15、宛
ノール達は、ワコーの港町に戻ることにした。
その道中、ノールは歩きながらマフィンに渡された本をめくる。
ノールは険しい顔をした。
「何かわかるの?」
ククーが覗いてきた。ノールは頷き、本の表紙を撫でた。
「この表紙、ホウエン文明の太陽をモチーフにしたマークに似てるんだけど、少し違うんだ。それに、ホウエン文明で使われていたものだったら、機械の金属の破片とか必ずと言っていいほどついてる。機械がそれほど、身近なものだったんだね」
「そうね。どの人間も、頭に変な機械の輪をはめていて、滑稽だったわ。人間はもちろん道も建物も空も、変な機械ばっかり!」
ククーが吐き捨てるように言う。
「でも、僕達を追ってる兵も小さな機械とか身に付けてたよね」
「そうね。でも、あれなんか比じゃない程、耳障りな機械にまみれてたわ」
「兵? 追ってる?」
ウロタは首を傾げる。
「そういえば、言ってませんでしたね。ククーは、過去からホウエン国に捕まっていたのを逃げてきたんです。それで、兵も過去から追いかけてきて、僕もククーを庇ったので、一緒に逃げています。あと、僕の友人のヘルも彼らに捕まってしまい、それで、時を移動する妖獣に会いたかったんです」
「ノールさん、こんな若い頃からずいぶんと苦労を重ねておられたなんて……」
ウロタがじーんとしている。ククーはため息をつく。
「それで、あと他にわかったことは?」
「後……、まだ文字の解読とか進んでないけど、わかる範囲で最初の文字……、たぶんホウエンの文字で『ノール』って書いてある」
沈黙が降りた。
「……えっ?」
「やっぱり、僕宛で良いみたい……。ホウエン文明後に、ホウエン文明を装って僕に……」
「何か、自分が知らない人が自分を知ってるって、気味悪いわね」
「どうだろう……。僕も知ってる人からなのかな……」
ノールは目を細めた。その後、しばらく誰も口を開かなかった。
ワコーの港町に戻り、今度はショウ島行きの船に乗った。
ノールは一人、甲板で海を眺めていた。潮風が肌寒い。
ーーノール、大丈夫?
聞き慣れた声が、頭に入ってきて、ノールはハッとする。
「ヘル!?」
ーー今、どこにいるの?
「今は船だよ。これからショウ島の銀の砂漠へ行くところだよ。ヘル、大丈夫なのか?」
ノールがそう尋ねるも、それ以降、応答がなくなった。
ノールは言い知れぬ不安が過った。




