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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ 作者:壱弐参

第八章 ~聖戦士編・後編~

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259 準備

「どういう事だポーア! 私があんな小娘のパートナーなんて聞いてないわよ!」
「いいじゃないですかリーリアさん。生粋の戦士であるリーリアさんの戦闘方法を、フェリスに教えるいい機会なんですよ。大丈夫。足手まといにはなりません」
「いや~、でも僕がブライト君とパートナー組むのは無理があるんじゃないかなー?」
「いい援護をしてくれると思いますよ? まずは一週間、様子をみてください」

 強制的に聖戦士の力を体感させれば、二人は自分の立ち位置、役割を理解するだろう。
 それには俺じゃダメなんだ。
 見慣れた俺の動きや考え方に合わせるのではダメなんだ。
 チャッピー、ブライト、フェリスは沢山の戦闘を経てチームワークを構築した。
 だが、それだけじゃこの前線では足りないんだ。
 一言われたら三から四の行動をしてもらわなくては死に繋がる。
 先の事も考えなくちゃいけない。
 見据える先にある未来で、二人の戦力は必ず必要となるのだから。

「……ふん、ポーアの頼みだから聞いてあげるわ。だが一週間だけだからね! その先の事に関しては、私も責任を負いかねるわ!」
「ん~、とりあえず様子見って事で受け持つけど……死んでも知らないからね?」

 死なれると困る。
 しかし、振り返った先にいる二人の堂々とした立ち姿を見ると、俺の頭には何やら確信めいたものが見えて仕方がなかった。

 ―― 一日目 ――

「…………付いて来るな小娘」
「うるさいわね、私の勝手でしょ!?」
「やっぱりポーアさんの見込み違いじゃないかな~。あそこであんな魔法を打ってるようじゃ~、ねぇ?」
「……次です。次挽回してみせます」

 ―― 二日目 ――

「全然ダメよ。一撃で頭を吹き飛ばすか心臓を潰せるようにならないとね」
「何よ、アンタだって三匹打ち損じたじゃない。そういうのをね、五十歩百歩っていうのよ」
「確かに昨日の問題点は修正してきているようだけど、応用が追いついてない感じが否めないよね~」
「……なるほど、全てのモンスターに対して初手から応用が必要だと」

 ―― 三日目 ――

「ふざけてるの? 私のフォローなんて百年早いわ。今は自分の出来る事に集中すればいいのよ」
「ふん、出来ると踏んだからフォローをしたの。アンタこそふざけるのはその食欲だけにしといてちょうだい」
「ん~、まだね。まだ足りないんだけど、頑張ってる方なんじゃなーい? ポーアさんならもっと早く動くから合わせやすいんだけどね~。いや、まだそれは早いのかもね」
「つまり、応用は追い付いたけど体術が追い付いていない、と……」

 ―― 四日目 ――

「武器の特性を考えなさい。金棒に刃はないけれど、両端を上手く使いこなせば視野も戦闘の幅も広がるはずよ」
「そ、そんな事……知ってたわよっ」
「倒す事より生きる事を考えた方が結果的に早く倒せたりするんだ。死中に活を求めるのは逃げではないよ」
「抽象的な表現ですね。しかし、仰る事は理解しているつもりです」

 ―― 五日目 ――

「まだよ、まだ足りないわ。モンスターの波の中で息継ぎ出来るポイントを探しなさい。戦闘持続は技術でどうにでもなるわ」
「ふん、やってやろうじゃないのっ」
「SSランクのモンスターを片手であしらえるのは当たり前。モンスターの死体をどこに倒すかで死角を増やしたり減らしたり出来るんだ。最適手で倒す事を覚えただけではこの地獄を生きていく事は出来ないよ~?」
「そういう事か。なるほど、確かに消し炭にするより燃やし続けた方が壁に出来る。……わかりました、ありがとうございますっ」

 ―― 六日目 ――

「目だけで敵を追うものではない。背中に目を生やすのよ。空気や大地の揺れ、臭い、音……戦場で得られる情報は有限。けれど勝つ方法は無限にあるのよ」
「そんな事、軽くやってしまうのが私の素晴らしいところよね!」
「魔法士だからといって魔法で敵を倒す必要はないよ。ポーアさんの戦いを見ればそれは一目瞭然でしょ? 選択肢の一つとして、自らの四肢を武器化する事も大切さ」
「えぇ、十二分(じゅうにぶん)に実感しています。大丈夫、僕にはそれだけの可能性がある……!」

 ―― 七日目 ――

「……合格よ。的確なサポートだったわ」
「ふふん、当然でしょ!」
「こっちも合格だよ。まったく、末恐ろしい魔法士だね」
「ありがとうございます」

 どうやら、あの二人もブライトとフェリスの才能を認めたようだな。
 俺が張っている罠の外まで連れて行っての指導だったけど、それだけでソドムの街に迫るモンスターの数がかなり絞られた。

「人の掌の上で踊るってのも悪くないものだね、ポーアさん?」
「ははは、それはジョルノさんに信用されたって事でいいんですかね?」
「ちょっと前からポーアさんの事は信用してるさ」

 それは初耳だな。

「あのリーリアが心を許す相手だよ?」

 それも初耳だな。

「マスター! お腹空きました!」

 耳タコだよ。
 チャッピーもポチと一緒に色んな特訓をしていたみたいだけど、一体何をしていたのか……くだらない事じゃないといいけど。

「そういえばマスター! ついにやりましたよ!」
「ん? くだらない事じゃないだろうな?」
「とんでもないです! チャッピーにとって絶対に必要な事ですよ!」

 ほほう?
 ポチのわがままでチャッピーの指導は任せたからな。
 もしかしたら物凄い特訓が出来て、素晴らしい成果が出たのかもしれない。
 俺は広場で羽を広げるチャッピーの笑みを、腕を組みながら見守った。

「父上! しかとご覧ください!」
「ちゃんと聞いてて(、、、、)くださいね、マスター!」

 見るのか聞くのか……一体どういう事だ?

「アォオオオオオオオオオオオンッ!」

 ………………ん?

「ね、ね!? 凄いでしょう!?」
「……ん?」
「アォオオオオオオオオオオオンッ!」
「ほら! 私の遠吠えにそっくりでしょう!?」

 ま、まさか……この貴重な七日間を、遠吠えの練習に付き合わせたのか……!?
 そう思うより早く、俺はポチの頭をスコンと(はた)いていた。

「アイタッ!? 何するんですか!? 動物虐待ですよ!?」
「そこに、シロの頭が、あったからだよ!」
「それはそれは叩きやすいでしょうね!」
「威張る事じゃない! 他の成果はないのか!?」
「この遠吠え以上の成果があると思ってるんですか!?」
「思ってねぇよ! 思いたいんだよ!」

 チャッピーは、何故俺とポチが言い合いしているのかがわからない様子で終始キョトンとしていた。
 結局、ポチはチャッピーに様々なモンスターに応じた戦闘方法をちゃっかり教えていた。
 しかし、戦闘技術よりも優先したのがこの遠吠えってんだから、ポチらしいといえばポチらしいか。
 そんな言い合いもいつも通り終わりを見せ、ムスッと広場のベンチに腰掛けていた俺とポチに声を掛けてきた人物がいた。

「む、ガルムではないか。父上と母上は現在倦怠期だぞ。近づくと蒸発するやもしれん。注意しろ」
「ヒヒヒ、倦怠期なのに隣同士ベンチに腰掛けるってのも面白い構図だな」

 まったく、チャッピーのヤツ……ブライトとフェリスと長く一緒に過ごしたせいか、やたら偏った知識を吸収してるな。
 これも一つの成長だから別に悪くはないけど、これから先の事を考えると困ったもんだな。
 それにしてもガルムは一体何の用で俺の所へ来たんだ?

「一番世話になった兄ちゃんには、ちゃんとした礼として渡したかったんだ。ほれ、受け取んな」

 そう言ってガルムは細長い革袋を俺に手渡した。

「……武器?」
「マスターに武器は似合いませんよねぇ?」

 どうやら倦怠期は終わったようだ。

「ヒヒヒヒ、武器は武器でも魔法士が使う武器よ。開けてみな」

 ガルムのにやけ顔に急かされ、俺はポチと一旦見合った後革袋を開いた。

「これは…………」
「ほんのり発光してます! 凄いですー!」
「美しいですね、父上!」

 それは、俺の着ているマントの色とよく似た色をしていた。

「ヒヒ、金属は魔法士と相性が悪いからな。それを抑える魔鉱石をブレンドして練り込んだんだ。特有の斑模様は消えちまったが、深く赤い色は兄ちゃんのトレードマークだし、悪かねぇだろう?」
「確かに……凄く手に馴染みます」

 あの水龍の杖(、、、、)よりも……。

「そのドリニウム合金で丹精込めて仕上げた兄ちゃん専用の逸品だ。そいつで魔王をぶっ飛ばしてやんな! ヒヒヒヒ!」

 深い赤みを帯びた杖は、俺が握ると同時に一瞬の強い発光を見せ……――

「「ギャァアアアアアアアアアアッ!?」」

 二人の伝説の霊獣を怯ませた。

「ヒヒヒヒ、主人の魔力にしっかり反応してやがるぜ」
「ドリニウム合金の……杖!」
「ドリニウム・ロッド。そいつの名前だ。大事に使ってくれや! ヒヒヒヒ!」

 どこか聞いた事のある名だ。
 すると、俺の頭に現代の王都レガリアで出会ったドン・キサラギの店の名前が過った。

「……はは。なるほど、ドリニウム・ロード(、、、)ね」
「あぁん? ドリニウム・ロッドだって言ってんだろうが?」
「あ、いえ。こっちの話です」

 弟子と息子の成長と新しい杖。
 ……動くなら早い方がいいかもしれないな。
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