↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第十章 ~戦魔国の闇編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

336/497

332 山中デート

 リナがアジトに戻ったのには、どうやら次の目的地がアジトを経由した方が早いという理由があったからだそうだ。

 ついでに食事をと食堂に足を運び、俺と会ってしまうんだからビックリだ。


「本当、偶然ですねっ」


 満面の笑みで言ったリナ。

 うーん、本当に成長した。以前ならもう少し恥ずかしがっていたような気がする。……ってあれ?


「リナ、その服?」

「あ、えぇ。トレースさんに見立ててもらって新調したんですっ」


 そうかそうか。確かに王都守護魔法兵団の制服じゃまずいしな。

 リナは二、三回俺の前でくるりと回って、それを見せてくれた。

 他の実力者に会いに行く手前、以前見た桜色の服とは違って落ち着いた白色のワンピース。大人になったリナにしっくりとくる綺麗な服だった。

 良(よ)い。とても良(よ)い。


「うん、とても似合ってるよ」

「っ! あ、ありがとうございます!」


 頭まで下げたリナ。

 たった一言で、ここまで感謝されるとは思わなかった。


「と、ところでアズリーさんはどうしてここへ?」

「え、あぁ。銀の三人がレガリア城に行くの手伝ってくれるそうなんだけど、トウエッドでのモンスター討伐がまだ終わってないらしいんだ」

「そういう事だったんですね」

「うん、だからそれまでの時間――――」

「――――お暇なんですか!?」


 食い気味でリナがずいと肉薄してきた。

 あの、顔が近いんですけど?


「あ、え、うん。まぁ暇だね」


 そう言った途端、リナはくるりと反転して、小さく拳を握っていた。

 そして、何故か宙図(ちゅうず)を始めたのだ。

 あれは……念話連絡? 一体誰に?

 しばらく待つと、今度は大きく拳を握ったリナ。はて? 何かいい事でもあったのだろうか?


「い、今ベティーさんに聞いたら長くなりそうなので、もしよかったら外に出てお話しませんかっ?」

「え? さっきベティーに聞いたらそんなに長くならないとか言ってたような?」

「いえ! 交渉したらとっても長くなるそうです! そういう事になってるんです!」


 すると、リナはハッとした表情をした後、赤面した。


「今『交渉』って――」

「――言ってません!」

「『そういう事になってる』とか――」

「――そういう事らしいと言ったんです!」

「は、はぁ」


 そうか、俺の空耳か。

 いや、でも確かに言ったような気もしたんだが?

 あぁ、そうか。リナの言い間違いかもしれないな。そういう事、誰にだってあるしな。

 顔を真っ赤にして隠してるし、あまり詮索するのも野暮というものか。


「えぇと、なら、ちょっと外歩こうか」


 俺は頬を掻きながらそう言うと、リナは再び微笑んで頷いた。


「はいっ」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 アジトの外に出ると、リナは太陽の下で大きく伸び(、、)をした。

 とても気持ちよさそうである。

 確かにこういう機会も必要だ。この時代に戻って来てから、ずっと動きっぱなしだったしな。

 そこからしばらく歩き、山中の開けた場所に出た。

 すると、リナはトコトコと小走りになった。


「アズリーさん、ここ。ここに座りませんかっ?」


 そこは何本かあった倒木の内の一つ。

 リナの言うように、腰掛けるにはちょうどいい高さだった。

 爽やかな風に押されるがまま、リナの笑顔に引かれるがままに、俺はそこへ腰を下ろした。

 リナはちょこんと俺の隣に座る。


 それから俺たちは、他愛もない話を沢山した。いや、少し重要な話もしたか。

 リナの周りに起きた事。俺の周りで起きた事。王都守護魔法兵団で学んだ事。俺が過去で学んだ事。


「へぇ、それじゃあ集団魔法は足し算以上の威力があるのか」

「そうなんです。ガストンさんが言ってたんですが、実際やってみると、本当に強力でした」

「という事は、十の魔で別々の魔法や魔術を使うより、分裂発動型魔法で同じ魔法を集約した方がいいのかもな」

「そこは臨機応変じゃないですか?」

「うーん、確かにそうだなー。小さな隙を狙うならそっちの方がいいか。ここぞって時は集約。そういう事だな」

「はい、そういう事ですっ」


 リナの糧が俺のものになり、


「魔力コントロールで土台を……ですか?」

「そう、イメージとしては、その土台に設置型魔法を描くんじゃなく、土台自体に魔法式や魔術式を彫る(、、)感じかな」

「……く、くくっ」

「そうそう。まずは簡単な魔法から練習してみるといいよ。これが出来れば設置型魔法が容易に動かせるし、瞬間的な足場にもなる」

「あ、足場にもっ?」

「こうやって、こう!」

「凄い、空を歩いてますね……ううん、練習すれば出来るはず!」


 俺の糧がリナのものになっていくような、そんな会話だった。

 空から戻った俺は、リナと共に再び倒木に腰を下ろした。その時リナから漂ってきたほのかな香り。花のような清涼感ある匂いにやられてか、俺はふっとリナに目を奪われてしまった。

 緑の間から漏れる陽光に照らされたリナの真剣な横顔は、絵画のように美しかった。

 うーむ、本当に綺麗になった。


「ん? どうしましたか、アズリーさん?」


 コテンと小首を倒し、キョトンとした表情のリナ。

 しまった、思わず見とれてしまった。

 な、何か言わなくては……!

 えーと、えぇええええっと…………ん? あれ?


「リナ? もしかしてリンク・マジック使った?」


 泳ぎまくった俺の目に映ったのは、リナの首から下がった銀のキーペンダント。俺がそれを指差しながら聞いたのは、そこに込めたはずの魔力が感じられなくなっていたからだ。

 するとリナは、そのキーペンダントを強く握って俯いた。

 光に照らされつつも、リナの顔が曇る。これはもしかして……ビリーに襲われた時に?


「アズリーさんには助けられてばかりです……」


 リナはそれだけ言って、キーペンダントを握り続けた。

 やはりあの時に使ったのか。

 ヴィオラからあの時の事を聞いたのは、ほんの少し。

 戻った夜に聞いた時は、ショックから混乱しているのかとも思ったが、今思えば、ヴィオラは何かを隠しているようにも見えた。

 これは、聞いた方がいいかもしれないな。


「リナ、ビリーとガストンさんが戦った時、何かあったのか?」

「はぇっ? え、あ……えっと」


 困った顔になったリナ。

 なるほど、やはり何か隠している。


「何とか撃退したってヴィオラさんは言ってたけど、悪魔の戦力ってのは相当なものだ。王都守護魔法兵団の力を低く見てる訳じゃないけど、かなり厳しい戦いだったはず。一体その戦場で何があったんだ?」


 俺の質問に、リナはたじたじになりながら、言葉を詰まらせた。

 うーん、何か言えない訳があるって事だよな?

 これ以上は詮索しないほうが――――


「――のほい、ハウス」


 そう考えている内に、リナはハウスの宙図(ちゅうず)をしていた。

 はて、バラードを呼んでどうする気なんだろう? もしかして俺は、食べられちゃうのだろうか? そこまで脂肪は付いていないはずなんだが?


「リナしゃま。アズリーしゃままで?」

「バラード、あのね――」


 俺が腹の皮を摘まみながら突っ立っていると、リナはバラードに耳打ちした。


「ほほいのほい! ハウス!」


 今度はバラードがハウスを宙図(ちゅうず)した。

 コノハの使い魔化。これも俺の中では謎のままだった。過ぎ去る早い時間がそれを考えさせなかったが、まさか使い魔に使い魔を使役させる方法があったとは思わなかった。


「いよう、アズリーじゃないか」


 小さな前脚をあげて挨拶するコノハ。が、直後バラードの頭の上に登っていく。なるほど、そこがコノハの定位置なのか。

 頭を下げ、リナの身長に合わせたバラード。その頭に乗るコノハがリナの耳打ちをふんふん言いながら聞く。

 やがて、コノハは前脚を組みながら俺を見た。


「アズリー」

「はい?」

「内緒だ」

「……俺が納得出来なくてもですか?」

「あぁ、そういう約束(、、)だ」

「っ!」


 約束? という事は、あの戦場には他に誰かいたという事なのか?

 あのガストンの使い魔、コノハ程の人格者ならば、その約束を違える訳にはいかないという事か。

 それはおそらく、リナたちがビリーに襲われた時、助けた人物との約束。

 …………命の恩人との約束。なら、守らない訳にはいかないか。


「はぁ~、わかりました。これ以上の詮索はしません」


 俺は大きな溜め息を吐きながら、コノハの前で折れて見せた。

 そう言った俺に満足気な様子のコノハは、定位置であるはずのバラードの頭から跳び、俺の肩に着地した。


「な、なんです?」

「おい、リナとは一体どこまで進んだんだ?」


 小声で何を言ってるんだ、この鼠は?


「いや、進むも何も……――」

「――かぁ~、ここまで朴念仁だとリナもそりゃ苦労するか」


 おっさんの如く溜め息を吐いたコノハは、自分の額を叩きながら嘆いた。


「あの、何が言いたいんです?」


 俺はコノハに合わせるように、リナに背を向けて小声で言った。


「……信頼と好意の違いくらいはわかっているんだろう?」


 …………思い出すな。

 以前、ツァルにも似たような事を言われた。


「今あの小さな肩に、責任以上のモノを乗せてやるな。そう言いたいだけだよ、私は」

「……どうしろっていうんですか。俺に出来る事は――」

「――私も男だからな。わかるさ。悠久を生きる者と百年も生きられない娘たちの間に出来たモノだ。その間を隔てるモノは大きく広いんだろうよ。しかし、向こう側は気にしてないんだからな」


 じとっとした強い目をコノハが向けてくる。

 以前、ライアンに言われそうになった言葉がある。『「後悔をされた事はございますか?」』。それが俺以上にリナを苦しめているのかもしれないと思っていた。

 しかし、コノハは言った。「向こう側は気にしてない」と。

 これに答えを出せる気がしないのは、今が大変な時だからか、それとも俺の性格故か。

 わからない……本当にわからないんだが…………、


「あれ? 今、娘たち(、、、)って言いました?」

「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」ノベルの1~8巻・コミックス1巻発売中。

『がけっぷち冒険者の魔王体験』書籍化決定しました。2018年5月25日(金)に発売です。宜しくお願い致します。

⇒https://ncode.syosetu.com/n7920ei/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
[気になる点] 鈍感難聴も、度が過ぎると白々しいというか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。