261 決戦の狼煙
「……よっと!」
「待っていたわ、ポーア」
チャッピーの背中から降りた俺は、剣を肩に載せウェルダンに跨ったリーリアに迎えられた。
確かにあの土地はここからそこまで離れていない。
リーリアはポチ・パッド・ブレスの爆発の振動を察知したのか。
「ジョルノも既にあそこで待機しているわ」
ソドムの街の南門の上で、遠くを見据える勇者ジョルノ。
その両脇には頼もしくも少々場違い感のある我が弟子二人。
「皆回復は済ませてあるわ。ここからの指示は全てポーアに委ねるそうよ」
「俺に、ですか?」
「私たち……というより、街の人間の事を一番理解しているのはアナタだと結論が出ただけよ」
門に向かおうとするリーリアは横目にそう言い、
「ブルルルル、踏み潰してやる……!」
ドリニウム鋼の鎧を纏ったウェルダンは意気揚々と背中で語り、
「八つ裂きだ」
今晩のおかずでも語るかのようにリーリアが呟いた。
確かにあのウェルダンにリーリアが乗ったら無敵かもしれないな。
「父上、私はどうすればいいでしょう?」
そうだな……。
「ブライト! フェリス!」
俺は弟子の二人を呼びつけた。
「師匠、何のご用でしょうか?」
「何で私が二番目に呼ばれたのよ!」
「弟子になった順番です。ブライト、君はチャッピーと共に空からの遊撃担当だ。出来るかな?」
「お任せください」
浅く簡素な礼を見せると、ブライトはチャッピーの隣に立ち俺を見据えた。
己の役割を知ったブライトなら、相性の良いチャッピーと組む事で更なる視野が広がるだろう。
……大地が揺れているな。もう間もなくモンスターの大軍が来る。
急がなくちゃいけない。
さて、そこでムスッとしているお嬢様はというと……。
「……こういう事かしらね?」
フェリスはずいっとポチの前まで歩き、その隣に立った。
「おぉ、よくわかりましたね。後で飴玉をあげましょう」
「い、いらないわよ!」
「マスターの護衛はよろしいのですか?」
ポチがかたりと首を傾ける。
「おそらく第一陣はモンスターたちの猛攻撃になるだろう。今回は完全な支援に回るから護衛は必要ない。だから、絶望の使徒が現れたら二人は念話連絡で俺に伝えてくれ。たとえシロでも戦闘は厳禁だ」
「わかりました!」
ポチはいつにない元気な返事を返した。
流石にブライトやフェリスでは奴等の相手は厳しい。
フェリスの安全が第一だとポチは理解したのだろう。
「チャッピーはリーリアの後方、シロはジョルノの後方を固めてくれ」
「「わかりました!」」
地響きが強くなってくる。
よし、今の内に仲間限定コードの拡声魔法陣を門の上に設置しておくか。
「……やぁポーアさん」
「ジョルノさん。やはりあなたの言った通りでしたよ」
「魔王の動きがどうにも鈍いと思ってたんだよね~。今動かないと後々厄介な事になる。ポーアさんに偵察を任せて正解だったよ。あははは」
拡声魔法陣を設置しながらジョルノの軽い口調を耳にする。
まったく、本当に勇者ってのはどういう胆力の持ち主なんだ?
これから魔王軍との正面衝突だっていうのに……。
だからこそ、ジョルノは勇者なのかもしれないな。
「街の方は何とかなりそうか~い?」
「ここは要所です。出来るだけ守りたいですが、それ以上に人材を損なう訳にはいきませんからね。各地に最終退避用の空間転移魔法があります。もしもの場合は、それに乗って頂くようにお願いしてあります」
「いつの間にそんな準備を?」
「ジョルノさんとリーリアさんお二人に弟子を任せている時ですよ。戦闘に参加出来ない者は既に避難済みでしょう。ここに来る途中、念話連絡で伝えておきましたから」
「あははは、人選に誤りはなかった訳だね♪」
楽し気に言うジョルノに、俺は苦笑する事しか出来なかった。
横目に迫る、あの土煙を見ては。
「楽しくなりそうだね~っ」
「援護する身にもなってくださいよ」
「ポーアさんの援護だから僕もリーリアもウェルダンも前に出られるんだよ?」
「そう言われたって何も出ませんよ?」
「強化魔法くらいは出して欲しいね~?」
「ほい、オールアップ!」
「話すように高度な魔法を掛けられる仲間……か。ポーアさんが味方で良かったよ」
「……それはこちらの台詞です」
「あはははっ、それじゃあ行ってくるとするかな!」
ジョルノは門の上から飛び下り、ウェルダンに跨るリーリアの隣まで移動して行った。
あの大軍を前に立てる勇猛さは本当に羨ましい。
「こら! もうちょっと前に行きなさいよ!」
「いえいえ! これ以上はあの三人に迷惑が掛かっちゃいます! それに何より私が怖いんです!」
……何やってんだ、あのフェリスとポチは?
「私が守ってあげるわよ!」
「むきー! 私の方がレベルが高いんですからね!」
「じゃあ守ってよ!」
「守ってくれるって言ったじゃないですかっ!」
「協力すればいいじゃない!?」
「あ、それいいですね! 採用です! ……はっ!? 何か丸め込まれた感が否めません!?」
ポチのヤツ、完全にフェリスに操られてるな。
元々仲が良いからこんなもんといえばこんなもんか。
まぁ、ポチの場合はいざその場になればちゃんと動くから心配はしてないんだけどな。
「チャッピ~~~~かめーんっ! しゃき〜〜〜んっ! さぁ、ブライトもやってみろ!」
「やる訳ないでしょう」
「何!? 振り落としてしまうぞ!」
「わっ? ちょ、ちょっと! 今から戦闘なんだからふざけないでください!」
「私はいつでも大真面目だ!」
凄い真顔だな。
いや、サングラス越しなんだけどな。
チャッピーの頑固さはポチと俺譲りな部分があるから、あれはきっとやるまで動かないぞ?
ふむ? どうやらブライトも逃げ道を塞がれたようだ。
「ブ、ブライト~~~かめーんっ!」
…………持ってたんだ、サングラス。
「………………………………………………まぁまぁだな」
「なんですか、その落胆した顔は?」
「この戦闘が終わったら特訓だぞ」
「……まったく、終わるっていうならいくらでも付き合いますよ」
中々良い組み合わせだな。
さて、俺の方も皆に激を入れないといけないな。
俺は仲間限定コードの拡声魔法陣の上に乗り起動させた。
『あ~、え~……こほん。皆さん、ポーアです。これより魔王軍の第一陣の戦闘が始まります。各々協力し合って必ず生き残ってください。先陣はジョルノ、リーリア、ウェルダン。そのサポートにシロ、フェリス、ブライト、チャッピーが付きます。全体的なサポートは私が担当します。戦闘で困ったら慌てず騒がず、是非ご相談ください。各地に空間転移魔法、持続型魔力回復促進魔法、持続型回復促進魔法を設置しています。バシバシ利用しちゃってください。私個人に集音魔法を使っています。ピンチの際は私の名前を呼んでください。適宜対処します。では………………』
皆冒険者、好きでここにいる。
俺と同じく、生きるため、前に進むためにここへやって来たんだ。
フェリス――――――――このままじゃジリ貧だからよっ。
ブライト――――――――魔王に滅ぼされたら貴族もクソもない。
チャッピー――――――――チャッピ~~~~かめーんっ!
リーリア――――――――八つ裂きだ。
ウェルダン――――――――踏み潰してやる……!
ジョルノ――――――――魔王のどてっぱらに、風穴をあけてやらなきゃね!
ポチ――――――――ご飯!
「そうだ…………ちゃっちゃとこんな奴らぶっ倒して、美味い飯を食う! それだけだっ!」
俺は大きく息を吸い、かつてこの時代に来る直前に言い放った言葉を再び叫ぶ。
『死を供に生を得る!!』
そして皆が示し合わせたかのようにこの俺を、ソドムの街を揺るがした。
「「死を供に生を得る!!!!」」
この度「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」の第七巻の発売が決定致しました!
これもどれもそれも、読者の皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
発売は11月を予定しています。
そして! 荒木風羽先生による、コミックス版「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」第一巻も同時発売という事です!
巻末には私が書いた書き下ろしのSSが載るそうです。
力を入れて書いたので是非手に取ってみてください。
七巻も是非買って欲しいです!(切実!)
こんなに作品を続けられて、本当にありがたい事であります。
また、コミックアース・スター様で連載中の「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」
4話、5話が更新され、荒木先生の宣伝絵の転載許可も頂けました!
まずはこれ!
4話はレイナさんですな!
なんともけしからん恰好をしているライアン様のお付きの方です!
そしてこれ!
5話は所狭しとアピールしてくるポチさんです! きゃわいい!
杖二本のエンブレム、その下の肉球と眼鏡がツボな私でした。
なので皆様!
11月発売予定の「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」第七巻! コミックスの第一巻! 是非宜しくお願い致します!
追伸:ものすごく久しぶりに「異世界でも半端者!」も更新しました。吸血鬼として寄生転生した男のお話です。




