18、銀の砂漠
辺り一面、銀色だった。
「砂が銀色……。殺風景だけど、綺麗……」
ククーが息を飲む。
ノールは砂漠を見てボーッとしていた。
小さい頃の記憶が甦る。
ーー幼いノールは、父親と銀の砂漠にある遺跡を見に来ていた。父親が見てない隙に遺跡の外に出て、興味本位で銀の砂漠をヨタヨタ歩いていると、どこから来たのか、帰り道がわからなくなっていた。
『ここはどこ? おとうさん! おかあさん! ……うわっ!』
砂嵐が目の前に迫っていた。幼いノールでも、砂嵐は危ないことはわかった。しかし、砂に足が取られて上手く逃げられない。
泣き出しそうになった時、体がフワリと浮く。
見ると、光輝く翼を持った妖獣が、ノールの襟首を咥えて飛んでいた。
『人の子が迷いこんだのか……』
『だれ?』
ノールの真っ直ぐな瞳を見て、妖獣は目を細める。
『……お前は』
『うわあ! ようじゅうさんだ! きれいなからだ! にじみたいで、光ってる!』
ノールの純粋な反応に、妖獣は苦笑した。
『妖獣を見ても、怯えないなど、馬鹿なのか……』
『おかあさんが、あぶないかどうかは、めをみればわかるっておしえてくれたから。きみは、あぶなくないよ』
『本当に、お前は厄介な奴だ。ほら、町まで届けてやる』
『まって! ぼく、おとうさんといせきみにきて、ここまできちゃって……』
『わかった。父親のとこまで、送ってやる』
『ありがとう!』
『ノール、大きくなったら……、獣と渡り合える力が欲しくなったら、また来い』
妖獣は、父親のいる遺跡の前にノールを降ろすと、すぐに消えてしまったーー。
「ノールさん?」
気がつくと、皆心配そうにノールを見つめていた。
「僕、ここで昔妖獣に助けてもらったんだ……」
「妖獣に?」
「子どもの頃、銀の砂漠で迷ってたところ、虹色の妖獣に会った」
ノールは遠くを見つめる。そして、目を見開いた。
そこに幼い頃の記憶通りの妖獣が現れたのだ。
「トキス!!」
ウロタが声をあげ、ノール達は驚く。
「ようやく来たか、ノール」
妖獣は、真っ直ぐノールを見つめる。
「僕のこと、わかるのか?」
「私はずっと、待っていた。この杖を、お前に渡すために……」
砂の中から、不思議な杖が現れ、ノールの前にゆっくりと漂ってきた。
赤い綺麗な玉がついており、見ただけでただの装飾ではないのがわかる。
「この杖を生かすも殺すも、お前次第」
「僕に?」
ノールはおそるおそる杖を掴んだ。
「やっと、追い詰めたぞ!」
突然、後ろから声が聞こえ、振り返るとホウエン兵が揃っていた。
「やはり、顔馴染みにはあまり警戒しなかったようだな」
「えっ?」
ノールが問いただすより先に、ヘルがノールの背後に行き、ノールの喉元へナイフを突きつけた。
「ヘル!?」
「ノールさん!!」
ククーとウロタは驚いた声をあげる。
「動かないで。私は、カキン王の命に従い、ファイキャトスとトキスを捕まえに来たのだ」
「……やっぱり、操られてたんだね」
ノールは動じた様子はない。ヘルの顔は険しくなる。
「何?」
「見てたら、いつものヘルじゃないことくらいわかるさ」
ノールは隠し持っていた小袋を、背後のヘルの顔にぶつける。
「なっ!? ゴホッ」
粉が舞い上がりヘルの視界を悪くする。その一瞬の隙に、手に持った杖でヘルのナイフを弾き飛ばす。とても固く丈夫な杖なのに、重く感じられない。
「ちっ!」
ヘルは今度は短剣を取り出した。それを合図にするように、兵達が一斉にかかってきた。ククーは炎を吹く。しかし、その中を意図も簡単に抜けてくる。
「あたしの炎が平気なの!?」
「ファイキャトスの炎対策など、とっくに終わらせてる! 覚悟しろ!」
ククーとウロタに、兵達は大剣を振り上げる。
「ククー! ウロタさん!」
ノールはククー達を庇い、杖で防御態勢をとった。すると、キーンと弾かれる音がする。ノール達の周りに、光の壁ができていた。
「これは……、妖術?」
ノールは驚いていたが、ククーは絶好の機会を逃さず、ノールの前に飛び出した。
「よくもやってくれたわね!」
ククーはそう言うと、2本の尾を大きく振った。すると、砂嵐が起こる。
その砂嵐に大半の兵は吹き飛ばされたが、まだ残っている者もいた。
その兵が、ククーにボールのような物を投げ煙がククーを覆う。
「しまった!」
「ククー!!」
以前やられたことのある、痺れ煙玉だ。ククーは煙を吸い込んでしまった。
ノール達は不味いと思ったその時、その場にいた者全員の体が光った。
ノール達はこの光の意味をわかっていなかったが、兵達が慌て始める。
「不味い! トキスの時移動だ!!」
「何故、今!?」
「どこに飛ばされるか、わからないぞ!」
兵達が、口々に叫んでいるのが、遠く感じる。
光が消えると共に、全員消えてしまった。
ノールは意識を失った。




