14、休息
ノールは野宿でないことに安心し、寝坊してしまった。起きると、もうすでに寝床には、ククーもウロタもいない。
外に出ると、そこにはククーとウロタを交えて、森の人々や妖獣達が語らっていた。
人が、泥だらけの芋を持ってくると、鱗の妖獣が口から水をだし、洗ってあげる。妖獣が、木の枝で怪我をすると、人が傷薬を塗ってあげている。カゴいっぱいの木の実を持ってきた人が、カゴを放り投げると、中の木の実は勝手に周囲の人や妖獣に配られていく。
ノールは惚けその光景を見ていた。
「あら、お寝坊さんのお目覚めね。もうお昼近くよ」
ククーはノールに気づき、嫌みっぽく言う。
「だったら、起こしてよ!」
「ふふっ。『出会ってから、ずっと追われ続けて野宿だったから、これから倒れないためにも、ゆっくり眠らせておきましょ』と、気遣ってあげたのも、ククーさんですよね」
マフィンが楽しそうに言う。ククーの毛が逆立った。
「べっ、別に、ノールを気遣ったわけじゃないわ!」
焦るククーを、皆笑う。ノールはククーの横に座り、優しく撫でた。
「ありがとう、ククー」
「だから、そんなんじゃないわ!」
「ククー様が、人と仲が良いのは意外だ……」
「ホウエンを滅ぼしたくらいだから、人に憎悪を持っているのかと思った」
周りの妖獣達が、顔を見合わせて驚いている。
「人は嫌いよ!」
ククーは意地を張ったように言う。
「この森の皆さんも仲が良いですよね?」
ノールがそう尋ねると、マフィンは頷く。
「妖獣が、我々を人として分類しないでくれているおかげです。我々も、妖術を使うおかげで妖獣と扱われ、森に追いやられたと聞きます。それに、ここの妖獣も我々以外の人は嫌うことがあります」
「そっか……。やっぱり、どこの妖獣も人は嫌いなのか……」
「……きっと、人と獣が分かち合う架け橋になるのは、あなただと思います。妖獣であるククーさんが、人を嫌っているにも関わらず、あなたと一緒にいるのですから」
マフィンは微笑んだ。
「さあ、ノールさん。明るい内に森を出ちゃいましょう」
ウロタが声をかけてくる。ノールとククーは頷いた。
「もう行くのか?」
そう尋ねてきたムースに、うなずいてみせる。
「僕達は追われている身なので、あまり同じところに長居はできません」
「そうか」
ノールは身支度をしながら、ムースの方を見た。
「そういえば、トキスの居場所とかご存知じゃないですよね?」
「知らないな。この時代にはいないとか、選ばれた者しか会えないとか、遥か昔に友を守るために命を落としたとかいう話もあるし……」
「そうですか……。わかりました」
「じゃあ、今度は杖でも探しに行きましょ」
ククーの意見に、ノールも賛成する。ウロタは首を傾げる。
「杖?」
「妖獣と渡り合える力があるという杖が、銀の砂漠にあるらしいんだ。僕に扱えないかと思って……」
「……! それなら、ノールさんなら、きっと大丈夫ッスよ! きっと、ノールさんの人柄で使いこなしちゃいますって!」
ウロタの顔が明るくなる。ノールは苦笑した。
「人柄って……。とにかく、港町へ戻ろうか」
「賛成ッス! 俺、杖の場所知らないッスけど、命に代えても見つけるッス」
「だから、命に代えないで」
ノールはウロタを宥める。そして、マフィン達を方に向き直った。
「本当にありがとうございました!」
「いいえ。頑張って下さいね」
「元気でな!」
ウロタが、ムースとマフィンに黙って深々と頭を下げた。下を向いた顔から、滴が一つ落ちるのにノールは気づいたが、理由を聞くことはできなかった。




