14、物真似少女は先生を脅す
「1人、2人、3人!」
遂に最後尾から抜け出すことに成功した。
身体を動かす度にミシミシと軋むような音が身体中からしているような気がする。
強化系の異能を重ね掛けすると身体が持たないからこんな事になる。
そもそも限界突破という異能は無意識でセーブしている力を無理矢理解放する異能でこれを使うと身体強化以上に強くなれる代わりに怪我とかお構いなしに身体を動かすから後が大変なんだよ。
今は限界突破の副作用みたいな効果で痛みを感じにくくなってるから良いけど実際は酷い痛みがあるだろう。
「あー、なんでこんなに頑張っているんだろう……!」
学食数回分じゃ割に合わないって……
「どうせ身体がぶっ壊れるならより多く抜かしてからぶっ壊れろ」
少しづつ先輩達を抜かしていき半分は超えただろうくらいまで走った。
「はい、終了だ……」
残念ながら半数程度で終わってしまったようだ。全員は無理だったけど半月分くらいの食費は確保出来たかな。
「あ、魔力切れた」
魔力が無くなった私は力尽きるように膝をついて倒れた。
よく考えたらこんなに頑張らなくても適当にAランクダンジョン潜れば食費くらい稼げたじゃん……負けず嫌いの悪い癖でたな。
「白百合……お前、大丈夫か?」
「大丈夫なわけないでしょう。多分、足の骨にヒビ入ってますね」
「そんなに頑張るなよ……」
「私の負けず嫌いはあの火傷で知っていましたよね?」
「そうだった……すまん、治療費は私が出そう」
ずっとミシミシいってたしワンチャン折れてるかもね。制服で走りにくかったのも原因の一つだよ。
あー何なってんだろ私。
魔力無くなっちゃったから異空間収納でポーション取り出せないし回復するまではこの激痛に耐えないとなぁ。
「あー、白百合に負けた奴はちゃんと後日奢るように……って思ったが金ない奴もいるだろうしそれも私が払うわ。とにかく白百合を病院に連れて行くからこの後は自主練で」
「保健室じゃないんですね」
「安静にしろって言われてたのにこんな怪我させて戻ってきたらなっちゃん激おこだぞ」
「……病院でお願いします」
なっちゃん先生が怒ると凄く怖そうだ。この件は内緒にしなければ。
「しかし一体お前は何の異能なんだ?明らかに強化系の異能を使っていると思えば異空間収納のようなこともしているし……言いふらしはしないから教えてくれ」
「先生なんだから調べようと思えば分かりますよね?」
異能の情報で嘘はついていないから調べたらすぐに分かるはず。
「まあ、そう言われればそうなんだが本人から聞きたい」
「と言いながら本当は調べるのが面倒とかそんな理由なんですよね?」
「バレたか」
なんとなく中西先生の性格が分かってきたぞ。この人、教師という立場を利用していばり散らかしているだけだ。
面白そうな事にはとことん金や権力を使うタイプの人でしょ。
「まあ、良いですよ。私の異能は物真似の瞳です」
私は手短に自分の異能についての説明をした。
「なるほど、だからずっと片目を隠していたんだな」
「不便ですけど勝手に物真似しちゃうんで仕方ないです」
いつかは制御出来る様になるのだろうか。
「魔力が空っぽでも物真似するのか?」
「それがするんですよ。謎ですよね、この異能」
魔力が無くても物真似の瞳は発動する。
一時期、ずっと魔力を空っぽにして生活してた事があったけど魔力が無くてただ怠くなっただけでこの瞳は無差別に物真似しやがった。
「今更だけどその怪我で普通に歩いて大丈夫なのか?救急車を呼んでも良いレベルの怪我なのに今気がついた」
「本当に今更ですね。歩く度に痛いですよ」
痛みに慣れてるとは言えないが数年前にちょっと油断して大怪我したことがあったからあの怪我に比べたらなんて事はないってだけ。
「背負ってやるから私の車で病院向かうぞ」
「病院はいいんであれ下さい、回復ポーション」
「回復ポーション?私は下級のポーションしか持ってないからその怪我は治らんぞ、多少の痛み止めにしかならん。あとそもそも白百合は上級ポーションを飲んだばっかりだから効果があるかも微妙なところだぞ」
ポーションは一回飲むと1日程度は時間を空けないとほとんど効果がなくなる。
「明日になるまでこの痛みに耐えれば上級ポーションで治せると思うので。病院とか何回か怪我を見せに行かなきゃいけないの面倒です」
「え、でもその上級ポーションの代金は私が支払うんだよな?」
「もちろんですそうけど何か文句があります?」
「病院の方が安……」
「あー、なっちゃん先生に中西先生に怪我させられたって言おうかなー」
「……上級ポーションで」
諦めるように中西先生はそう言った。




