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9、過去


「銀の砂漠は、ショウ島か……」


「ショウ島?」


 ノールが地図を見ながら呟くと、ククーが覗き込んできた。


「ククーは、知ってる?」


「あたしの時代にはなかったと思うけど……。銀の砂漠も聞いたことなかったし」


「何もない小さい島だよ。昔は閉鎖的な民族しかいなかったけど、今は変なしきたりが残る町に発展している」


「……詳しいのね?」


「僕も、その島の出身なんだ」


 ノールは吐き捨てるように言った。ククーは、ノールのいつもと違う様子に首を傾げる。


「へえ。てっきり、あの変な眼鏡像の町出身かと思ったわ」


「まあ、十年以上は住んでるけどね」


「何で、島を出たの? 不便だから? 遺跡調査のため?」


「それは……」


 ノールは言い淀む。


「……まあ、別にいいわ。あたし、あなたのことを、何で知りたがったのかしら……」


 ククーは、ノールのことを知りたがった自分に戸惑っていた。

 ノールは、そんなククーに気づかず、意を決したよつに頷いた。


「……村のしきたりのせいで、僕の母が亡くなったからさ」


 ククーは目を見開く。


「えっ?」


「治らない病気じゃなかった。病を治せる花があったんだ。でも、その村では取ってはいけない花だった。母の故郷だったのに! それで、僕と父とでしきたりを破ったけど、結局捕まって間に合わなかった。それで、僕達は追放。まあ、そんな町に住んでいたくはなかったけどさ」


「復讐とか考えないの? あたしだったら、そんな村消滅させるわ」


 そう真面目に言うククーに、ノールは苦笑する。


「心を穏やかに。憎しみには囚われるな。人・獣、全ての生命を美しく感じろ。その瞳を見れば、己の敵味方がわかる。我らの武器は、真実を見極めること」


「何、それ?」


「母がよく語ってくれた、母方の先祖の言い伝え。……僕は……、獣より人の方が嫌いなのかもしれない」


 ノールは目を伏せ、拳を握った。その拳は震えていた。


「妖獣は良いよ。率直に感情を出して、テレパシーとか使って仲間意識が強い」


 ククーはしばらく黙っていたが、ゆっくり口を開いた。


「……それでも、あんたは人。だから、人の群れのルールに従うのね」


「…………」


「でも、あたしは人じゃないわ。だから、あたしと一緒の時は、そんなルール関係ないからね! 道徳、人情、そんなのあたしは知らない。だから、あんたが人を見限れば、あたしはいつでも協力してあげる」


「……『ありがとう』で、いいのかな?」


 ノールは苦笑する。


「ええ」


 ククーは、大真面目に頷く。


(僕は、その内……過去に、人を滅ぼす妖獣と行動をしてる。いつか後悔するかもしれない。でも、今はククーの側は心地好い)


「それにしても、そんな苦い思い出のある島に行けるの?」


「大丈夫。行こう! まずは、港町・ザザーン町に行こうと思う。……だけど、ホウエン兵が張っているかも」


「それなら、ログに調べさせとくわ」


「良いようにコキ使ってるね」


 ノールは笑った。



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