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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第十章 ~戦魔国の闇編~

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◆318 骨拳と赤剣

2018/3/28 本日一話目の投稿です。ご注意ください。


※キャラクターの設定上、グロテスク(痛々しい?)な表現が含まれている可能性があります。予めご了承ください。

 ダラスがジェニファーと話している頃、リナはフユやオルネルたちの下へ歩いて行った。


「どぴゅーーん!!」


 ダラスとの話が終わり、快活にそう叫びながらアズリーの正面に跳躍したジェニファーは、嬉しそうに語る。


「まさかあの時の坊やがここまで強くなるとはね。まぁあの時から異彩を放っていたけど……」


 黒い瞳の中で踊る好奇心。

 ジェニファーはそう言った後、身を低くして構えをとった。

 その姿はまるで四足歩行の獣のようだった。

 するとアズリーはドリニウム・ロッドを地面に刺し、ジェニファーに合わせて徒手空拳を選ぶかのように構えたのだ。


「へぇ、紳士じゃないか?」

「はははは、ジェニファーさんの全力、受け切らないとダメだと思っただけです」

「いい男だね。もし、私が勝ったら私の子を作らないか?」

「…………………………」


 アズリーが答える事なく、ウォレンの方を見つめる。


「失礼アズリー君。姉はどこか……いえ、色々外れている方なので聞き流すのが賢明かと思います」


 既に聞き流せない乙女が二人。

 リナとフユは、漏れ出る魔力に気付かないでいる。

 それに対してオルネルとヴィオラは頭を抱えつつも、何も言えないでいる。

 ただ溜め息だけを吐き、正面で始まろうとしている元六勇士の戦い。その開始を待っていた。


「アズリーは魔法士では……?」


 ダラスの言葉を受けアイリーンが答える。


「さっきの見てたでしょう。今のアイツはそんじょそこらの戦士より圧倒的な動きをするわよ。ブルーツからも色々学んだみたいだしね」

「ほぅ、あの銀狼に。それは不勉強でしたな……」


 ベイラネーアがモンスターに襲われた時、ダラスはブルーツ、ベティーと共に、肩を並べて戦っていた。

 その時知ったのだ。ブルーツの潜在能力の高さを。

 オーガキングの討伐の時には感じなかった、ブルーツの成長速度を。


「てぇえええいっ!」


 後方の会話が止んだ一瞬。

 それを合図とするようにジェニファーが叫び、そして駆けた。

 ジェニファーに武器はない。だからこそアズリーも腰を低くしてそれを迎え撃ったのだ。


「ふんはっ!」


 ジェニファーが地面すれすれに身体を落とし近付こうとするも、アズリーは強く足下を踏み、大地にクレーターを作る。


「っっ!?」


 ぐらりと姿勢を崩すジェニファーだが、不安定になった足場を上手く踏み抜き、アズリーに跳びかかる。


「てぃてぃてぃてぃ!」


 無数の矢玉のような攻撃を、アズリーは的確に叩(はた)き落とす。


「こんのー!」


 身体を落とし、足払いするジェニファー。

 しかし――――、


「っ!?」


 アズリーの下半身は微動だにしなかった。


「ちっ! これじゃキツイか! ふんっ!」


 腰の両側に両手をやり、気合いを入れるジェニファー。

 特殊技能――剛力、剛体、疾風の発動。

 これまでの戦闘、リナたちはそれを使わなかった。

 何故ならアズリーが使わなかったから。

 相手が使っていないのであれば、自分も使う必要がない。今回の目的はアズリーとの距離を測るモノだから。

 しかし、ジェニファーは使った。


「とことんやる気ですね……」

「やっぱり戦いは相手をぶっ潰してこそでしょっ!」


 彼女は、アズリーを倒しにかかっていたのだ。

 嬉々として拳を構えるジェニファーに、アズリーは苦笑した。


「では、とことん付き合います」

「いいね! 気に入ったよ! はっ!」


 掛け声を放つと同時に掛け声を抜き去る。常軌を逸したジェニファーの速度に、リナたちに驚愕が走る。


「「速いっ!」」


 更に加速したジェニファーの拳。

 それを前にしたアズリーは――――、


「っっっっっぽぅ!!」


 気の抜けるような掛け声を言い放つ。しかし、アズリーの身体は巨大な筋肉と魔力で覆われたのだ。

 直後、ジェニファーの顔が衝撃に染まり、そして笑みに変わる。


「……っ! アハハハハハッ! 凄い! 私の拳を全部受ける気かっ!」


 ジェニファーの拳は全てアズリーに当たっている。

 しかし、アズリーにはダメージが通っていないのだ。

 拳がアズリーの鋼鉄の身体に触れた瞬間、その事に気付いたジェニファーは、笑うしかなかったのだ。


「とんでもない耐久力……しかしアズリー君。姉上はそれだけでは止まりませんよ。姉上が骨の拳……骨拳(こっけん)と呼ばれる所以はここからです」


 ウォレンの瞳が揺れる。


「ていていていていてぇええい!」


 黄色く高い声が舞う中、アズリーの正面に違ったものが舞った。

 どろりと飛び散る赤くどす黒いモノ……それは血液。

 ジェニファーの拳から流れる、赤き血だったのだ。


(ジェニファーの攻撃力に拳の耐久力が追いついていないのか。それでも攻撃を止めないって事は……ジェニファーにとってこれが当たり前……!)


 アズリーはそう考え、ジェニファーの拳を受け続けた。


「っ! おっしゃあああ!」

「っ!? ちょっ!?」


 ジェニファーの喜びと共に、アズリーが驚きながら見た骨拳の正体(、、、、、)。


「嘘……骨が……」


 フユが驚き以上に言葉を失った訳。

 アイリーンも元六法士。その事実を当然知っている。


「――ぁあああああ!? 痛いですぅううううううううう!?!?」


 ポチが叫ぶ。

 その瞳に映るのはジェニファーの拳。そこから飛び出た……自らの骨(、)。


「こ、これが骨拳の正体……!? 開放骨折じゃないですか!?」


 アズリーはクスクスと笑うウォレンに文句を言いながら、ジェニファーの拳を叩き落とし始めた。


「先程言ったでしょうアズリー君? 姉上は色々外れている方なのですよ」


 鋭利に尖った骨を身体で受ける事は、今のアズリーならば可能だ。

 しかし、それを受けてしまったらジェニファーの拳が完全に壊れてしまうかもしれない。

 そう思ったアズリーは、拳を叩き落としながら、その力を流すように努めた。


「っ!」

「やりにくいかい、坊やっ!?」

「えぇ、とっても!」

「それは何よりだよ! はぁああああああっ!」


 両手から飛び出た骨は、アズリーの急所を狙い続ける。

 これに困惑しながらも捌くアズリー。


「っ! …………あっ」


 そして、何かに気付くアズリー。


「ほい、ほい! っと!」

「ていていていてい――――ってえぇ!?」


 ジェニファーの拳が止まる。

 そう、ジェニファーは物凄い形相で自分の拳を見つめていたのだ。


「お、おいこれ!?」

「カイフクマホウッテヤツデスヨ」


 いつの間にか治っていたジェニファーの拳。

 アズリーは口を尖らせてとぼけてみせる。


「くっ! アッハッハッハッハ! 戦う相手に回復魔法か! これは初めての体験だね! ……ったく、まいったよ!」


 自分の戦闘法を全て受け、更には回復魔法を使うアズリーに、ジェニファーは潔く完敗を伝える。

 そして、ジェニファーがその完敗をアズリーに伝えた直後の事だった。


「――おわっと!?」


 鋭い剣撃に思わず身をかわすアズリー。

 ジェニファーがリナたちの方へ移動する中、アズリーに届いた剣撃。

 身をかわしながら、アズリーがその剣撃をとばした相手を見る。


「急なアプローチですね、ダラスさん」

「すまん、骨拳殿を見ていたら身体が勝手に動いてしまった」


 戦闘への欲求を素直に示した赤剣ダラス。

 かつてアズリーと共にオーガキングと戦った豪傑。


「剣が相手ならこれを使うしかないなぁ」


 アズリーは背後に刺していたドリニウム・ロッドを取りながらそう言った。


「相当な業物と見た」

「聖戦士愛用の杖です」

「…………魔王はどうだった?」

「俺一人じゃ、絶対に倒せない相手でした」

「……やれると思うか?」

「幸いな事に魔王の誕生まで時間があります。それまでが非常に重要な期間になると思います」

「そうか……」


 ダラスが剣を構える。その剣気、その迫力に、アズリーはダラスの背後に壮絶な過去を見る。


「……流石、ライアンさんに似た迫力ですね」

「友はフォールタウンに帰って落ち着いたが、私は違う。常に己を鍛え続けたからな」

「怖いですねぇ……」

「特別だ。見せてやろう……レベル外の強さというものを」


 アズリーは強気のダラスを前にゴクリと喉を鳴らす。

本日は、あともう一話投稿する予定です。


骨拳の設定がキツイと思われた方、ご報告ください。

もう少しマイルドに表現出来るか考えるかもしれません。


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