、ミセリコルデ……」


「ひなたさん、上から勢いを付けてもう攻撃、そして香織さんは姿を消したぁ!」


 しかし、ひなたの攻撃は全て威力を吸収されて流される。


 さらに、死角からの姿を消した香織の攻撃も弾かれる。


「ひたな 単調 香織 バレバレ」


 それから10数分間、アーサーにあしらわれ続けた。


「発動 ミセリコルデ」


 香織の姿が三度消える。


「攻撃 瞬間 位置 解る」


「どうやら、アーサーさんは攻撃の瞬間に、その位置が解ってしまう様だぁ、アーサーさんに死角なし!」


 キンジの解説に熱が入る。


 この時、ひなたの飛行攻撃に変化がでた。

 ひなたは地上すれすれで攻撃し始めた。


「少し マシ お……」


 ひなた急に、進路を変えた。

 それに対応出来ないアーサーではないはずだが、それでも予想外の動きだった。


「王神流奥義、鬼人剣」


 ひなたの、左右同時に感じるほどの連続攻撃が炸裂する。


 だがアーサーは、その鬼人剣をなんなく両手で受け止める。


「2人 勝ち チームワーク 褒める」


 アーサーは、箸では受け止め切れないと判断して、()()でひなたの剣を受けたのだ。


「おおっ、アーサーさんが負けを認めたぁ!? 今か考えたんすけど、香織さんが消えたのは、ひなたさんの攻撃進路を、こっそり変えるためだったのかぁ」


「キンジ 正解 それ 読めない」


 姿を現した香織とひなたが、ハイタッチする。



「みんな凄い! 世界を席巻するはずの、スーパーマジックユーザーキンジもビックリです。そして最後のカードは、魔剣ガルさんと、もう1人の吸血姫カミーラ姉さん!」


 カミーラは、赤刃の日本刀を取り出した。


「ランディのためだ、特別サービスだぞカミーラ」

 ガルは、滅多に使用しない神剣アマテラスを取り出す。


「目覚よ、魔剣□□□」

『おはよー、お姉ちゃん』


 カミーラの魔剣はインテリジェンスソードだった。


「出よ神刀アマテラス」

『ギャアハッハッハァ、俺様満を持して登場! って今回は□□□ちゃんの訓練だな。今回のお題は【クラス委員長】の定義を3つ、3,3秒以内に答えよ。スタート!』


「おさげ、メガネ、巨乳!! チクショウ、やっぱり呼ぶんじゃなかった」


 ガルは、目に涙をためていた。


『流石は魂の相棒ガル、俺様の枷は解かれた、さあレクチャーの時間だぁ!』



 ここからは、技術を磨く闘いではなく、どれだけインテリジェンスソードを上手く扱えるかの指導になっていた。


『そうだ、もっと同調しろ。まだまだ、お前らは本物の□□だろ? 俺様達のように信頼し合うんだ』


「分かったのじゃ」

『分かりましたアマテラス様』


「駄剣の事なんか信頼してないし」


 神刀アマテラスの稽古は、続く。


『そう、それだ! 2人ともエナジードレインがあるのだから、そう同期すれば効果倍増だっはは』


「うむ」

『はい!』


「それ、ヤバイ! 掠めるだけで回復困難なダメージ喰うじゃん!」


 神刀アマテラスの稽古は、まだ続く。


『いいぞカミーラ、そうなると相棒は、数メートルを一瞬で回避する癖を出す。位置は□□□に伝えた。ちゃんと同調出来ていれば狙えるぞ』


『お姉ちゃん、そこ!』

「むっ、ここかっ!」


「ぐえっ! って、お前なに教えてんの? そんなの要らないだろ!?」


 神刀アマテラスの稽古は、まだまだ続く。


『魂の相棒は大人気なく、気配と実体の分離を使った上に、影に姿を隠した。惑わされるな、血の香りで位置を判断しろ、2人で同調すれば、二線の交わる点を割り出せば、正確に位置が解るはずだ』


「あっちか?」

『お姉ちゃん、送ったよ』

「なるほど、正確に解るのじゃ」


「これ以上ダメージ受けたら、レベルドレインが起きるだろ!」


 神刀アマテラスの稽古は、まだまだまだ……続かなかった。


 カミーラは、本気を出したガルに叩きのめされて、倒れていた。


『魂の相棒ガル、もう少し大人になれ……カーズもアーサーもこれっぽっちも本気を出してなかったぞ? はぁまったく……』


「ゼーッ、ゼーッ、うるさい。おまえ後100年は出してもらえないと思え」


 ガルは、神刀アマテラスを納刀しようとする。


『あっ、まって100年はダメェ!! 次からもう少し気を使うからぁ、ラ、ラメェ……』


ガルは、神刀アマテラスを鞘に納めた。



「…………えっと最後のカードは、ガルさんの勝ちで締め括られましたっす」




 これから2日間、ランディガールズの稽古は続いた。



 ◆◇◆◇◆


 カーズ達は、動物の気配すらない岩山の麓に到達した。


 シャイニングロードは岩肌に向かって、延びている。


「ガル?」


「ああ、あの岩壁は、シークレットドアだ。罠は無いが、この中にランディが居るのか? なんかきな臭くなってきたな」


「転生後 封印 された?」


 アーサーの言葉に、息を飲む香織とマーニャ。


「兎に角、行きましょう」


 岩肌には3ミリほどの隙間があって、持ち上げると簡単にスライドした。


 中を見ると、3メートル四方の広さの通路がまっすぐ進んでいる。


 通路を500メートルも進むと、奇妙な模様で描かれた門があった。


 門を開けると、中世に出てくる古びた研究室のような感じの部屋で、中には1人の女性が椅子に座ったままカーズ達を見る。


「いらっしゃい……お客様?……珍しい……どうした?」


 カーズ、ガル、アーサーはこの女性が只者ではないと判別してた。


「私は、ヴェル・カーズです。人を探しにここまで来ました。名前はランディかランデイヤなんですが、ここには……」


 リリスと同じ青髪の女性は、10代後半の見た目で、ジト目でカーズをみている。

 だが、この女性は僅かに口角を上げて、珍客の来訪に喜んでいた。


「あなた方……歓迎する……でも……ここ……私独りだけ……私……シャングリラ……人呼んで『幽王シャングリラ』……よろしく」


 この瞬間、カーズは全てを理解した。


「あんのバカ女神! 間違えやがったなぁ!!」




冥王「あれ、あの者等もう合流してる。準備間に合わない」


従者「早いですね、今はどの方向ですか?」


冥王「あの方角だ」


従者「め、冥王様、あの方向はたしか幽王様が……」


冥王「えっ? …………あっ!」


従者「冥王様?」


冥王「計算通り」


従者「……」







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