表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

11、未来から


 ノール達は、リナト大陸・ワコーの港町に着いた。ザザーンの町より、人が多く賑わっている。


 周囲に誰もいないことを確認し、ノールは路地裏でククーを鞄から出した。ククーは、外の空気を思いっきり吸い込む。

 ククーが息を整えるのを待ってから、ノールは地図を出して方角を確認した。


「青の森は……、リナト大森林の中にあるっぽい」


「大森林の中? どういうことよ?」


「ほら、地図を見て。大森林の一部を青の森って言うみたいだ」


「つまりは、大森林の中を歩き回って、青の森を見つけて、その中も歩き回って、時移動の獣を探さなきゃいけないのね……」


 ククーはうんざりしている。


「何とかなるよ」


 ノールは笑ってから、振り返り歩き出そうとした時、通りかかった青年とぶつかってしまった。


「すっ、すみません」


「しっかり、前見て歩けよ」


 青年は、睨んでくる。ノールは、ククーも外に出ているのでまずいと思った。

 しかし、青年はノールの顔を見ると、目を見開いた。


「……ノールさん? あなたは、ひょっとしてノールさんじゃないッスか!?」


 見知らぬ青年が、自分の名前を親しげに呼んでくるので、ノールは固まってしまった。


「えっ? 確かに僕はノールだけど……」


「やっぱり! 俺、ノールさんと繋がってたんだなぁ!」


「は?」


 嬉しそうに言う青年に、ノールは目を丸くする。


「ちっさいなぁ。まだ、若いなー。いや、今でも若いのか! でも、やっぱり昔から賢そうだな! この時から、がり勉なんッスか!」


「あの、あなたは誰ですか? 何で、僕のことを知っているんですか?」


 ククーは、青年の発言に笑いを堪えている。ノールは、不機嫌になりながらも、冷静に聞く。


「ノールさんは、俺の命の恩人ですよ!」


「えっ!?」


「正確には、過去のあなたではなくて、今の……あなたの未来のノールさんに助けてもらいました!」


「未来!?」


 ノールとククーは同時に叫んだ。


「俺は、未来から来たウロタ。青の森の住人ッス!」


「本当に未来から来れるの!?」


「未来では青の森に、人が住んでるんですか!?」


 ククーとノールは、ウロタと名乗る青年に詰め寄る。


「妖獣さんに協力してもらって、この時代に来たんッスよ。それと、青の森にはこの時代から、人は住んでるはずッスよ?」


「協力!?」


「青の森って、人禁制区域じゃ?」


 ノール達の迫力に、ウロタは数歩下がった。


「とりあえず、順番に質問してくれないッスか……」


 ノールとククーは顔を見合せ、頷いた。


「妖獣がそう簡単に、人に協力するの?」


「昔は、結構対立が厳しかったらしいッスけどね。今は、好かれてれば、割りと助けてくれるッスよ」


「あなたは、好かれてるんですね?」


「……ノールさん、そんな他人行儀じゃなく、ウロタって気安くして下さいよ」


「えっ、いや……、今の僕はウロタさんより年下ですし……。ウロタさんこそ、僕に『さん』づけや、敬語をやめて下さい」


「やっぱ、ノールさんは道理を通す男ッスねぇ! あなたについていって、間違いなかったッス!」


 感激しているウロタに、ノールはまた固まり、ククーはやれやれと呆れている。


「随分、あんたに心酔してるわね」


「他人の空似じゃないのかな?」


「ノールさんに間違いないッス! 幼少のころから、学者の父親についてあちこちの町を渡り歩き、若くして自分も学者の道を目指したとか! そして、シャクガの町に落ち着いて、その地方の遺跡探索で、過去から来たファイキャトスの子に出会ったとか!」


「……随分、未来の僕は君を信用しているみたいだね」


「はい! ノールさんは、過去の自分の手助けをしてほしいと俺に頼んだッス!」


 それを聞き、ククーが前のめりになった。


「じゃあ、これからあたし達がどうやって、どうなるのか全部知ってるってこと?」


「あっ、いえ。ノールさん、そういうのは教えてくれなかったッス!」


「この役立たず!」


 ククーはノールを睨む。


「今の僕に言われても……。たぶん、過去を変えられないようにするため。未来を変えたくないんだ。僕だったら、好奇心で違う行動をとろうとするだろうから……」


「さすが、ノールさんはいつの時代も賢い!」


「とにかく、過去に行ける手段があるなら、僕はヘルを助けたい!」


 ノールは真剣な眼差しで、ウロタを見た。ウロタはキョトンとする。


「……ヘルって誰ですか?」


「えっ? 未来で会ったことないですか? 僕と仲良い女の子なんですが……」


 ノールはその言葉に動揺した。


「いやー……。ノールさんの友達に会ったり色々しましたが、そういう人には会ったことなかったッスね!」


 ノールはうつむく。


(……そうだよな。いつまでも、友達でいるような気持ちでいた。大人になっても、交流あるとは限らないんだ……。何か、ちょっと恥ずかしい……)


「ノールさん?」


 急に黙ったノールを、ウロタは心配そうに見る。


「いえ、何でもないです」


「とにかく、青の森へ案内してもらいましょうか」


 ククーが仕切り出す。


「……この時代、どうやって行けばいいのかなぁ」


「知らないの!?」


「俺は、この時代は初めてなんだ」


「本当、いつの時代も人って使えないわね」


「……さっきから、気になってんッスけど、この偉そうな妖獣はなんッスか?」


 ウロタは、ククーを胡散臭そうに見る。


「聞いたことないですか? ククー……、ファイキャトスですよ」


「何ぃ!!!? この生意気な獣が、ノールさんが、いつも話してくれる、強くて美しくて優しい神秘的な伝説の妖獣なんッスか!?」


「ちょっと、ノールあんたを見直したわ」


 ククーは嬉しそうに尻尾をピンとさせ、ノールを見る。


「いや、だから今の僕に言われても……」


「ファイキャトス、ヒョウフライの森を焼き払う程の炎の妖術使い。

 その口から吐く炎は意思を持ち、望む物全てを燃やし尽くし、その尾は自在に風を操り全てを吹き飛ばし、炎の助けをする。ホウエン文明を滅ぼした後、妖獣の頂点に立ち、人と獣の決まりを作る。

 ノールさんが、熱く語ってくれた伝説でこう聞いてたのに……」


「えっ!? 伝説が増えてる!?」


 ノールは身を乗り出す。


「ノールさん、いつも難しそうな冊子を大切に持ってたから、それに書いてあったのかも」


「冊子?」


「太陽のマークが描かれていて、中は見せてくれなかったんッスけど……」


 ノールは太陽のマークに心当たりがあった。


「太陽のマーク……。ホウエン国のマークだ!! 未来に新たな文献が見つかったのか!?」


「すみません。中を見せてもらったことがないので、わからないッス」


「そうですか……」


 ノールは少し残念そうにする。


「で、結局、青の森まで案内できそうなの?」


 ククーは目を鋭くして、ウロタを見る。


「たぶん、大丈夫ッスよ」


「じゃあ、道案内に任命するわ。あたし達を案内しなさい」


「何で、あんたに命令されるんだ?」


「あたしと、ノールは行動を共にしてるの。あたしの悩みはノールの悩み」


「マジッスか!?」


 ノールは苦笑する。


「……まあ、ちゃんと行けるか不安だったんです。お願いできますか?」


「それなら、このウロタ! 命に代えても、青の森までノールさんをご案内します!」


「いや、命に代えないで下さい……」


「やっぱり、ノールさんって優しいッス!」


「……こいつも、馬鹿ね」


 ククーは吐き捨てるように言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ