22、結界石
中庭に出ると、そこには大きな白く輝く岩があった。
「これが結界石……。こんなに大きくて、力があるものは初めて見た……」
ノールは惚ける。その間に、兵達の足音が近づいてきた。ノールは我に返り、馬の姿のリカクから、ヘルを下ろす。
リカクは元の姿に戻ると、先程の光剣を取り出した。大きく振りかぶり、石に斬りかかる。結界石に刃があたるが、傷一つつかなかった。
「そんな!」
ノール達は青ざめる。
「リカク、この私を謀ったな」
兵達が集まり、ノール達が出てきた地下の方から、カキン王が出てきた。
「それに、ファイキャトスを匿っていた未来の蛮族ではないか?」
「ばっ!?」
「我がホウエン国は、ここまで発展させたのに、未来には蛮族ばかり。嘆かわしいことだ」
カキン王はわざとらしく額に手をあて、残念がる素振りを見せた。そして、冷たい瞳をリカクの方に向ける。
「リカク、今ならまだそこまでの罰は与えん。我が指揮下に戻るのだ」
「…………」
リカクは動かない。カキン王の顔が歪む。
「お前は賢いくせに、人生の選択肢を誤ったな」
カキン王は、兵の方を一瞥する。
「やれ。ただし、リカクは殺すな。こいつの脳は、使い道があるからな。実験体として生物研究室に送り込む」
カキン王がそう言い終わると同時に、兵達は銃を乱射した。銃から出てきたのは、強力な電流だった。ノール達は、結界石の陰に隠れた。電流が当たっても、結界石はピクリともしない。
しかし、いくら結界石で攻撃を凌げたとしても、兵達はジリジリと距離を詰めてくる。回り込まれた終わりだ。
「ちっ。植物よ……」
ウロタは舌打ちし、地面に手をつけた。足下の草が伸び、前列の兵の足に絡まり転倒させる。しかし、草は簡単に切られ、ほんの時間稼ぎにしかならない。
「この結界石さえ壊せれば……。トキスっ!」
リカクが祈るように目をギュッと瞑った。
(このままじゃ……、トキスに合流できなければ何もかも終わる。でも、どうすれば? 本当に、結界石は壊せないのか?)
ノールは何か策がないかと、結界石を見上げた。すると、手に持っていた杖が震えた気がした。
「……壊せる?」
まさかと思いつつも、ノールが杖に語りかける。すると、肯定するように、また杖が震えた。
「トキス、ククー、頼んだよ」
ノールはそう呟いて、杖を掲げる。
「杖よ! 結界石を壊せっ!」
すると、杖から紅蓮の炎が飛び出し、結界石を包む。結界石は意図も簡単にヒビが入り、崩れていった。炎のあまりの威力に、皆、唖然とする。
「そんな、馬鹿なっ! 我が兵器でも壊れなかった、国家最大の結界石が!?」
カキン王はもちろん、その場にいた者皆、驚きで動きを止めていた。
そして、すぐに破壊音とともに、上から二匹の妖獣が舞い降りてきた。
「この時を待っていた」
「トキス!?」
「リカク、無事か?」
トキスはリカクと向かい合う。ノールは、軽やかに着地したククーを見つめた。
「ククー!?」
「ノール、やるじゃないの!」
トキスとククーの登場に、ホウエン兵は怯む。
しかし、カキン王は愉快そうな顔をした。
「これはこれは、逃げ出したファイキャトスとトキスじゃないか。また、私の元へ帰ってきたのかい?」
トキスはカキン王を睨んだ。
「冗談じゃない! お前達の、時移動の手段を断ち、リカクを取り戻すために来たんだ!」
「あんた達に操られるくらいなら、ノールのお守りをしてる方が何万倍もマシよ!」
ククーは全身の毛を逆立て、炎を吐く。しかし、あの時同様、兵やカキン王には効かない。
「どうして、火じゃ駄目なの……!? 敵わないの!?」
それを見て、カキン王は笑い出した。
「こんな雑魚なファイキャトスでは、我が国は滅ぼされまい。もう、ひょっとしたら、未来は変わっているのかもしれないな。……リカクとトキスは捕まえろ。後は、殺して構わん」
カキン王は、兵達に改めて命令を下す。
「そうはさせない」
トキスがそう言うと同時に、ノール達の体があの時のように光る。
ーー一度退くんだ。ウロタ、戻れ。
遠くでそんな声が聞こえ、意識が遠退く。ノールは、自分の声に似ていると思った。




