24、理由
日が沈み、皆で焚き火を囲んだ。
「どこから、どこまで話すべきか……」
おもむろに、トキスは口を開いた。
「我とリカクの関係は聞いたか?」
トキスに見つめられ、ノールは頷く。
「同じ青の森の出身で、……友達だって」
「そうだな。我の時移動、リカクの変化能力と知能を聞き付けたカキン王に、捕らわれるまでは平穏に過ごしていた」
トキスは遠い目をする。
「ホウエン国で、我もリカクも実験体として使われてた。何千年の時を見てきた我でも、ついこの間ようにハッキリと覚えてる、悪夢のような日々だった……。我は、奴らの隙を見てホウエン国を逃げ出した。そして、態勢を整えて、リカクを助けに戻ろうとしたが、今度は結界石のせいでホウエン国に入ることができなくなってしまったのだ」
「それで、人間である僕らを過去のホウエン国へ送ったんだね?」
「ああ。説明もなく送り、悪かった。リカクと会えないかもしれない、という可能性もあったが、お前達の縁に賭けてみた」
「時移動って、簡単に自由にできるの? ホウエン国も、兵を送ったり戻したりしてるみたいだけど?」
「奴らの装置は、我の力を利用して作られたもの。だが、我の時移動の能力には及ばないようで、長い間の滞在はできない。機械も、移動できるものとできないものがあるようだ」
「だから、ホウエン兵は急に現れたり、いなくなったりしたのね? ……でも、同じ奴らの装置で移動してきた、あたしはノールの時代にずっといれたわ?」
ククーは首を傾げる。
「それは、その時代に強くお前を呼ぶ者がいたのだ。我は自由にどの時も移動できるが、他の者も一緒となると、条件が必要だ。その一つに、その時代の者と深い関わりを持つ者がいること」
「俺が、ノールさんの過去に行けたのも、この時代のノールさんと知り合っていたからッス。今回、この時代に戻ってきたのも、この時代のノールさんの呼び声のおかげッスよね?」
ウロタがそう言い、トキスは頷く。
「でも、あたしはあの時代の知り合いなんかいなかったわよ?」
「……それでもいた。時の決まりで、詳しいことは話せないがな」
「ふーん?」
ククーは尻尾を大きくパタパタさせながら、また首を傾げたが、興味ないのかそれ以上追及しなかった。
「この杖については? トキスが守っていたの?」
ノールはそう言いながら、杖を撫でる。トキスは首を振ってみせた。
「そういう訳ではない。これも、詳しいことは話せない。だが、お前には渡して良いことはわかっていた」
「僕が小さい頃から、わかっていたんだね?」
「我にとっては、ほんの数秒の差みたいなものだ」
「そう感じるんだ……」
「ところで、あの杖は何なの? 私のナイフとかでも、全く太刀打ちできない頑丈なものだったし、何かシールドっぽいのも出現したし……」
「それに、結界石を壊した時のあの炎は、まるで妖術……」
ヘルの後に、リカクが考え深げに言う。トキスは頷いた。
「あれは、間違えなく妖獣の妖術。妖獣がその能力を捨て、その杖に宿らせたのだ。他にも、色々な力を持っているだろう」
「そんな馬鹿なことをする妖獣がいるの? 力をなくしたら、人に負けちゃうじゃない!」
ククーは目をカッと見開く。トキスは目を瞑り頷いた。
「……いたんだ。能力をなくしてまでも、その杖を遺したかったわけがあったのだろう」
「何て馬鹿な妖獣!」
ククーは呆れたように首を振る。ノールは不安になった。
「そんな妖獣達の想いが篭った杖を、僕が使っても……?」
ノールは、杖を握りしめた。
「お前なら、大丈夫だ。人も獣も分け隔てなく思いやれる強さを持つのだからな」
トキスがそう優しく言い、ノールは首を傾げた。
「とりあえず、今夜はもう休もう。この時代は、ホウエン国も追ってこれない。周りを警戒する必要はないからな」




