↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ランキング王~総合1位だけが王になれる世界〜  作者: れいじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
92/97

第92話 初依頼の報酬

第92話です。


A級魔物《キングスカルノ》との激闘を制したスペースワンダフル。


勝利の決め手となったのは、恐怖を乗り越えたトータの《目印》と、大河とクララによる強力な魔法の連携でした。


しかし、初めての冒険者依頼は、想像以上に危険なものとなりました。


無事に戦いを終えた五人は、討伐の証拠を持って冒険者ギルドへ戻ります。


果たして、今回の依頼はどのような評価を受けるのでしょうか。


今回もよろしくお願いします!

 大河の言葉に、トータはゆっくりと顔を上げた。


「よくやったな、トータ」


 目の前で笑っている大河を見つめながら、トータは何かを言おうと口を開いた。しかし、喉の奥から出てきたのはかすれた息だけだった。キングスカルノの巨大な翼が頭上を通り過ぎた瞬間の光景が、まだ瞼の裏に焼きついている。鋭い鉤爪が迫り、逃げなければならないと分かっていながら、石畳に縫いつけられたように動けなかった自分の身体。その恐怖は魔物が谷底へ消えた今も薄れておらず、膝の上に置いた右手は小刻みに震えていた。


「いや……俺、マジで何もできなかったし。あいつが来たとき、怖くて動けなくなって……」


 俯いたトータの声は、谷から吹き上げる風に紛れそうなほど小さかった。大河はその隣に腰を下ろすと、石畳に片手をついて空を見上げた。先ほどまで魔物の群れが飛び交っていた青空には、白い雲がゆっくりと流れている。陽射しはまだ暖かいものの、汗で湿った服に風が入り込むと、戦闘で火照った身体が急に冷えていくのを感じた。


「俺だって怖かったぞ。ルルを助けに飛び込んだときなんか、途中でどうやって止まるんだって思ったくらいだからな」


「……マジ?」


 トータが顔を上げると、大河は苦笑しながら左肩を回した。ルルの回復魔法によって痛みはほとんど消えていたが、氷の柱で落下を止めたときの衝撃だけは、まだ身体が覚えているような気がした。


「氷の魔法で何とか止まれたけど、クララが来てくれなかったら、あのあとどうやって戻るつもりだったんだろうな」


「本当よ。風魔法も使えないのに谷へ飛び込むなんて、普通は考えないわ」


 少し離れた場所で話を聞いていたクララが、乱れた赤い髪を指で整えながら近づいてきた。額に張りついた髪を耳へかけ、大河を見下ろすその目には呆れたような色が浮かんでいる。


「しかも、助けに行った私に向かって、飛べないって平然と言うんだから。あのときは本当に驚いたわよ」


「でもまあ、ルルを助けられたんだからいいんじゃない?」


「結果的にはね。次からは少しくらい考えて行動しなさいよ」


 大河が肩をすくめると、ライズが堪えきれずに吹き出した。クララはそんなライズを横目で睨んだものの、すぐに視線を逸らし、口元に浮かびかけた笑みを隠すように腕を組んだ。つい先ほどまで命を奪い合っていた場所に、ようやく普段の空気が戻り始めていた。


 そのとき、ルルが大河の左側へ歩み寄ってきた。足元に散らばった石の破片を避けながら近づくと、彼女は大河の肩へ心配そうな視線を向けた。


「あの……大河さん、肩はもう大丈夫ですか?」


「ああ、もう大丈夫だ。ありがとう、ルル」


 大河が左腕を持ち上げてみせると、ルルは胸元へ添えていた手をゆっくりと下ろした。しかし、すぐに表情を曇らせ、足元へ視線を落としてしまう。


「私、大河さんまで怪我をさせてしまって……」


「ルルが無事だったんだから、それで十分だよ。それに、あのときトータを助けてくれたのはルルだろ?」


 大河の言葉に、ルルは小さく頷いた。その横顔を見つめていたトータが、膝の上で拳を握りしめる。


「……俺のせいで、ルルも落ちたんだよな」


 ルルが驚いたように振り返ると、トータは目を合わせないまま言葉を続けた。


「俺がちゃんと動けてたら、あんなことにはならなかったじゃんね。ライズにも守ってもらってばっかりだったし……」


 ライズはしばらく黙っていたが、やがてトータの肩へ大きな手を置いた。


「まあ、次はもっと上手くやろうぜ。俺だってお前を守りきれなかったんだから、お互い様だろ」


「ライズ……」


「それに、最後はお前が決めたんだ。あの《目印》がなかったら、キングスカルノを倒せたかどうか」


 大河も頷き、トータの右手へ視線を向けた。指先には小さな擦り傷が残り、爪の間には魔物の翼に触れたときの汚れが入り込んでいる。ほんの一瞬の接触だったが、その一瞬が戦いの流れを変えたのだ。


「俺たちの魔法が当たったのは、トータのおかげだ。あの五秒がなかったら、クララの魔法も俺の魔法も避けられていたかもしれない」


 トータは自分の手を見つめたまま、何度か指を開いたり閉じたりした。やがて顔を上げると、少し照れくさそうに鼻の下を擦った。


「……そっか。俺のスキル、役に立ったんだな」


「そうだよ。十分すぎるくらいにな」


 大河が差し出した手を掴み、トータはゆっくりと立ち上がった。まだ足元には頼りなさが残っていたものの、ライズが背中を軽く叩くと、いつもの調子で笑い返した。


「でもさ、あれを毎回やるのは無理じゃね? 今度同じことやれって言われても、絶対できる気がしないんだけど」


 その言葉に、大河はキングスカルノが落ちていった谷へ目を向けた。深い森に覆われた谷底はここからでは見通せず、岩肌の間を流れる川の音だけが聞こえてくる。


 確かに《目印》は強力なスキルだが、敵へ直接触れなければならないという条件は、今回のような相手にはあまりにも危険だった。トータが翼に触れられたのも、クララの炎によってキングスカルノが進路を変えたからこそであり、狙って再現できるものではない。


 大河の脳裏に、以前学院で見せてもらったスキルブックの内容が浮かんだ。


 《目印》には進化した記録が残っていたはずだ。直接触れる必要がなくなり、遠くから印を飛ばせるようになるという、今のトータにとって理想的ともいえる能力だった。


 しかし、そのためには《スキルの実》が必要になる。


 一つ100万マニー。しかも、使用したからといって必ず進化するわけではない。


 大河は考え込むように顎へ手を添えたが、今ここで話すことではないと思い直し、仲間たちへ声をかけた。


「とりあえず、討伐の証拠を探そう。せっかく倒したんだから、ギルドに報告しないとな」


 ライズが谷底を覗き込み、思わず顔をしかめた。


「まさか、あそこまで取りに行くのか?」


「いや、さすがにそれは無理だろ。あんな大きな魔物、持って帰れないぞ」


「それなら、これを見て」


 クララが橋の端に落ちていた大きな羽根を拾い上げた。灰黒色の表面には銀色の模様が走り、根元は普通の鳥の羽根とは思えないほど太い。先端の一部は炎で焦げていたが、その独特な形はキングスカルノの頭部を飾っていた冠羽によく似ていた。


「これ、あいつの頭についてた羽根じゃない?」


 大河が近づいて確認していると、少し離れた場所からライズの声が聞こえた。


「おい、こっちにも何かあるぞ!」


 ライズが拾い上げたのは、前腕ほどの長さがある巨大な鉤爪だった。先端は鋭く湾曲し、根元には硬い皮膚の一部が残っている。大河が受け取ると、見た目以上の重さが掌へ伝わってきた。


「これなら証明になるかもしれないな」


「鑑定してもらえば分かるんじゃない?」


 クララの言葉に頷き、大河たちは二つの部位を丁寧に包んだ。


 橋の上には魔物の爪で削られた跡や、砕けた欄干の破片が散らばっていた。焦げた石畳からはまだ微かな煙が立ち上り、焼けた羽根の匂いが山風に混じって漂ってくる。先ほどまでの激しい戦闘が嘘のように、周囲には穏やかな静けさが戻っていた。


 大河は最後にもう一度、谷底へ目を向けた。


 あの巨大な魔物を、自分たちは五人で倒したのだ。


「よし、帰ろうか」


 大河が振り返ると、仲間たちもそれぞれ頷いた。ポルポルが嬉しそうに先頭へ飛び出し、短い手足をばたつかせながら空中でくるりと回る。


「初めての依頼、大成功なのです!」


「まだギルドに報告してないだろ」


「でも、勝ったのです!」


 ポルポルの声にライズが笑い、トータもつられるように声を上げた。ルルはそんな二人を見ながら微笑み、クララは呆れたように肩をすくめている。


 五人は夕暮れへ向かう山道を、ゆっくりと歩き始めた。



 冒険者ギルドへ戻った頃には、街の建物が西日に照らされ、石畳の上へ長い影を落としていた。


 通り沿いの店からは焼きたてのパンや肉料理の香りが漂い、仕事を終えた人々が行き交っている。遠くから聞こえる鐘の音に混じって、酒場の入口からは賑やかな笑い声が漏れていた。


 ギルドの扉を開けると、昼間とは違う熱気が大河たちを迎えた。依頼を終えた冒険者たちが食堂の席を埋め、木製の杯を打ち合わせながら今日の成果を語り合っている。革鎧についた泥を払いながら笑う者もいれば、疲れた様子で椅子に深く腰掛け、料理を頬張っている者もいた。


 大河たちは人の間を抜け、朝に依頼を受けた受付へ向かった。


「あら、お帰りなさい。皆さん、無事だったんですね」


 受付の女性が顔を上げ、五人の姿を確認すると柔らかく微笑んだ。


「はい。依頼の報告に来ました」


「ガルドスカルノの討伐ですね。どうでしたか?」


 大河は一度クララへ視線を向けた。彼女が小さく頷いたのを確認してから、包んでいた討伐証明を受付の上へ置く。


「群れは追い払いました。ただ、ちょっと予定外のことがありまして……」


「予定外、ですか?」


「キングスカルノがいたんです」


 受付の女性の手が止まった。


 彼女は大河の顔を見つめたあと、ゆっくりと受付の上に置かれた冠羽へ視線を落とした。先ほどまで浮かべていた微笑みが消え、眉間に小さな皺が寄る。


「……キングスカルノ、ですか?」


「はい。ガルドスカルノの群れを率いていました」


 女性は慎重に冠羽を持ち上げ、銀色の模様を確認した。続いて鉤爪へ目を向けると、奥にいる職員へ小声で何かを伝える。


「少々お待ちいただけますか?」


 その声は、先ほどまでとは明らかに違っていた。


 女性が奥へ向かうと、近くにいた冒険者たちが興味深そうにこちらを見始めた。


「キングスカルノだって?」


「おいおい、A級じゃねえか」


「本当に倒したのか?」


 周囲から聞こえてくる声に、トータが少し居心地悪そうに肩をすくめた。ライズはむしろ得意げな顔をしていたが、大河は余計な騒ぎになる前に報告を済ませたいと思い、黙って受付の奥を眺めていた。


 しばらくして、受付の女性が年配の男性職員を伴って戻ってきた。


「お待たせしました。鑑定の結果、こちらは間違いなくキングスカルノの冠羽と鉤爪です」


 男性職員は品物を慎重に受付へ置き、大河たちを見渡した。


「皆さんが討伐したということで、間違いありませんね?」


「はい。五人で倒しました」


 大河が答えると、男性職員は深く頷いた。


「キングスカルノは非常に危険なA級魔物です。今回の依頼では出現が想定されていなかったため、ギルド側でも調査を行いますが、討伐実績については認められるでしょう」


 受付の女性が書類を確認し、報酬について説明を始めた。


「今回の依頼報酬は予定通り200万マニーです。それに加えて、A級魔物の討伐報酬として、追加で200万マニーをお支払いします」


「……え?」


 トータが顔を上げた。


「ちょっと待って。追加で200万?」


「はい」


「ってことは……」


 トータが指を折りながら計算し始めると、隣にいたライズが先に口を開いた。


「400万マニーってことか!?」


「はい。合計400万マニーになります」


 受付の女性が微笑んだ瞬間、トータの目が大きく見開かれた。


「マジかよ!!」


 周囲の冒険者たちが振り返るほどの声だった。トータは慌てて口を押さえたものの、興奮を隠しきれないらしく、何度も大河とライズの顔を見比べている。


「400万って……俺、そんな大金見たことねえんだけど!」


「俺だってねえよ!」


 ライズも嬉しそうに笑い、二人は早くも報酬の使い道について話し始めた。


 大河はそんな二人を眺めながら、受付の上に並べられた報酬へ視線を向けた。初めての冒険者依頼は、想像していたものよりはるかに危険だった。ルルが谷へ落とされ、トータも命を落としかけたことを思い返すと、無事に帰ってこられたことが不思議にさえ感じられる。


 それでも、五人全員がここにいる。


 大河は隣に立つ仲間たちを見渡し、静かに息を吐いた。


「皆さん、本当にお疲れさまでした」


 受付の女性が丁寧に頭を下げ、大河も軽く頭を下げて報酬を受け取った。


 ギルドの外へ出ると、夕暮れの街には柔らかな風が吹いていた。石畳を歩く人々の影が長く伸び、通り沿いの店からは夕食の支度をする香りが漂ってくる。


 トータはまだ興奮が収まらない様子で、何度も報酬の話を繰り返していた。


「なあ、400万だぜ? 400万! これ、どうやって分ける?」


「五人だから、一人80万マニーじゃないか?」


 ライズが答えると、トータはしばらく考え込み、やがて嬉しそうに笑った。


「80万……それでもすげえな」


 そんな二人の会話を聞きながら、大河はふと足を止めた。


 頭に浮かんだのは、学院で見せてもらったスキルブックだった。


 《火力マックス》の進化先である《限界突破》。


 そして、トータの《目印》が持つ、もう一つの可能性。


 大河は隣を歩くトータへ視線を向けた。トータは何かを思い出したのか、自分の右手を開いて眺めている。


 キングスカルノの翼へ手を伸ばした、あの瞬間。


 もし、あの危険を冒さずに《目印》を付けられたなら。


 大河はしばらく考えたあと、仲間たちへ声をかけた。


「なあ、みんな。報酬の使い道なんだけど、ちょっと相談してもいいか?」


 四人が足を止め、大河を振り返った。


 夕陽が建物の屋根を赤く染め、五人の足元へ長い影を落としていた。


 大河はトータの右手を一度見てから、ゆっくりと口を開いた。


「俺たち、もっと強くなれるかもしれない」


 その言葉に、クララが興味深そうに目を細めた。

第92話を読んでいただき、ありがとうございました。


今回はキングスカルノ討伐後のお話でした。


初めての冒険者依頼で、いきなりA級魔物と遭遇してしまったスペースワンダフル。


全員が無事に帰還できたことが、何よりの成果だったと思います。


そして、気になる報酬は、通常の依頼報酬200万マニーにキングスカルノの討伐報酬200万マニーが加わり、合計400万マニー!


トータとライズが大喜びするのも無理はありませんね。


しかし、大河が考えているのは報酬の使い道だけではありません。


今回の戦いで、トータの《目印》がどれほど強力なスキルなのか、改めて明らかになりました。


その一方で、敵に直接触れなければならないという大きな弱点もあります。


そこで大河が思い出したのが、スキルブックに記されていた進化の可能性。


果たして、スペースワンダフルはさらに強くなることができるのでしょうか。


面白かった、続きも読みたいと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!


次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。