31、結論
「じゃあ、ジャムさんありがとうございました」
ノール達は、ジャムに挨拶に来た。
「ノールくんとヘルちゃんには、またいつかねって、とこですね!」
「そうですね!」
「仲良くやるのよ?」
ジャムはイタズラっぽく笑う。
「……? あっ、はい」
ノールは首を傾げながら、とりあえず頷いた。ジャムは、ククー達の方を見る。
「ククーちゃんとリカクくんとトキスくんも、元気でね?」
「ありがとうございます! さようなら」
リカクは微笑みながら、ジャムに別れを告げた。ジャムも、少し寂しそうに微笑み、頷く。
「ウロタくんも、気を付けるのよ!」
ジャムは、ウロタの方に向かい直って言うと、ウロタはニッと笑った。
「大丈夫ッスよ! ちょっと行ってくるッス!」
ジャムの、それぞれへの別れ聞き、ノールは改めて、皆別の時の者達なんだと思った。
(どういう形でも、別れが近いんだ……)
ノールは拳を握った。
町を出て、色鮮やかな花々が咲く丘に登りノール達は、立ち止まった。穏やかな風が吹いていて、心地好い。
「それで、過去に戻る決心はついたか?」
トキスはククーに聞く。
「……ええ。ちゃっちゃと、カキン王を倒して、ホウエン国を消すわよ」
ククーはいつもの調子でそう言うが、少し震えていた。ノールは思わずククーを持ち上げ、抱き締める。
「ちょっ! 何よいきなり!?」
「僕達がいる」
「……。何言ってるのよ。頼りない人間のくせに」
ククーはそう言って、体をくねらせ、ノールの腕から降りた。そして、ノールに顔を見せないようにしていた。
トキスは輝く翼を広げた。ノール達は、光に包まれる。この理想的な平和な時代から離れ、またホウエン国時代に向かう。
ノールは、丘から見える景色を脳裏に焼き付ける。
(僕達の未来……。ここに繋がりますように)
ノールの意識は遠退いた。
ーーククー、我らの最後の力を、受け取りに来てくら……。
どこからか、そういう呼び声が聞こえた。
気がつくと、ノール達は白い霧に包まれていた。視界が悪く、お互いのこともぼんやりとしか見えない。
「ここは?」
「白の谷よ」
ククーが答える。
「ここが、ククーの故郷?」
「ファイキャトスの住処……」
とても静かな所で、声が反響する。
「……もう、あたしの仲間はいないけどね」
ククーの声は、少し寂しそうだった。
すると、周りの霧がククーに集まり濃くなる。
「ククー!?」
ノール達は敵かと慌てるが、ククーは動揺する様子はない。そして、何処ともなく言った。
「皆……、あたしに力をくれるの?」
霧は肯定するように更に濃くなったかと思うと、ククーの中に吸い込まれていく。
ーーククー、我らの仲間。
ーー生き残った、我らの希望。
ーー我ら、ファイキャトスはククーと共に。
ーーククー、立派になったな。
「……っ!」
ククーの体が光ると同時に、霧は晴れていく。ククーの瞳は潤んでいた。
「皆が……、ファイキャトスの仲間が力をくれたわ。たぶん、これがあたしが最後に手に入れる力……。あたし、みんなのために復讐しなきゃ」
ククーの声は、少し震えていた。ノールは、ククーの辛さを感じ、目を伏せ頷いた。
「霧が晴れたぞ!?」
「誰かいるのか?」
「……人じゃないか!?」
ノール達に気づいた、この谷に住む他の妖獣達が、集まってきた。そして、ノール達を確認すると、すぐに襲ってきた。
「人だ! 憎き人だ!」
「まずいです! この時代は、ほとんどの妖獣が、人に嫌悪感を持っていて、問答無用で襲ってきます!」
リカクはハッとして、ノール達に声をかける。
「死ねっ!」
ノールの頬を何かが掠め、そこから血が流れる。
「ノール!?」
ククーは叫ぶ。
「大丈夫」
ノールは動揺せず、杖を掲げ光の壁で皆を包んだ。
ククーとトキスが前に出た。
「やめなさい!」
「ファイキャトスじゃないか! 最近見ないから、とうとう絶滅させられたのかと思ったぞ!」
「そう簡単にやられてたまるもんですか!」
ククーは毛を逆立てる。
「……あたし、これからホウエン国を滅ぼすから! それで、彼らは、未来とかから連れてきた協力者! 危害は無用よ!」
「滅ぼすって、そんな無謀な! そんな馬鹿な考え、誰も思い付かなかったぞ!」
「馬鹿じゃないわよ!! あたしは、トキスの時移動で色んなところを周り、力をつけたわ」
「でも、結界石が強力で……」
「そんなの、先日壊されたわ」
「それが本当なら、他の奴らがもうすでに襲いに行ってるだろ?」
「あんな危ない機械の国、結界石がなくても防衛機能は揃ってるもの。皆、慎重になるわ。あんた達小物でも、それくらいわかるわよね?」
「でも、返り討ちに遭わないか?」
「そうかもしれない! でも、誰かがやらなきゃ始まらないなら、あたしがやる! あたしに文句あるなら、かかってきなさい! そして、ノールを傷つけた者も、今後一切許さないよ!」
ククーはそう言い、妖獣達は黙り去っていった。
リカクはノールの手当てをする。
「明日が運命の日だ。……行くのか?」
トキスがポツリと言い、ククーは頷いた。
「ええ。ホウエン国はあたし達妖獣の敵で、カキン王は許せないもの」
「ククーなら、大丈夫だろ? さっきも、妖獣達をピシッと黙らせたもんな」
「初めて会った時とは違う強さを持ったね」
ウロタとノールは笑って言う。
「あたしは強くないわ。あたしの弱点はあんたよ、ノール」
ククーの突然の言葉に、ノールは首を傾げる。
「あんたが傷つけられただけで、こんなに怒ってしまうのだから。こんなに、人の行動や存在だけで、心かき乱されるようになってしまったのよ。最近はあたしらしくなく、悩んでばかり!」
「えっと……、ありがとう?」
ククーはノールを睨む。
「あと、ククーが強くないと、僕は困るよ。シャクガの町から逃げた後、言ったよね?」
ノールは微笑む。
「ククーについてきたことを、良い選択をしたって。間違いないって。そして、『後悔しないように生きてる』って」
ククーはハッとしたようだった。
「ノール」
ククーはスッと顔を近づけると、ノールにチュッと口付けした。
「うわお!」
「あー!!」
それを見ていたウロタとヘルの方が声をあげた。
ノールは目を見開き、赤い瞳を見ながら首を傾げた。
「あなたのこと、好きよ」
「えっ、やっ、その……、ありがとう?」
「何、妖獣からの告白で動揺してるのよ。別に、あたしは、あなたとどうにかなりたいわけじゃないわ。ただ、言っておきたかったの」
ククーは歩き出す。
「さあ、行きましょう! あたしの宿敵、カキン王がいるホウエン国へ!!」




