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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
最終章 〜悠久の愚者編(下)〜

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◆エピローグ12:アズリー、新天地へ

今回は予約投稿のため、更新時、活動報告で更新報告が出来ませんでした。すみません。

 ―― 戦魔暦九十六年九月八日 ――


 トウエッドを離れ、ララの空間転移魔法陣(テレポーテーション)を使い、旧フォールタウン(ららふぁ~む)にやってきたアズリーたちは、魔法や魔術、そして鍛えた肉体を使い、大地を(なら)し、木材や石材を切り出していた。


「いくらアズリーの魔法があるからって、これはシンドイだろ……」


 ブルーツが辛そうな表情をしながらドンと石材を下ろす。


「ブルーツさん、石材はここです。丁寧に並べてください」

「おいおいブライト、仕事とはいえ初日からこんなに飛ばすもんなのかよっ!?」


 石材を数えるブライトに悪態を吐くブルーツ。


「今日中に城を建てる予定です」

「城ぉっ!?」

「ここはまだ『ららふぁ~む』と城を繋ぐ歩道ですからね。始めて一時間でそんなにへばるのは計算外です」

「どんな計算してんだよっ!? お前とウォレンは!」

「当然、魔王軍にいち早く飛び込み、生き抜いた銀狼ブルーツの底知れぬ体力を計算に入れてます」

「おい! そりゃ生き死に懸かってる戦争の話だろぉが!?」

「どう考えても終わった戦争よりも、建国の方が生き死にに関わりますよ。それに今、ブルーツさん、お金ないんでしょう?」

「くっ!? く、くそっ! 足下見やがってっ!」

「言っておきますけど、ブルーツさんが一番遅れてますからね?」

「はぁ!?」

「リーリアさんは既に城用の石材の切り出しを始めています。ブルーツさんと同じ範囲の整地を終わらせた後に」

「リーリアの方がレベル高いんだから当然じゃねぇか!」

「ブレイザーさんが言ってましたよ。ブルーツさんは最強の冒険者だと」

「そりゃ盛ってるだけだろうが!」


 ブライトは背後で息切れするブルーツを見ずに、石材を数えながら淡々と言う。

 ブルーツは唾をまき散らしながら苦情を入れるも、ブライトがそれを受け入れる予定はなさそうである。

 そこへやって来たのは汗をかきながら、巨木を持って走り回るベティーだった。


「あん? 何やってんのよ兄貴。まだ終わってないの?」

「こんな重労働なんて聞いてなかったんだよ!」

「何言ってんの。モンスター相手にするより断然楽じゃない? 馬鹿なの?」


 ベティーは時計の秒針のようにことりと首を傾げ、ブルーツを哀れむように見る。

 そして、ベティーはこれは奇妙な生き物だと言いたげにブライトに目をやった。


「これが普通の反応です」

「くっそぉ! やれば! やればいいんだろうが!」


 ブルーツが顔を歪ませながら叫ぶ。

 捨て台詞のように石材置き場に向かうブルーツの背を見た後、ブライトとベティーは見合って肩を竦めたのだった。


「我が儘な子供みたいね」

「あの人から剣を取り上げない方がいいのかもしれませんね」

「切り出しだけはリーリアと互角だったのに」

「わかりました。そっちに偏らせましょう」

「さすがに気付くと思うわよ?」

「それを気付かせずにやるのが僕の仕事です」

「ふふふ、頭脳労働も大変よね」


 難しい顔をしたブライトにくすりと笑ったベティーは、そのまま北へと走って行ったのだった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ブルーツが石材置き場へやって来ると、そこではアズリーがウォレンに悪態を吐いていた。


「おかしい! おかしいですって! なんで悠久の愚者(エターナルフール)使わせてくれないんですか!?」

魔王陛下(、、、、)がそれを使ったら世界は終始事件となります。それは避けねばなりません」

「じゃあせめて究極限界(アルティリミット)を!」

「計算したところ、魔王陛下が究極限界(アルティリミット)を使うと皆さんの作業効率が三割減します」

「どんな計算ですか!?」

「勿論、魔王ルシファーを倒した最強の男の究極限界(アルティリミット)を浴びた屈強な戦士、魔法士を対象とした計算です」

「もう……ストアルームの描き過ぎで指が……指が()りそうなんです……!」


 泣きつくようにウォレンのローブに縋るアズリーだったが、ウォレンがアズリーを救う事はない。


「駄目です♪」

「ポチビタンデッドを!」

「数に限りがありますので駄目です♪」

「くそぉおおおっ! 足下見やがってぇ! ほい! すとあるぅむ・かうんと10&りもぉとこんとろぉる!」


 やけくそになった様子のアズリーの荒い宙図(ちゅうず)

 それを見たウォレンがうんうんと頷く。


「そうです。やれば出来るじゃないですか」

「おかしい! 絶対に魔王の仕事じゃないよこれ!」

「そんな事はありません。要所にストアルームを繋ぐだけで皆さんの労力が緩和されるんですから」


 石材置き場の一部を一つのストアルームで覆い、残りの九つのストアルームを作業の要所へ運ぶ。これだけで皆は、ストアルームに手を入れるだけで石材が取り出せるのだ。


「空間転移魔法だとどうしても転移までの時間がかかってしまいますからね。これがベストな作業効率です」


 とウォレンが言ったところで、後ろからブルーツが声を掛けた。


「いや、俺のところには置いてくれよ!」

「空間転移魔法ですか?」


 振り返るウォレンが言う。

 ブルーツはそれにぶんぶんと頷き、その必要性をアピールする。


「ブルーツさんのところはギリギリ人力の範囲内なんですよね」

「か、堅いこと言うなよ?」

「日当が減ってしまいますが構いませんか?」

「何でそうなるんだよっ!?」

「空間転移魔法は特殊魔法技術料が掛かりますので、少々お高めですよ?」

「いやだからっ!?」

「技術の安売りをしろと?」

「ぐっ!?」

「ブルーツさんの身体能力も、ちゃんと特殊身体能力給が割り当てられていますからご安心ください」

「くぅ……ほんのちょっとも駄目なのかよっ!」

「一つを許せば全てを許さなくてはならなくなります。法治国家を建国するのであれば、これは必要な事ですよ」

「くっ……!」


 再び弁論に敗北したブルーツは、肩を落としながら石材を運ぶのだった。

 すると、この二人のやり取りに聞き耳を立てていたアズリーのやる気が向上する。


「そうか! このストアルームもきっと特殊魔法技術給が入ってるんですね! お金になるとわかればじゃんじゃんやりますよ、俺は!」

「いえ、魔王陛下は固定給です」

「はぁっ!?」


 首をぐいんと(ねじ)りながらウォレンを見るアズリー。


「何でですかっ!?」

「だって陛下は……公職じゃありませんか」

「公職……ですって……!?」


 目を丸くして驚くアズリー。

 するとウォレンがくすりと笑った後、アズリーに補足をした。


「ブルーツさんは銀の所属ですからね。まぁ、それもその内変わるとは思いますが」

「うぇ? ブルーツのヤツ、銀を抜けるんですか?」

「いえ、そういう訳ではありません。銀というチームを組織化するんです」

「組織化?」

「チームという特性を持ったまま、別の部門を作る……というのがわかりやすいでしょうか」

「それ、ポチズリー商店でやってたような事です?」

「近いですね。ここに国家という繋がりを作る事で失業の心配を防ぎます」

「つまり、副業自由の臨時公務員……?」

「とても良い呼称ですね。採用しましょう」


 パチンと両手を合わせ、アズリーの言葉に賛同を見せるウォレン。

 それを呆れた目で見るアズリー。そして目を細め、ウォレンの動向を訝しむのだ。


「ちゃんとブレイザーの許可とってるんですか? それ」

「おや? これはブレイザーさん、ライアンさん、そしてイツキさんからの案ですよ」

「イツキも?」

「本当であれば私からお願いしようと思っていたのですが、それを見透かしたのか、イツキさんから契約書を作ってきましたよ。流石の手腕ですよ、本当に」

「ウォレンさんの先をいくって凄いですね」

「ふふふ、それは褒め言葉として受け取っておきましょう」


 イツキを褒めたつもりが、結果的にウォレンすらも褒めてしまった事に気付いたアズリーは苦笑するしかなかった。

 そこへやって来るのは、爽やかに汗を流し、それを手拭いで拭うレオンだった。


「ふぅ、お疲れ様です」

「これはレオン宰相(、、)

「う……中々慣れませんね……。まだ早いのではありませんか?」


 宰相(さいしょう)の地位に据えられたレオンが、気恥ずかしそうに言うも、ウォレンが首を横に振る。


「何事も形からですよ。それに、この地盤を早急に固めなければまた魔王復活という危機に直面してしまいますよ」

「確かにそうですね。ではウォレン右大臣(、、、)とお呼びすればよろしいでしょうか?」


 くすりと笑いながら言ったレオンに、ウォレンもまた笑って返す。


「私は宰相(あなた)の部下。気軽にウォレンとお呼びください」

「はははは、慣れたらそうします」

「かしこまりました」


 そんなやり取りを聞いていたアズリーが、首を傾げる。


(……駄目だ、違和感しかない)


 アズリーがそう思うのも無理はなかった。

 魔王の地位に()いたものの、アズリーの目の前には積み上げられた石材ばかり。

 築城の最中(さなか)だというのに、既に役職が決まっている事に違和感を覚える。

 誰だってそう思って仕方ないのだ。

 しかし、それもやがて現実味を帯びていく。

 この場にやって来た人材は、全てが一般人を軽く凌駕する身体能力、卓越したセンス、魔法技術等を持っている。限界突破がもたらした恩恵は非常に大きいものなのだ。

 渋々と動いていたブルーツが、ブライトの采配により切り出しに回った事で、全てが円滑に回り、陽が沈む前に、簡素ではあるが城と呼べる巨大施設が完成を見た。

 泥だらけになった戦士たち。へとへとになった魔法士たち。

 何もない謁見の間に置かれた一脚の椅子。

 それを前に、アズリーがまたも首を傾げる。


「何ですかこの小さい椅子?」


 その椅子は明らかに子供用。

 ナツやイツキでさえも窮屈さを覚えるような小さな椅子だった。

 その椅子を指差したアズリーに、ポチが鼻高々に言った。


「私が一日がかりで作ったんですよ!」

「一日がかりっ!? って事はお前、この椅子作るだけで、他は何もやってないのか!? 俺があんなに苦労してたのに!?」

「何言ってるんですか! これは重要で崇高な、私にしか出来ない役目だったんですよ!」

「役目って何だよっ!?」

「さぁ、座ってもいいんですよ、マスター!」

「はぁ!? い、いや、座れって言ってもこの椅子にどう座れっていうんだよ!?」

「リナさんに手伝ってもらって強度は問題ありませんから!」

「つまりアーティファクトだと? これが?」

「んもう! いいから座ってください! 皆、待ってるんですからねっ!」

「何を?」

「マスターが、玉座(、、)に座るのをです!」


 それを聞いたアズリーが、尻の半分でしか座れなさそうな椅子をじっと見る。

 本日三度目。またも首を傾げたアズリーが、理解してそうで、しかし理解したくないような表情で言った。


「……玉座?」

「玉座」


 皆が爆笑する中、ポチの説明を呑み込む訳にはいかないアズリーだった。

片尻の玉座。






【コミックス4巻、発売前日のCM】


2019/9/12(木)

『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ と、ポチの大冒険』の、第四巻が発売致します。

担当編集さんに表紙の告知許可も頂いたので、下の方に掲載しておきます。


















































挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


奥から

ポチ

アズリー

ブレイザー

ベティー

ブルーツ

ですね・x・


ベティーが可愛くて仕方ない^x^

ブルーツも、ここから成長していくと考えると、感慨深い・x・

ブレイザーの安心感。この肩にナツが肩車されるのかー・x・


この巻では、ビリー、ウォレン、銀の三人等、色々新キャラが登場するので、きっとお買い得だよ!



巻末のSSには「アイリーンの研究室」という短編を寄稿させて頂きました。

アイリーンが研究内容である空間転移魔法をアズリーに自慢するお話です・x・


明日、というか本日発売なので、是非、宜しくお願い致します。


壱弐参(ひふみ)

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