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異世界ランキング王~総合1位だけが王になれる世界〜  作者: れいじ


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第76話 スペースワンダフル

第76話です。


ついに五人目のトータが加わった大河たち。


最低人数が揃い、いよいよ正式なグループとして登録することになりました。


まずは学院で手続きを済ませ、そのままランキング協会へ。


五人の新しい挑戦が、ここから始まります。


今回もよろしくお願いします!

長期休暇を目前に控えた学院は、いつもより少しだけ浮ついた空気に包まれていた。


 二週間というまとまった休みをどう過ごすのか。廊下を行き交う生徒たちの話題も、帰省や旅行、休暇中に開催されるランキング競技のことが多い。授業が終わっても教室に残り、友人同士で予定を相談している者の姿があちこちにあった。


 そんな中、大河たち五人は学院の事務室へ向かっていた。


「いや、なんか展開早くね?」


 最後尾を歩いていたトータが制服の襟元を指で軽く引っ張った。


「昨日まで俺、グループとか全然関係なかったじゃん。それが今日になったら結成報告って。ちょっと置いてかれてる感じするんだけど」


「嫌なら帰ってもいいわよ」


 前を歩いていたクララが振り返る。


「いやいや、そういう意味じゃないって。つーかクララ、俺に当たり強くない?」


「普通よ」


「それ昨日も聞いたわ」


 二人のやり取りにライズが笑う。


 その隣では、ルルがポルポルと並んで歩いていた。五人で行動することにも少しずつ慣れてきたのか、以前のようにずっと俯いているわけではない。トータとクララが話すたび、時折そちらへ視線を向けている。


 事務室へ入ると、学院の職員が書類を取り出し、五人の名前を一人ずつ確認していった。


 大河、ライズ、ルル、クララ、トータ。


 学院生がグループを結成するために必要な最低人数、五人。


「全員の在籍を確認しました。これで学院生グループとして申請できます」


 職員が書類へ印を押した。


「こちらをランキング協会へ提出してください。正式なグループ登録はランキング協会で行います」


「ありがとうございます」


 大河は差し出された書類を受け取った。


「登録が完了すると、獲得したグループ総合ポイントはこちらにも反映されます。学院では登録された学院生グループを総合ポイント順に集計していますので、月末時点で最もポイントの高いグループが翌月の学費全額免除の対象になります」


「つまり、世界のグループランキングとは別のポイントじゃないんですね」


 ライズが確認する。


「はい。ランキング協会で獲得した正式なグループ総合ポイントを、そのまま学院生グループ同士で比較します」


 大河は手元の書類を見る。


 これまで聞いていた学費免除制度が、ようやく自分たちにも関係するものになった。


「これで第一段階終了なのです!」


 ポルポルが大河の肩の横で嬉しそうに回る。


「まだ登録してないけどな」


「細かいことは気にしないのです、大河さん」


「それ、俺も賛成」


 トータがポルポルへ親指を立てる。


「トータとは気が合いそうなのです」


「ほらね」


「そこ、喜んでいいのか?」


 ライズが笑った。


 学院を出た五人は、その足でランキング協会へ向かった。


 夕方の協会は相変わらず人が多かった。競技を終えた者、これから対戦へ向かう者、巨大な表示板の前でランキングを確認する者。その間を抜けて受付へ向かい、学院でもらった書類を提出する。


 受付の女性は内容を確認すると、五人を順番に見た。


「五名での新規グループ登録ですね。では最初に代表者を一名決めてください。代表者がグループランキングカードの管理者となります」


 大河は隣にいるライズを見た。


「ライズじゃないのか?」


「なんで俺なんだよ」


「グループ作ろうって言ったの、ライズだろ」


「それとリーダーは別だろ。大河でいいんじゃないか?」


「俺?」


 ライズは迷う様子もなく頷いた。


「総合ランキング一位を目指してるんだろ。だったら引っ張ってくれよ」


「私は大河でいいわよ」


 クララもすぐに同意した。


 ルルも小さく頷く。


「俺も大河でいいよ。つーか俺が代表とか言われたら、それはそれで困るし」


 トータが両手を軽く上げる。


「大河さんがいいのです!」


「ポルポルは登録メンバーじゃないだろ」


「気持ちはメンバーなのです」


 こうして、思っていたよりあっさりと大河が代表者に決まった。


「では、グループ名をお願いします」


 受付の女性が尋ねた。


 そこで五人が静かになった。


「……そういえば決めてなかったな」


 ライズが呟く。


「大事なこと忘れてたわね」


 クララが腕を組んだ。


 ポルポルが目を輝かせて大河の前へ飛び出す。


「それなら《ポルポルラブ》がいいのです!」


「却下」


「まだ誰も考えてないのです!」


「考えるまでもないだろ」


「ひどいのです、大河さん!」


 ポルポルが頬を膨らませる。


「もうちょっと格好いい名前がいいだろ」


 ライズが腕を組んで考え込んだ。


「例えば……《サンダーブレイカー》とか」


「うわ、そっち系?」


 トータが半笑いになる。


「なんだよ」


「いや、ライズってそういうの好きなんだなって。ちょい意外じゃん」


「じゃあトータも出せよ」


「俺? そうね……」


 トータは顎に手を当て、わざとらしく天井を見上げた。


「《スーパーウィナーズ》とか?」


「ライズと大して変わらないわよ」


 クララが呆れたように言う。


「いやいや、全然違うっしょ。こっちの方が勝ちそうじゃん」


「どっちも似たようなものよ」


「じゃあクララは?」


「私?」


 クララは少し考えた。


「……《アップルパイ》」


 今度は全員が黙った。


 クララだけが真顔だった。


「……本気?」


 大河が尋ねる。


「冗談よ」


 そう答えながら、クララはわずかに視線を逸らした。


「絶対ちょっと本気だったのです」


「違うわよ」


「クララ、アップルパイ好きすぎじゃね?」


「うるさいわね」


 トータが笑い、クララが睨む。


 その横でルルが小さく口元を緩めていた。


「ルルは何かないのか?」


 ライズに聞かれ、ルルの笑みが一瞬で消えた。


 視線が集まりそうになったことに気づき、大河たちはそれぞれ少し目を逸らす。


 ルルはポルポルを見ながら考え、


「……かわいい名前なら……」


 と小さく呟いた。


「ルルは分かってるのです!」


 ポルポルが勢いよくルルの前へ飛んだ。


「やっぱり《ポルポルラブ》なのです!」


「……それは違うと思う」


「ルルまでなのです!?」


 とうとう大河も吹き出した。


 受付の前で何をやっているのだろうと思う。


 けれど、不思議と嫌ではなかった。


 大河はふと、受付の奥にある大きなランキング表示へ目を向けた。


 グループ総合ランキング。


 そこに表示されているのは世界の上位百グループだけだ。


 そして、その頂点。


 一位にある名前は変わらない。


 スターエルミナス。


 現在の王を支える巨大グループ。


「俺、一つ考えてたんだけど」


 大河が言うと、騒いでいた四人とポルポルがこちらを見る。


「《スペースワンダフル》ってどうかな」


「スペースワンダフル?」


 ライズが聞き返した。


 大河はランキング表示の一番上を指した。


「スターエルミナスのスターは、星だろ」


「まあ、そうね」


「俺たちがあそこを超えるなら、星より大きい方がいい」


 クララもランキング表示を見上げる。


「それで宇宙……スペースなのね」


「そう。それと俺は一位を目指してるから、ワンを入れたかった」


「それでワンダフル?」


「うん」


 クララが少し考えてから首を傾げた。


「じゃあ、ダフルは?」


「……響き」


 一瞬の沈黙。


 トータが最初に吹き出した。


「そこノープランなんだ?」


「でも、悪くないだろ?」


「いや、俺は好きよ。なんつーか、ちょいダサいところまで含めて俺らっぽくね?」


「ちょいダサいは余計だろ」


 ライズも口の中で何度か名前を繰り返す。


「スペースワンダフル……俺のサンダーブレイカーよりはいいか」


「それと比べられると不安になるわね」


「なんだよクララ」


 ルルが小さく笑った。


「……私は、好き」


「ルルがいいならポルポルもいいのです!」


「さっきまでポルポルラブだっただろ」


「第二候補にするのです」


「いらないから」


 クララも諦めたように肩をすくめた。


「まあ、《アップルパイ》よりはいいわ」


「アップルパイ本気だったじゃん」


「冗談だって言ったでしょ!」


 トータに言い返すクララを見ながら、大河は笑った。


 誰からも反対は出なかった。


 大河は受付へ向き直る。


「《スペースワンダフル》でお願いします」


「承りました」


 受付の女性が名前を記録する。


 しばらくして、一枚のカードが大河へ差し出された。


 個人用のランキングカードより少し大きい。表面へ指を触れると、登録されたばかりの情報が浮かび上がった。


《スペースワンダフル》


 登録人数、五名。


 グループ総合ポイント、0pt。


 グループ総合ランキング、圏外。


「本当にゼロからね」


 クララが横から覗き込む。


「今日できたんだから当然だろ」


 ライズはむしろ楽しそうだった。


 グループ総合ランキングは、個人の総合ランキングと同じく上位百位までしか正式な順位が表示されない。下位は競技のたびに変動が激しいため、百位以内へ入るまではポイントだけが記録され、順位は圏外と表示される。


 そのポイントも永久に残るわけではない。


 獲得した日から一年。


 一年を過ぎたものから順番に失効するため、上位グループであっても競技へ出続け、ポイントを稼ぎ続けなければ順位を維持できない。


「こちらのカードは原則として代表者が管理してください。必要な場合は複製することもできます」


「複製?」


 大河が聞き返す。


「大規模なグループでは、同じ日に複数の競技へ別々のメンバーが参加する場合があります。複製されたカードを使用しても、獲得ポイントはすべて同じグループへ加算されます」


 大河は再び一位のスターエルミナスを見る。


 何人ものメンバーが、それぞれ違う場所でポイントを稼ぐ。


 五人しかいない自分たちとは、そもそもの規模が違う。


「ちなみにさ」


 トータが受付へ身を乗り出した。


「ポイントって金にもなるんだよね?」


「お金の話だけ反応が早いわね」


「いや、大事じゃん。そこ」


 グループ競技で獲得したポイントには、一ポイントにつき一万マニーの報酬が発生する。


 ただし個人ランキングとは違い、グループ総合順位そのものから定期的な報酬が出るわけではない。あくまで実際の競技で獲得したポイントが報酬になる。


 報酬を受け取っても、ランキング上のポイントは消えない。


 競技のたびに換金してメンバーで分けてもいいし、そのまま貯めておくこともできる。多くのグループは装備や遠征、訓練などに使うため、グループ資金として管理しているらしい。


「じゃあ、稼いでも五等分じゃない感じ?」


 トータが五本の指を広げる。


「まだ一ポイントも稼いでないわよ」


 クララがカードを指す。


「ほら、ゼロ」


「だから未来の話じゃん。先のこと考えるの大事っしょ?」


「ポルポルは食費にするのがいいと思うのです」


「お前、登録メンバーじゃないだろ」


「気持ちはメンバーなのです!」


 大河はカードをしまった。


 金の使い道は、実際に稼いでから考えればいい。


 まず必要なのは最初の一ポイントだった。


「休みの間に参加できるグループ競技ってありますか?」


 大河が尋ねると、受付の女性が開催予定を表示した。


 いくつもの競技の中で、五人が参加できそうなものが二つあった。


 一つは、約百グループが同時に参加する大規模なエリアバトル。


 バーチャル空間に作られた広大なフィールドで、各地に存在する占領地点を奪い合う。


 森、平原、岩場、廃墟。


 地形を利用しながら敵グループと戦い、陣地を確保してポイントを稼ぐ。単純に強い相手を倒せばいいわけではなく、どこを攻め、どこを守り、いつ戦いを避けるかという判断も重要になる。


「百グループ……」


 ルルが表示を見ながら小さく呟く。


「いきなりすごいの来たな」


 ライズも目を細める。


「面白そうじゃない」


 クララの表情は逆に少し楽しそうだった。


 もう一つは、より単純な競技だった。


 五対五のチームバトル。


 グループ同士が正面からぶつかり、五人の戦闘力と連携を競う。


「こっちは分かりやすいな」


 ライズが言った。


「俺たち、ちょうど五人だし」


「ちょ待って」


 トータが片手を上げる。


「なんかさ、普通に両方出る流れになってない?」


「出ないの?」


 クララが見る。


「いやいや、俺、ついさっきまで自分のスキルをハズレだと思ってた非ランカーなんだけど? そのへん覚えてる?」


「覚えてるわよ」


「知ってて行くんだ。クララ、結構攻めるね」


「実際に使わないと《目印》の練習にもならないでしょ」


「まあ、それはそうなんだけどさ」


 トータは頭を掻きながら二つの競技を見比べる。


 やがて口元にいつもの軽い笑みが戻った。


「ま、せっかくグループ入ったんだし、やるならやるか」


「じゃあ、両方出よう」


 大河が言うと、ライズとクララが頷いた。


 ルルも少し遅れて小さく頷く。


 二つの競技への参加申請を済ませると、大河のカードに予定が追加された。


 初めてのグループ戦。


 しかも形式はまったく違う。


 昨日ようやく五人揃ったばかりの自分たちが、どこまで通用するのかは誰にも分からない。


「その前に、一度みんなで練習しないか?」


 大河が四人を見る。


「必要ね」


 クララがすぐに答えた。


「《目印》を試しただけで、五人でまともに戦ったことはないもの」


「だったら、エリカさんに見てもらおう」


 その名前を聞いた瞬間、ルルが顔を上げた。


「……エリカさんに?」


「休みに入ったら、いつもの魔法訓練にエリカさんと行くから。その時にみんなも一緒に来ればいい」


「回復魔法一位にグループ戦見てもらえんの?」


 トータが目を丸くする。


「それ、普通にヤバくね?」


 クララも以前からエリカの魔法には強い興味を示していた。


「私は行くわ」


「俺も行く」


 ライズが続く。


 ルルはポルポルへちらりと目を向け、それから大河を見た。


「……私も、行きたい」


「決まりなのです!」


 ポルポルが嬉しそうに宙を回る。


 大河はもう一度、グループランキングカードを取り出した。


 スペースワンダフル。


 五人。


 0ポイント。


 圏外。


 世界のランキングには、まだ自分たちの名前すら載っていない。


 大河はカードから顔を上げた。


 遠くの表示板、その頂点にはスターエルミナスの名がある。


 星を超えるためにつけた、宇宙の名前。


 今はまだ、その名前に負けないものなど何一つ持っていない。


 それでも、ゼロだった数字はこれから変えられる。


 大河はカードを握り、隣にいる四人へ目を向けた。


 スペースワンダフルの最初の戦いが、もうすぐ始まる。

第76話を読んでいただき、ありがとうございました。


ついに大河たちのグループが正式に誕生しました。


その名は《スペースワンダフル》。


スターエルミナスの「星」を超えるための「宇宙」と、大河が目指す「一位」を込めた名前です。


現在は五人、0ポイント、ランキング圏外。


本当にゼロからのスタートです。


そして大型連休では、約百グループが参加するエリアバトルと、五対五のチームバトルへの参戦も決定。


その前に、まずは五人での連携を確かめる必要があります。


大河、ライズ、ルル、クララ、トータ。


バラバラの得意分野を持つ五人が、グループとしてどんな戦い方を見せるのか。


いよいよ《スペースワンダフル》の初陣が近づいてきました。


次回もよろしくお願いします!

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