21、秘密の地下
「こっちです」
リカクは、会った時と同じく兵に変化し、ノール達を案内した。
途中、機械に接触しないようにする。人と通りすぎても、別にノール達を気にした様子はない。ノールとウロタは、生気のない彼らを不気味に感じた。
「何か……、ここの人達って、人のこととか特に見ないよね?」
「全部、データで管理されていますから、知り合いとかと会っても、機械が教えてくれるから顔を見る必要がないんです。下手に、他人と関わるとトラブルに巻き込まれる可能性も大きいですし」
「トラブル?」
「ホウエン国の城と繋がった者に出会って、カキン王の気に障る言動をしてしまったら、処罰の対象になります。だから、下手に喋らず、関わらず、感情を持たず生活してます」
「それって、生きてる意味が……」
「……ないですよね。生きたロボットという感じです。僕も、ずっとここにいたら、こんな風になりそうで……」
リカクは暗い顔をした。ノール達は黙った。
地下水路に降りる。
「結界石は、ホウエン城の中です。ここから入るのが、一番見つからないハズです」
水路は迷路のようになっていたが、リカクは例の光る板を見ながら、迷わず進む。
しばらくして、鉄の頑丈な扉が現れた。リカクは紐のようなものを取りだし、持っていた板と扉を繋ぐ。
「ちょっとこれは時間かかりますので、待って下さい。パスワードを入力しなければいけないので」
扉の向こう側から、唸り声が聞こえた。
「この先は、第六生物研究室になっています」
「生物……」
「……僕も、あまりよく知らないのですが、表沙汰にできないことを研究しているようで……。あっ、開きます」
扉が開き、ノール達は進む。
植物の根や、苔だらけで、滅多に人が使わないようだと思った。
途中リカクは、ハッとしたようにノール達を物陰に引っ張った。
二人の男が歩いてくる。一人は研究員のような白衣姿。もう一人は、武装をしている。立派な装飾で、今まで会ったホウエン国の人間とは雰囲気が違った。
「陛下が直々にいらっしゃるとは……」
「早く、結果を知りたくてな」
「……!」
(これがカキン王!?)
ノールとウロタは思わず声を出しそうになり、リカクに口を塞がれる。
「順調に育っております。孵化までは、時間がかかります……」
「そういえば、卵からだったな。して、いつ頃孵るのだ?」
「はっ、早くて、3000年後かと……」
カキン王が瞬時に、研究員の首に剣の切っ先を突きつける。
「私を馬鹿にしているのか? そんな先まで、私が待てると思うか?」
「もっ、申し訳ありません。まだ自然構築の状態だったので、これが人工構築を受け付ければ5年以内には縮まります」
カキン王は剣をしまう。研究員は、その場にへたり込んだ。
「まあ、いいだろう。それは、本当に我の意思を持つ獣なのか?」
「はっ、はい、間違えありません。陛下の思念を感じ、陛下の考えと同じように動きます」
「ふっ、遠い未来にそれが暴れるのも面白いかもしれないな」
二人は奥へ去っていった。
ノールはゾッとした。
(嫌な感じがする……。どういうこと?)
ウロタもリカクも、青ざめている。
「あの王、何をやろうとしてるんだ……」
「とにかく、ここに長居は無用です。もうすぐで、結界石です」
リカクは進み出した。
ノールは続こうとして、ふと近くの研究室の中を見た。数多くの生物が並んでいる。それぞれに、プレートがつけられている。文字は、ホウエン国の文字で、ノールには読めなかった。
そして、その中に人間の姿を見つけ、ノールは絶句した。
「ヘル……」
ウロタも覗いて、息を飲んだ。
「ヘルもこの時代に戻されてたんだ。しかも、ホウエン城に……」
ヘルは、液体の入った水槽のような物の中に入れられている。
「リカク、ヘルを助けられないか? 前会った時、奴らに操られていたんだ」
「……実験器具がたくさんついてる。気付かれず、やるのは無理です……。それに、今はなるべく騒ぎを起こしたくないし……」
リカクは恐々と言った。ノールは、リカクに頭を下げる。
「お願いだ……。僕の友達なんだ」
「……わかりました」
リカクは誰も中にいないことを確認し、すぐにヘルの入っている水槽に繋がる機械を操作する。
「脳の精神的なところと、心臓の心拍に、カキン王への忠誠というのを刷り込まされています。でも、大丈夫。微弱なので、すぐに消せます」
リカクは操作し、終えたところで、ヘルの指がピクリと動く。
「ここからが勝負です。彼女と操り機の繋がりを完全に断つために、この機械を壊します。ですが、警報が鳴り数分で兵が集まります。それまでに、この先の階段を登り、中庭に出て、結界石を壊します。彼女は、しばらく動けないと思うので、僕が馬に変化して運びますので、背に乗せて下さい。失敗は許されません。……行けますか?」
リカクは真剣な眼差しで振り返って聞いた。ノールとウロタは深呼吸する。
「もちろん」
「やってやる」
リカクは頷くと、今度は棒のような物を取り出す。すると、その先に光の刃ができ、剣になった。
リカクはその光剣を降り下ろし、機械を破壊する。ヘルの水槽が割れ、警報が鳴り響いた。馬に変化したリカクに、気を失っているヘルを乗せ、走り出した。
「何事だ!?」
さっきのカキン王の声が、近付いてくる。
「不味いっ……」
ウロタは声の方へ手をかざした。
「なっ、何だ? 苔や根が、急に延び始めたぞ?」
「みっ、道を塞いで……」
「妖獣がいるのか!?」
そういう声が聞こえ、追ってくる気配がなくなる。
「ウロタさん、今の……」
「あなたも、妖術、使えるんですね」
ノールとリカクに声を掛けられ、ウロタは苦笑する。
「使わないように、してたんだけどな……」
ノール達は、一気に階段を駆け上がった。




