19、ホウエン国
ノールは目を覚ますと、見知らぬ高い建物と建物の間にいた。隣には、ウロタが倒れている。
辺りは、見慣れないものばかりだった。
「ウロタさん」
ノールは声を潜め、ウロタを起こす。ウロタも周りの景色を見て、戸惑った。
「ここ、どこッスか?」
「僕もわからないです。見慣れないものばかりで……」
「俺ら、捕まったんッスかね?」
「どうでしょうか……。ククーもヘルもいないですし……」
「トキスもいないッス」
周りを見ても、かなり発展した町中で、どこかに捕らえられているという感じはしない。
空を見上げると、星空だった。しかし、何か違和感がある空だ。
(空って、こんなに近く感じたっけ? それに、この耳鳴り……)
ずっと、何か機械音のようなキーッという音が続く。ウロタも同じようで、耳を押さえたりしている。
周りを見回していると、目の前に黒い金属のボールのような物が浮かんで、通り過ぎようとした。
「何ッスかね?」
ウロタが触ると、ボールが動きを止める。しかし、今度は赤い色になってビービーと警告音を発した。
『生物ト接触。登録番号ナシ。侵入者発見。空、明ルクシマス』
そう発すると、一気に空が真昼のような青空になった。
「何だ!?」
ノールとウロタは狼狽える。そうしている内に、見覚えのある鎧をつけた兵が駆けつけてきた。
「とにかく、捕まったら不味い!」
二人は駆け出す。
「待て!」
ノールが初めて見るような銃を、兵が構え撃つ。光線が走り、当たった壁に穴が空いていた。
「ノールさん、マジヤバイッス! 奴ら、いつの間にあんな危ない武器を用意したんッスか!」
「とにかく、逃げましょう!」
ノール達が、建物の角を曲がった時だった。
「こっちです」
急に足元から手が伸び、引っ張り落とされた。
「今、奴らは空を飛んで外の方へ向かった!」
上でそんな声が聞こえる。大勢の足音が消え去り、しばらくしてから誰かが降りてきた。
それは、兵の一人で、ノールとウロタは体を強張らせる。
すると、その兵は笑う。
「安心して下さい。危害を加える気はありません」
そういうと、その人の体はグニャリと歪み、一人の子どもの姿になった。
10歳くらいだろうか。可愛いというか、整っていて綺麗な顔立ちで、男の子か女の子かは、見ただけではわからない。声も透き通っていて高く感じるが、声変わりの前なら男の子のような気もする。
「あ、ありがとう……ございます?」
「いいえ」
子どもは微笑むといっそう綺麗に見えた。しかし、子どもらしさは感じられない。
「あなた達は、どこから来たんですか? 言語も、この国のものとは違うし……」
ノールとウロタは顔を見合せる。
「あっ、別に詮索するつもりはありません。言いたくなければ、話されなくても……」
「あっ、違うんだ。この国の言語が違うって、どういうことかと思って……」
「あっ、それは……」
子どもは耳元につけていた、イヤホンみたいなものを外す。
「?????」
子どもは何かを言うが、理解できない。イヤホンを戻す。
「翻訳機なんです。相手の言葉を自動的に翻訳し、自分の言葉も相手に伝えられるよう翻訳してくれるんです。この国の者は、大抵つけています」
「ここは、何の国なんですか? 僕達は、銀の砂漠にいたはずなんですが、気がついたらここに……」
「銀の砂漠? 聞いたことありませんね。……ここは、カキン王が治めるホウエン国ですよ」
「ホウエン国!?」
ノールとウロタは、また顔を見合せる。そして、改めて子どもを警戒するように見た。
「ホウエン国の人は、皆僕らを狙っているわけではないんだね?」
「僕は、ホウエン国城・第一機械研究室代表でリカクです。特に、あなた達を捕らえよという命令は入っていません」
「お前みたいな子どもが?」
ウロタは目を見開く。
ノールはそれより、「僕」というので男の子だというのを確認していた。
「これでも、僕の脳はどの人より容量が良いようで、一通りの知識を身につけました。知識に関しては、大人には、そうそう負けないつもりです。現に、今機械達に偽の情報をデータで流して、隠れているのですから……」
「偽データ?」
「この国の至るところ、機械が監視しているんです。異常があれば、兵達に通達がいく仕組みなんです。だから、今は機械達にあなた方を探させないようにしました」
「よくわからないけど、助かったッス」
ウロタは頭をかく。リカクは微笑んだ。
「さっき変身してたのは?」
「あれは、僕の妖術です。僕は、人と妖獣が共存している青の森というところの出身で……」
「青の森っ」
ウロタの驚きの声に、リカクは首を傾げる。
「ご存知で?」
「知ってる。俺も、そこ出身なんだ。……トキスは知ってるか?」
「はい。僕の友達です」




