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第六話 新たな世界と、マヨネーズハムの汚染。新世界(物理)が可哀想だよ!

「ふぅ……。やっぱりチョコバナナはこうでなくっちゃ」


天界の自室で、私はクレープの余韻に浸りながら、至福のティータイムを過ごしていた。

下界では「スイーツ平和条約」が発動し、平和な日常が戻っている。カルニは「究極の生ハムメロン」を作るために修行へ旅立ち、ゼラチンは魔界で「ハム抜きの甘味」を再構築中。イネプツもゴミ箱の中で静かにしている。


「……完璧。これが創造神のあるべき姿よ」


私は満足げに管理パネルを開いた。……が、そこに表示されていたのは、真っ赤な[ 致命的なエラー ]の文字だった。


「……は? また? 今度は何よ。魔王がまた暴れてるの?」


[ 通知:自世界から『ハム』および『マヨネーズ』の概念が99%パージされました ]

[ 警告:排出された高濃度の脂質エネルギーが、隣接する『並行世界β』に流入 ]


「……え、待って。パージ(排除)した分、どこに行ったのよ」


慌てて並行世界βの観測モニターを起動する。

そこに映し出されたのは、あまりにも凄惨な(そして美味しそうな)光景だった。


「……嘘でしょ。あっちの世界、勇者じゃなくて『マヨネーズ』が召喚されてるじゃないの!!」


並行世界β。

そこは、本来なら剣と魔法の王道ファンタジーが繰り広げられるはずの、純真無垢な新世界。

しかし今、空からは私の世界から溢れ出した「タクティカル・ハム」の残骸がメテオのように降り注ぎ、大地からは源泉掛け流しの「マヨネーズ温泉」が湧き出していた。


「ひ、酷すぎる……。あっちの創造神(同僚)、絶対泣いてるわよ。あんなに綺麗だった草原が、今や巨大なポテトサラダの盛り合わせに……」


モニターの中では、並行世界の住民たちが困惑していた。

『見ろ! 空から巨大な肉塊が!』

『なんてこった、川の水が全部タルタルソースに変わっていくぞ!!』


「……。……。見なかったことにしようかしら」


そっとモニターを閉じようとしたその時。


『おーい! アルブス様ぁ! お隣の世界に私のマヨネーズ・アフターバーナーが転送されちゃったみたいなので、ちょっと回収(追いマヨ)に行ってきまーす☆』


「イネプツ!! あんた、いつの間にゴミ箱から……!!」


管理パネルを見ると、イネプツが並行世界へのゲートを勝手にこじ開け、マヨネーズの波に乗って次元を超えていく姿が映っていた。


「待ちなさい! 汚染を広げるんじゃないわよ!! 誰か、誰かあの無能を止めて!!」


私は、せっかくのティータイムを投げ捨て、管理杖を掴んで立ち上がった。

このままだと、隣の世界の魔王が「ハムの脂で滑って転んで死亡」なんていう、締まらない結末を迎えてしまう。


「……可哀想すぎる。新世界(物理)が、私の尻拭いのせいで脂ぎっていく……!!」


アルブス様、ついに「並行世界の環境保全」という、さらに面倒な仕事に巻き込まれる――。


私は慌てて管理杖デバイスをひったくり、次元のゲートに飛び込んだ。


「待ちなさいイネプツ! これ以上被害を広げたら、今度こそあんたを構成データレベルで圧縮して『概念上の漬物石』にするわよ!!」


ゲートを抜けた先は、本来なら澄み渡る青い空と、伝説の聖剣が眠るにふさわしい静謐な森のはずだった。

しかし、私の目に飛び込んできたのは、異臭……もとい、「あまりにも食欲をそそる芳醇な香り」に包まれた地獄絵図だった。


「……なにあれ。前衛芸術シュールレアリスムの極致ね」


眼下の湖は、透明な水ではなく「特製シーザードレッシング」に置換されていた。

岸辺には、本来なら世界を救う勇者が引き抜くはずの『聖剣エクスカリバー』が刺さっている。だが、その刀身は今や、上空から降ってきたタクティカル・ハムが直撃し、「厚切りハムの串刺し」のような状態に成り果てていた。


「おおお……伝説の剣が……伝説の剣がジューシーに……!!」


湖畔で膝をつき、祈りを捧げている若者がいる。たぶんこの世界の勇者だろう。

彼は聖剣を引き抜く代わりに、剣に刺さったハムを必死に削ぎ落として食べていた。


「ダメだわ、この世界の希望リソースが脂質に負けてる……!」


「あ! 神様、こっちですよー! 見てください、この世界の魔王軍、マヨネーズをぶっかけたら『マイルドな味』になって戦意喪失しちゃいましたぁ!」


空中をマヨネーズのサーフボードで滑りながら、イネプツが手を振っている。

彼女の後ろには、白く塗りつぶされた魔族の軍勢が「……争いなんて、お腹が膨れればどうでもよくないか?」という悟りを開いたような顔で座り込んでいた。


「イネプツ、あんたね……。これは平和的解決じゃないの、概念汚染なのよ! 隣の世界の神様からクレーム(神託)が来たらどうするのよ!」


「えー? でも見てください。あそこの村、マヨネーズの供給が安定したおかげで飢饉が解決したって感謝状(クエスト達成)が出てますよ?」


[ システム通知:並行世界βの信仰対象が『創造神』から『調味料』に移行中 ]


「管理パネル、そんな不吉なログを流さないで!!」


私は頭を抱えた。

自分の世界から「スイーツ平和条約」でパージした負の遺産ハムとマヨが、ここでは「恵みの雨」として受理されてしまっている。このままではこの世界は、遠からず「巨大なサンドイッチ・ワールド」として固定されてしまうだろう。


「……やるしかないわね。並行世界の神様、ごめんなさい。一回だけ、ここの物理法則を借りるわ」


私は管理杖を高く掲げ、空中に巨大なコマンドラインを展開した。


[ Command: Dimensional_De-Oiling (次元脱脂) ]

[ Target: Parallel World β ]

[ Parameter: Temp = 180℃ / Centrifugation (遠心分離) ]


「全次元の脂を絞り尽くせ!! 『超重力・ノンフライヤー・バースト』!!!」

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