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ファイキャトスの瞳  作者: シャム吉


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挿話 リカクとトキス

 

 青の森で、同じ日に一人の少年と一匹の妖獣が生まれた。少年はリカク、妖獣はトキスと名付けられる。

 トキスは、時を移動する唯一の妖獣と言われた。


 リカクとトキスは、よく一緒に遊び学び共に大きくなった。

 しかし、リカクが物心つき始めた頃に、トキスは自在に時を移動できるようになった。そして、トキスは日に日に成長していき、すぐ大人になってしまう。


「トキス、大人になるの早いよ」


 リカクは不服そうに言う。トキスは少し困った。


「別に早いわけじゃなく、今じゃない時に行っていたら、成長していたんだ。それに、リカクの方が成長が早いと思う」


「僕、まだちっちゃいよ!」


 頬を膨らませるリカクに、トキスは軽く笑った。


「いや、そうじゃなく……。もう字も読み書きできるし、難しい言葉とか世の仕組みなども覚えるし、変化の妖術も使いこなせてる」


「覚えるのは、好きなんだよ。どうってことない」


「そうか」


 何故かトキスの表情が翳った。


「トキス、どんなに年が離れても友達だよな?」


「ああ。もちろん」


 リカクとトキスは、お互い唯一無二の親友だった。


 そんな平和な日々が続いていたある日、陰りがさす。

 トキスの噂を聞き付けたカキン王の命令で、ホウエン兵が青の森を見つけ出したのだ。


「さあ! 時を移動する妖獣を出せ! この森を燃やされたくなければな!」


 隠れていたトキスだが、森の被害を心配して、皆が止めるのを無視して、兵の前に出ていこうとする。


「駄目だよ! トキス、きっとホウエン国に利用される!」


 そんなトキスに、リカクは抱きついた。


「だが、このままだったら、森が燃やされる!」


「……僕が行く」


 トキスが止める間もなく、リカクはトキスに変化して、兵の前へ向かった。


「僕が、トキスだ」


「これが、噂の妖獣か」


「他の雑魚妖獣とは格が違うな」


 兵達が、光の縄を取り出し、ジリジリとリカクに近づく。トキスは慌てて飛び出した。


「リカク駄目だ! そいつは偽物だ! 本物は、我だ!」


 トキスはリカクに体当たりすると、リカクの変化が解ける。


『ほう・・・。変化の術とは面白い。そのガキも連れて来い』


 どこからかそう言う冷たくゾッとする声が聞こえた。


「待ってくれ! リカクは関係ない!」


 トキスはそう声をあげるが、電気の銃で撃たれ、気を失った。



 トキスは気がつくと、鎖をつけられ、地下の実験室でたくさんのコードに繋がれていた。そして、電気を流され、頭が痛くなる。気持ち悪い。自分の時移動の能力を研究されているのがわかった。


 それを幾日も繰り返され、トキスは逃げ出すために、隙を見て時移動をした。リカクもすぐ助けるつもりだった。

 しかし、この時代に戻ってくると、リカクのいるホウエン国には強力な結界石のせいで入ることができなくなっていた。

 しかも、リカクはその頭脳も利用されていると聞き、トキスは愕然とした。


 そして、トキスはある杖の在処と持ち主のことを思い出した。


(ノール、お前にかかってる。頼む、リカクを助けてくれ)


 まずは、幼いノールの時代に来た。


(まだ、この幼さでは駄目だ)


 次の時代では、ノールは銀の砂漠のあるショウ島から出てしまっていた。


(駄目だ、接点がない)


 そして、ホウエン国がトキスの妖術を利用して作った装置を利用して、この時代にやってきたファイキャトスと、ノールが出会った。


(この時代の彼だ)


 銀の砂漠にやってきたノールに、杖は主がわかっているかのように、自ら向かっていた。ノールが手に入れるのを確認し、追っ手から逃げるため、時移動を行った。


 ノールと、もう一人の青の森の人間ウロタをホウエン国内に送り、トキスはファイキャトスの生き残りのククーと、国外に来た。

 ククーは目を覚ますと、辺りを見回す。そして、遠くに巨大なドームと要塞が見え固まった。


「ホウエン国っ……」


 同じ地上なのに、ノール達がいた時代より、空や大地が黒く見える。


「あたし、元の時代に戻ってきたの?」


「そうだ」


 トキスは静かに答えた。


「あんた、いきなりどういうつもりよ!? ノールは、どこ!? 無事なんでしょうね!?」


「あの中にいる」


 トキスがホウエン国内を示すと、ククーはカッとなり、トキスに飛びかかる。


「何で、よりにもよってあんな危険な国の中なのよ!」


 トキスは、簡単にククーを避ける。


「あの国は、妖獣も人間も物のように扱ってるのよ! 早く、出しなさいよ!」


「我は、テレポート能力は持ってはいない」


 ククーは全身の毛を逆立て、トキスに戦闘態勢になった。


「そうだな。我が命を落とせば、異なる時代の者は、元の時代に戻る。だが、ノールは大丈夫だ」


「何を根拠…………はあるようね」


 トキスの落ち着いた表情を見て、ククーは落ち着きを取り戻した。


「どうして、ノールをあそこに送ったの?」


「ノールに助けてもらいたい人がいるんだ」


「ノールに?」


「我々では、忌々しい結界石のせいで入れないからな」


「でも、一人じゃ危険だわ」


「未来から来たウロタという若者も一緒だ。彼も、青の森出身。力になるだろう。それに、ノールは杖を手に入れた……」


「あの杖、いったい何なの? 妖術みたいなのが出たけど」


「それは、無事に彼らと合流できたら話そう」


 トキスは、ホウエン国の方へ視線をやる。


「もうそろそろ、ホウエン国の結界石が壊される。その瞬間、ドームを破壊し、中に入って彼らと合流を果たさなければいけない。できるか?」


「……いいわよ」


 ククーとトキスは、力を溜めその瞬間を待った。


 そうして、無事にホウエン国の結界石がノールに破壊され、やっとリカクと再会できた。


 言葉とか、丁寧語に変わっていたが、優しいままの彼だった。


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