25、繋がり
ノール達が、野宿の準備をしていると、ヘルはそっとリカクの側に寄って行った。
「ねえ、リカクは男の子なの? 女の子なの?」
「えっ、女の子だと思ってたんだけど?」
ノールが初対面で聞くのを遠慮していたことを、ヘルとククーは平然と聞く。
リカクは、案の定困った顔をした。
「僕は男ですよ」
「じゃあ、お母さん似とか?」
「きっと、美人でしょ?」
「どうでしょう……」
「お父さんがイケメンなのかもよ」
「中性的な顔立ちとか」
リカクは、女性陣の勢いに困り果てている。
「リカク、すっかり女子のオモチャになってるッスね」
ウロタは同情するようの言って、ノールは苦笑しながら頷いた。そして、トキスの方を見る。
「……これから、どうしようか?」
「時の通り、ファイキャトスの伝説は、成就してもらう」
「……っ」
ノールは息を飲んだ。
(ククーが人を……)
ククーが、こちらに近寄ってきた。
「でも、あたしの炎はあいつらには効かない。今のあたしには、ホウエン国は滅ぼせないわよ」
「伝説で、でっかいファイキャトスが火で滅ぼしたって、あるんでしょ?」
ヘルも会話に入ってくる。
「そもそも、あたしは小柄なのに……。伝説のファイキャトスって、あたしじゃないのかしら?」
「……でも、もうククー以外……いないんでしょ?」
ノールが遠慮がちにそう言うと、ククーの目がキツくなる。
「そうよ。あのカキン王のせいで、あたし達はっ……!」
「ククーさんの、炎を強化する手段はないのでしょうか?」
ククーの言葉を遮りながらも、リカクが遠慮がちに言う。
「そうだ! 風の力も、人禁制区域……妖獣の聖地で手に入れたよね?」
ノールは、金の泉のことを思い出した。ノールの言葉に、ウロタはピンときた様子を見せた。
「……それなら、赤の山なんかどうッスか? よく、火が好きな妖獣達が遊びに行ってるみたいッスよ?」
「遊びに?」
平穏な言葉に、ノールは少し驚く。
「何で、この時代の人間は、妖獣の遊び場も知ってるのよ? それに、さっきから見掛ける妖獣も、人を見ても何も言わないし」
ククーは尻尾を、パタパタさせた。
「この時代は、王のおかげで人と獣が大分歩み寄ってるんだ」
「そんな、人にも獣にも影響を与える王が?」
ウロタの話に、ククーが訝しげに聞く。
「カキン王と違い、偉大な方ッス」
ノールも驚いた。
(そんな遠くない未来が、そんなことになってるんだ!?)
「とりあえず、この時代のノールさんに聞いてみるッス。ひょっとしたら、案内してくれるかも!」
ウロタはそう言うと、湖で泳いでいた、鳥の姿の妖獣に声をかける。
「悪いけど、ノールさんと一緒にいるはずの、黒いヒョウフライにテレパシー送ってくんないかな? 『ククーは赤の山に行くべきか? 行くべきなら、案内もしてもらえないか?』って」
「仕方ないわねー」
妖獣はそう言って目をつむる。しばらくして、目を開けた。
「彼が来るって。だから、しばらくじっとしとけって」
「ありがと」
ウロタはそう言って、戻ってくる。ククーは目を丸くしていた。
「獣が、何の見返りも求めず、人に協力するなんて!?」
「俺の森や、この時代は、これが当たり前だから、逆に妖獣が人を嫌悪する過去の方が信じられなかったけどな……」
ウロタは肩をすくめる。
「とりあえず、あいつが来るまで寝よう!」
ノール達は、その晩、野宿だというのに、安心して眠ることができた。
翌日、ウロタが言っていた妖獣を見て、ククーとノールは目を見開く。
「ノール、懐かしい姿だな。それに、ククーまでいるし」
「ログ!?」
それは、ノールの元の世界で会った、黒い翼を持つ妖獣・ログであった。
ノールの知っているログより、体は少し大きく、その体や羽根には古傷のようなものがある。
「まったく、俺を散々コキ使っといて、用が済んだら、さっさと消えるんだからな」
ログはククーを恨めしそうに見る。ウロタはキョトンとした。
「ククーやノールさんの若い時からの知り合いなの?」
「まあな。……因縁を感じるな」
「ログは、ククーに負けた上に、住処だった森をククーに火事にされてなくして、ククーに情報収集を頼まれてたんだよ」
「……お前って、良い奴だったんだな?」
ウロタは感心して、ログを見た。ログはため息をつく。
「もっと、労ってくれ。……で、この時代のノールからの伝言。思う通りにやれってさ。ノールは、会うつもりはないらしい」
「えー。私、大人になったノール見たかったのに」
ヘルは不服そうだ。ククーとリカクは、うつむいて黙っている。
「で、もし赤の山のことを知りたいなら、ノールじゃなくジャムを頼れって。ウロタ、お前、史料館の場所知ってるだろ?」
「ああ。ジャムさんか……」
ウロタは、ノールの方を振り返る。
「ノールさんがそう言ってきたってことは、赤の山で間違いないと思うんッス」
ノールは頷いた。
「そうですね。行きましょう!」




