27、悩み
ガクの町で、ノール達は宿をとり、各自自由行動とした。未来の人の町に、皆興味津々のようだ。
ノールは一人、史料館のジャムのところへ戻った。
「あの、ジャムさん」
「あら、一人でどうしたの?」
ジャムは少し驚いたが、特に気にした様子はない。
「未来の僕って、どんな人ですか……?」
「えっ? ウロタくんから、聞いてないの?」
「ウロタさんの話は、何かウロタさんのは尊敬しているような話が多くて、聞いていて恥ずかしいし、よくわからないので……」
ジャムは声をあげて笑う。
「そうね。今の君と大した変わってないわよ?」
「えっ?」
「いつも、昔の文献を読んだり、妖獣と人の共存について考えてるわ」
「この未来……この時代には、もう割りと共存できているんですね?」
ノールの真剣な目を見て、ジャムは大きく頷いてみせた。
「ええ。王のおかげですよ」
「その王って……?」
「……大昔のホウエン文明のカキン王が残した災厄。それが現れたの。人や獣が困らされていた時、先陣切って戦い、勝利し、私達を導いてくれた。とても優しく強い王ですよ」
「へえ。とても立派な人なんだ。会いたかったな……」
ノールは目を細める。ジャムは可笑しそうに笑う。
「本当、王とあなたはそっくり! きっと、今会っても気が合うんじゃないかしら……」
「じゃあ、未来には面識あるんですか!?」
「そうね!」
ジャムは笑って頷いた。
「だから、今の王のように、自分が信じたいものを信じなさい。未来だったり過去だったり人だったり獣だったり。自分で選んで間違いないわ。例え、彼女が滅びを選んでも、きっとあなたは彼女に何か影響を与えてる」
「……はい。ありがとうございます!」
ジャムは、ノールがククーのことで悩んでいると気づいたようだった。
ククーとトキスは、民家の屋根の上に並んで、町を見下ろす。
「あんたに聞きたいことがあったんだけど……」
ククーは歯切れが悪い。
「未来って、変えられるの?」
「我と関われば、変えることも可能なのかもしれないな。だが、我がそこまで関わった者はいない」
トキスは淡々と答える。
「例えばさ、あんたの力でカキン王が王になる前に、殺してしまう……とか」
トキスは首を振った。
「未来を変えることを前提の、時移動はできないな。だが、過去の者に未来のことを告げ、変わるということはあるかもしれない。だが、一度過去を変えてしまうと、今存在する全てのものが消える。皆、過去を積み重ねて今があるのだからな」
「もし、あたしがホウエン国を滅ぼさなかったら、それでも未来は変わるわよね?」
「ああ」
ククーは黙る。
「……人を、殺したくないのかい?」
「べっ、別にカキン王や兵以外殺す必要ないし……。それに、間違ったらノールの先祖がいなくなって、ノールも消えてしまうかもしれないでしょ?」
「お前は、ノールが本当大好きなんだな」
トキスはいつも通り淡々と言うが、ククーの尻尾は逆立った。
「なっ!? そんなんじゃないわよ!」
「お前が思うように、滅ぼせば良いさ。結局、未来なんかわからないのだから……」
トキスはそう言うと、屋根から降りていった。ククーだけ残る。
「それが、一番困っているんじゃない」




