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【109話】11年ぶりの……

 僕の前には、王宮騎士団団長のキャ、キャリー何だっけ?


 王宮騎士団の団長がいる。


 口振りからすると、僕を捕らえに来た感じなんだけど、どうして?


「団長! 王の命では、顔を見たいから連れて来いとしか言われてませんが」


 ほうら、やっぱり。


「バカ……んんっ、王子殿の話では、生死は問わないから、急げよって言ったではないか?」


 いま、バカ王子って言いかけた? 解ります。


「何故、毛嫌いしているサンジェルマン様の話を真に受けるのですか?」


 あんのバカ王子がぁ!


「それに、何故かこいつと対峙したら、戦ってみたくなった。王都にいた時は、何かと用事があり、面と向かう事はなかったからな」


 こいつもバトルマニア?

 王宮騎士No.1が、こんなところで負けたら、不味いでしょ?


 でも、襲われたら負けてあげないけど。


「だからランディ、素直に連行されずに抵抗して欲しいのだが? 」


 僕は、公爵と王様が見てる筈の、特別観覧席を見る。


 するとバカ王子の姿が見える。

 はっきりとは見えないが、笑ってる気がする。

 いや、絶対に笑っている。



「こんなところで、戦っていいの? ロイヤルフォートでやってもいいんじゃない?」


 表情を変えずに、団長が答える。


「あの、八武祭で戦ったアリサと言う女、お前の弟子らしいな。王の前で学院長が語っていた『生活魔法の飛ばす魔法のキャンセル』『両手魔法』『肉体強化魔法と回復魔法の混合戦法』『驚異的な魔力総量の育成』私もお前に興味が湧いた。さあ戦おう」


 あのハゲジイめっ、半分以上は、アリサのオリジナルだろ?


 だめだ、戦いを回避できる雰囲気じゃない。

 ああもう、恥をかいても知らないからな。


「ちょっとまったぁ!!」


 僕と団長が声の主を見ると、そこには、軽く息を弾ませたリッツ教官がいた。

 助けに来てくれたんですね。


「リッツ教官」

「スクットか……久しぶりだな」


「キャリス、ランディは俺と戦うために、ここにやって来たんだ。横取りはやめてもらおう」


 リッツさん、僕はシオン兄弟に会いに来たんですが?


「先約がいたのか……だが、今さら退く訳には行かないな。そう、腕ずくでもな」


 その瞬間、リッツ教官は目を見開いた。


「閃いた! キャリスと戦え、同時にランディとも戦える絶好の機会だ! 何て幸運。俺は神に愛されている!」


 だれか、リッツ教官の勘違いを止めてください。

 僕は、あんたらと違ってバトルマニアじゃないの。



 ちょっぴり困っていると、メガホン姉ちゃんが、誰かと話し込んでいて、困惑気味。

 どうしたの?


 しかし答えはすぐに出た。



『えっとここで、特別企画を開始します。3人のバトルロイヤルを緊急開催! 3人だからと言って、侮ってはいけません。まず1人目、元王宮騎士、伝説の十傑でウエストコート高等学院教官、スクット・リッツ!!』


 会場からどよめきと歓声が巻き起こる。


 上質な紙を見ながら喋っているから、上級貴族以上の差し金なのは判った。


『2人目、元ウエストコート高等学院の生徒で、3年前に最弱学院を優勝に導いた、伝説の化物少年、ランディ・()()()()。3年間消息不明だった、あの男が帰ってきましたぁ!!』


 解った、犯人はバカ王子だ。

 後で絶対に、嫌がらせしてやる!


『3人目は、謎の一流闘士N! 非公式戦で、あのスクット・リッツに勝った事があると言う情報は、はたして真実なのかぁ!』



 立ち上がり、帰ろうとした観客たちが座り直して、既に満席……はい、やります、やればいいんでしょ?



 そのまま、学院生が戦っていた場所まで、連れてこられた。


 僕の装備は、お遊びで作った『双節棍』

 思いっきり捻ると、1本の棍から2節の棍に早変わりする。


 最初は七節棍にしようとしたけど、耐久性がないし、変型に時間が掛かるから、没にした。



「ほう、棍に戻したか? ハンマーより苦手なはずだったが? それに真ん中は鉄で補強されてる? そうか、何か秘密があるんだな」


 嬉しそうなリッツ教官、もうバレてるし。


「只の棍だったら、リッツ教官に失礼でしょ?」


 武器を握って、試合場に降り立つと、やる気が沸々と湧いてきた。

 

『試合前に伝説の神器、測定器を装備した騎士に来てもらいました。参考までに鍛えぬいたギフトの持っていない一流騎士のレベルは、30から35くらいだそうです。リッツ選手レベル48、ランディ選手レベル58!? N選手レベル51、とんでもない数値です、体格の小さいランディ選手がダントツトップ! 既に肉体強化魔法を発動しているのかぁ! あっ、試合開始の合図です。さあ、注目です』



 開始の合図と同時に、2本の剣が僕に迫る。

 棍を双節棍に変え、それぞれ防御する。


 想定外の事態に身を翻す暇がなく、早速、かくし球を使わされた。


「むぅ、2本に分かれた?」

「しかも鎖で繋がってるか、さすがランディ。面白い武器を用意したな」


 不味い、このままバトルマニア’Sにヒートアップされたら、押し込まれる。


「第2レベル呪文……ゴージャスブレス」

「ふん」

「はぁっ」



『おお! 只今、測定器の結果を教えて貰らいました……N選手とリッツ選手のレベルが15上昇しました。肉体強化レベル5を使用したのかぁ! あれ? ランディ選手のレベルは変化しません。やはり肉体強化魔法は使用済みかぁ!』



「キャリス、気を付けろ、不思議な攻撃が来る」


 なに助言してんの!? 一対一対一だよね? なんで二対一みたいな流れになってんの?


 戦いつつ、流れをリッツVS団長に持っていく。

 よし成功!


「第2レベル呪文……鋼皮LVⅠ」



 2人を見つめる……リッツ教官もいい年なのに、衰えを見せない。

 ってことは、リッツ教官は肉体強化魔法は『8』まで使える。

 団長は、竜神のギフトかな。

 防御関係は、リッツ教官と同じ程度。

 攻撃は、局面毎の初撃に無駄がない。

 王神流剣術に似ている。


 総合力でリッツ教官より強い! ヤバイ胸が高鳴る。


「よし、第2レベル呪文……オグルパワー」


『おっと、休憩をしていたランディ選手、リッツ選手とN選手の戦いに、自ら突っ込む! えっ、ランディ選手レベルが3上昇しました。肉体強化魔法を上書きしたのか?』


 何故か僕が乱入すると、二対一の流れになる。

 繰り返し言うが、何故だ?


 お陰で僕の攻撃は、掠める程度になるし、防御はいっぱい、いっぱいだ。


 ちょっと痛いけど、相打ち狙いでいこう。

 八武祭用の武器で殺傷能力は低いし、鋼皮も掛けた。

 HPも、前世にかなり近づいてる。


 喰らえっ!


 急所に当たらないようにだけ、身体を動かし、2人の攻撃に合わせて殴る。


「がっ!?」

「ぐっ……」


 よし、思ったよりダメージがない。


 このまま相打ちを繰り返した。


 ……

 …………


 繰り返した相打ちが、カウンター気味になった時。


「こ、これほどなのか……ふっ」

「流石ランディ。2年前よりずっと強くなってやがる。ぬん!」



『おおっ!? 互角に戦っていたリッツ選手とN選手のレベルが変化したそうです! うえっ!? リ、リッツ選手レベル72、N選手レベル78、初期レベルから計算すると、えと……リッツ選手が肉体強化LV8をN選手が肉体強化LV9を使ったようです。もう化物です! 解説が追い付きませんっ!』


 来たな全力攻撃。

 でも、そんな状態でうまく戦える?


『リッツ選手消えたぁ? あっ、ランディ選手が何もないところに足を出したら、そこにリッツ選手がっ!? 吹き飛ぶリッツ選手。ええっN選手の攻撃がランディ選手を真っぷたつに切断……されていません。速すぎて見えません! 何故かN選手も吹き飛んだぁ! ランディ選手2人を圧倒しています!! しかし、ランディ選手のレベルは61で変化なし。 意味が解りません』


 うん、ここまで成長したら、なんとか対処出来る。


 リッツ教官は、動きが読みやすくなるし、団長にはカウンターダメージを割り増しで、与えてやった。


 大事なのは、やはり経験と技術、600年の積み重ねが、活かせる肉体になってきた。


「化物か? 全力を逆手に取って、より強い反撃を与えるとは」

「ぐぅ、無念。もはやランディを楽しませる事すら叶わんとは」



『ランディ選手圧倒しているのか? ランディ選手も激しい攻撃を受けているはずなのに、ダメージを受けているようには見えません! そしてランディ選手の攻撃に、吹き飛ぶリッツ選手とN選手。これは勝敗が見えてきたかぁ!』



 僕も『勝敗が見えてきたな』と思った時、2人の気配に僅かな変化を感じ取った。


「えっ?」


『あっ……これは、どういう事でしょうか? リッツ選手とN選手が隣り合って構えています。測定器を被った騎士が何かブツブツ喋っています。聞いてみましょう。無敵の王宮騎士が、真の強敵と対峙したときに出す、2体の身体を1つの魂にしてかまえる型のうちの1つ『突の型』団長とリッツ先輩の型を見れるなんて、11年ぶりで懐かしいって……泣いてるんですか? それに、団長とリッツ先輩って、まさかN選手の正体はロイヤ、モゴモゴ……ムググ……キュウゥ…………』


 解説の姉ちゃんが、明らかに王宮騎士であろう男に絞め落とされた。


 今さらだと思うけど、N選手の正体はバレちゃ不味いのか。


 2人の方を見る。


 隣り合ってる2人だが、団長は胸から頭を突きで狙う姿勢で、リッツ教官は胸から下腹を突きで狙う姿勢だ。


 あの、パワーとスピードで来られたら、確実に死ねるよ?


 来たっ!

 予期せぬ場所で、転生後最大の死闘が始まった。



『えー、解説の女性が突然倒れてしまったので、上からの命令で、私、ただの一騎士であるジョウシンが、戦いの解説をします。伝説の型を見せた2人が動いたぁ! 速い!! 避けにくい場所とタイミングで、ランディを襲う両選手、ついにランディから血飛沫が舞う!』



 解説はジョーシンかよ? 上からの命令って、王か? バカ王子か? いや、外野を気にしたら負ける。


『次は『斬の型』! ランディを切り刻むつもりだぁ! 飛び散るランディの血肉! それでも反撃を繰り出すランディの可変棍、既に常人なら10回ほど死んでいる筈。おおっ、次は武器破壊を目的とした『破の型』だぁ! 』



 生き生きと戦う団長とリッツ教官を見ていたら、羨ましくなった。

 そう、僕にもいるんだよ、声を出すまでもなく連携をとれる仲間が……



『ああっと! ランディの武器は木端微塵に破壊されたぁ! 勝負あったかぁ、ぬ? ランディ、手を前にして、肘から先を上に向けている。意図は解らないが、戦いを諦めていない。まだやる気だあ』



「第5レベル呪文……ストライキングス」


「キャリス、ここからのランディも油断できぬぞ」

「解ってる、両手両足と頭が危険だと感じる……全身がチリチリするな、スクット」


 楽しそうに攻撃を仕掛けてきた。


 棍がなくなった分、自由の利く腕を捻りながら攻撃をいなし、回転の威力を下半身に伝えて、足で攻撃する。


 それでも、怯まない団長とリッツ教官は、猛攻撃を開始する。


「ヒーリング」


 5秒おいてから、もう一度回復魔法を掛ける。


「ヒーリング」


『なっ!? ウエストコートのアリサ選手が使っていた、回復魔法の応用、再生魔法! 腕を犠牲にしながらの戦い方には、再生魔法でカバーするといった意図があったあ!! これは勝敗が見えないっ! 頑張れ団長!!』


「ぐっ、いかん! こっちの魔力が切れる前に、ランディの精神力を断ち切る」

「あと、再生の瞬間は、僅かに隙が出来る。スクット、そこを狙うぞ」



 ……

 …………

 しばらく戦いが続いた。

 神速も限界以上使ったのに、絶妙なコンビプレイで凌がれた。


 僕はついに、無茶が足に来て倒れた。

 2人とも、強化魔法を限界まで使ったせいか、フラフラしているのに、今一歩届かなかった。


 ここで回復呪文を使ったら、なんか負けた気がする……あっ……



『ついに決着を見ましたぁ!! 立っていたのはだ、N選手とリッツせん、リッツ選手です。あっ…………な、なんとランディ選手最後の足掻きか、壊れた武器の残骸を2人に投げつけた。避けたようにも見えましたが、当たっていたのか、2人とも倒れた。そしてランディ選手も大の字になって動かない。この戦いの結果は……3選手とも戦闘不能による引き分けです』



 やった、手元に壊れた武器があったから、投げつけてやったわ。

 うまく、顎先に当たってダウンを奪った。



『特別試合は、これにて終了です。救護班がタンカを持ってやって来ました。この素晴らしい戦いを魅せてくれた3人に、盛大な拍手をお願いします!』



 僕は盛大な歓声の中、タンカごとバカ王子の所に運ばれてしまうと悟った。


 仕方ない、もう一踏ん張りするか。


「第1レベル呪文……ライトヒール。それじゃあ、僕は帰るね。っと脚だけは治らないか……神速の使いすぎには注意だな。リッツ教官またね。団長も王子様によろしく」


 僕は、不格好ながらも、なんとか走って逃げた。




後日談……


ベテランの王宮騎士が、入団10年未満の後輩に熱く語っていた。


「あの闘い方が、キャリス団長とスクット先輩が得意とする無敵の二点一対の型だ。あれを11年ぶりに見て感動したわ」


ベテラン勢が懐かしそうに話す。


「でもジョーシン殿、あの怪物、新旧十傑の連携攻撃で引き分けだったんですよね? もはやランディは世界で……」


「そ、そんな事はない筈。世界は広い。きっと物凄い猛者たちが……いたら我が国は弱いことになるな……まさか、まさか、いや生きた遺跡に伝説のガーティアンがいるだろ? ランディに世界一はまだ早い」


「……その複雑な心境わかりますが、なにもガーティアンを出さなくても……」







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