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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第八章 ~聖戦士編・後編~

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◇243 チタンデ

 我輩はタラヲである。

 主(あるじ)はティファだ。

 ティファはこの前ついに魔法大学の三年生となった。

 三年生になったとはいえティファが魔法大学の風紀を守るという事に変わりはない。

 周りの皆はティファが学生自治会長になると思っていた。そしてその推薦もあったが、ティファはこれを拒否した。

 新たな仕事を覚えるのが面倒なのだとか、そのような事をぬかしておった。

 新学生自治会長はマッシュとかいう人の良さそうな男が着任していたが、魔法大学の学生自治会を影で操っているのは、間違いなくティファだ。

 我輩の耳は特別だ。ある日魔法大学の中庭の日陰でウトウト――おっと違う。中庭の日陰でティファに言われた通り警備をしている時に聞いたのだ。

 下級生の話を。


「マッシュ会長には任せられないって。闇の支配者(ダークルーラー)ことティファ様なら絶対リナ様の後継者となったのにっ」

「そういえば、闇の支配者(ダークルーラー)ティファ様の使い魔って何て言ったっけ?」

「観賞用(オーナメンタル)タラヲ」


 フハハハハハハハハッ!

 ついに我輩にも二つ名が付いたのだ!


「あれ? 私は悲劇の(トラジディ)タラヲって聞いた気がする……」


 何だと? 我輩の二つ名は他にもあるのか。

 ふっ、真の強者という者はそういった運命から逃れられぬという事か。

 良(よ)い。いや良(よ)いだろう。

 三つ名でも四つ名でも付けるがよいぞ。ふははははは!

 それにしても、あのアズリーとかいう魔力の塊のような男がベイラネーアから消えて、もう二年になるか。

 魔法大学も変わってしまった。アイリーンが六法士から抜け、トレースと共にベイラネーアから姿を消した。

 看板六法士の脱会と退職により、今年の魔法大学入学者は例年より遥かに少なかったと聞く。

 時代の移り変わりというものは実に早いものだな、ふふふふ。


「何してるのタァちゃん?」


 我輩の思索を邪魔するとは良い度胸だ。

 まったく、一体どこの誰だと――


「――む? 何だナツか。見てわからぬか? ティファに邪魔だからと校門で待ってるようにと言われたのだ。どうだこの見事な伏せは!? ティファが見れば泣いて喜ぶに違いない!」

「あはははは、そうかもしれないねっ! ティファちゃんには伝えておくから一緒に帰る?」

「む、いや、しかし…………ティファが寂しが――――」

「――――いいってさー」


 あ、はい。


「しかしナツよ? 魔法大学に何の用だったのだ? 見たところ学内から出て来たようだが?」

「あー、えーっとね。テンガロン大学長に呼ばれてたんだー。ほほーい、ハウス!」


 ナツは我輩の前で魔法陣を宙図(ちゅうず)した。

 漆黒の闇から現れるのは悪魔のような角を持った…………羊。

 黒い角以外は全て黄金。太陽の羊。サンシープと呼ばれる希少な羊だそうだ。

 腰を落ち着けた土地に恵みをもたらすと言われていると聞くが、嘘か誠かわからぬものだ。

 ララと同い年故か、仲良くなり「酪農だ酪農だ」とよく騒いでおったが、まさか使い魔をそれに導入するとは誰が予想しただろうか。

 事実、サンシープの羊乳は栄養価が高く、羊毛は美しく、金持ちに売れると聞く。

 毛刈り後の姿を見る度に笑いがこみ上げてくるが、笑うとティファに怒られるから我慢するのだ。


「シャイニー、帰ろう!」

「メェエエ~」


 使い魔としての自我を放棄し、動物としての尊厳を守る。ティファはそんな契約もあると言っていたな。

 確かフユもそんな使い魔を持つと言っていた。

 離れていても相変わらず似ているな、二人は。

 ナツはシャイニーに跨り、我輩はその隣を歩いた。


「して、テンガロンが一体ナツに何の用だったのだ? ナツが十五の歳になるのは今年。入学するにしても来年になるのではないか?」

「そうなんだけどねー。何か色々難しい事言われたけど、私に入学して欲しいんだって」

「ほぉ……」


 なるほど、アイリーンが抜けた事で入学者が激減した今、優秀な魔法士は喉から手が出る程欲しいようだな。

 ツァルが話していたのを小耳に挟んだが、イシュタルとかいう国の上層部の人間に上納するためだろう。

 魔法大学や戦士大学は学校といってもやはり武力の養成機関。

 ティファが言っていた魔王復活までまだ時間はあるようだが、駒を揃えぬ訳にはいかぬからな。

 今やこの国で二番目の実力を持つ銀というチーム。その一員であるナツに声を掛けるとは、流石魔法大学長といったところか。


「ただいまー!」


 ナツはシャイニーから降り快活に帰宅を知らせる。


「ふはははは! もどったぞ、ポチズリー商店!」


 ポチズリー商店に我輩の美声が響く。

 ふっ、実に素晴らしい。何故ティファはこれをやると怒るのかがわからぬ。

 ふむ、実に解せない。


「おーっと、三人ともお帰りっす! 今お客さんと応対中です。あ、でも奥にちょうど皆さんが戻って来てますよー」


 受付から顔を出したイツキの言葉を聞き、我輩とナツは見合ってから食堂の一間に向かった。


「おーうナツ、早かったな――ってタラヲも一緒か」

「ふん、一緒で悪いのか、ブルーツ?」

「ははは、問題ねぇよ。あり? ティファはまだなのか?」

「先に帰っていいってさー。何だか最近忙しいみたい」


 ナツの言葉にブルーツが「ふーん」と呟く。

 確かに最近校門の前で待つ事が多い気がする。

 ティファのヤツ、無理をしていなければよいが、我輩が体調を気遣うと怒るのだ。

 解せないが、世界を治める我輩の主(あるじ)ならば、それくらいでなければいかんのかもしれぬな。


「そんで、どうだった?」

「うん。断ってきた」

「はっはっはっは、テンガロンのおっちゃんの拍子抜けした顔が思い浮かぶわな!」

「ブルーツ、控えろ。今やテンガロン様は六法士。どこに耳があるかもわからん。あの方の耳に入ると事(、)だぞ」

「へいへい、すみませんでした」


 ブレイザーの制止でブルーツは大人しくなる。

 まったく、いつも人間関係の難しさには悩まされる。

 何故ブレイザーがリーダーなのだ? いや、確かにブレイザーは強い。

 しかしブルーツの方が強いのは明白だ。それはライアンもブレイザー自身も認めている事だ。

 ブルーツ自身は「面倒だ」と言うばかりだが、リーダーになった方が面倒がないだろうに。


「さて、全員揃ったようですな」


 頃合と見たライアンが席を立つ。

 はて? まだララとツァルがいないようだが? 銀のメンバーのみという事か?

 いや、それならば我輩がここにいるのもおかしい。


「知っての通り、先日、リード、マナがランクSと認められました。これを機に、国からの依頼が増えました。これに伴って実入りは増えはしますが、我々の疲弊は増すばかり。聞けばどこもそのような状態だと聞きます。早急に何らかの手立てを考えるべきです」


 銀の中でいち早くランクSになったのは、元からランクAだったイデアとミドルス。

 その後、春華とライアンがランクSになったのは耳に新しいが、リードとマナもようやくその頂(いただき)に追い付いたという事か。

 ナツとアドルフとレイナはランクAとなり、ベイラネーアで銀の名を知らぬ者はいない程だ。

 当然、国も目を付けてくるだろう。


「リーダー、お願いします」


 ライアンがブレイザーに進行を委ねる。

 するとブレイザーは一枚の羊皮紙をテーブルに載せた。


「これ、何ですかブレイザーさん?」

「……どっかで見た事のある字だな?」


 イデアとミドルスが羊皮紙を覗き込みながら呟く。


「見たところ、魔法か魔術の工程書でありんすね?」

「この可愛らしい文字は……女性のモノ?」


 アドルフの考察を聞き、ブルーツが噴き出す。

 続きベティーが笑いを堪え始める。

 どうしたライアン!? お主が辛そうな顔をするなど珍しい……!


「これは、イツキが掃除中に見つけたものだ。とある(、、、)部屋を掃除中にな」

「「とある部屋?」」


 疑問を抱える皆がブレイザーに問う。

 ブレイザーは小さな息を漏らし、天井を仰ぐ。


「二階の通り側、一番奥の部屋だ」

「あ」

「あ」

「あ」

「まぁ」


 イデア、ミドルス、アドルフ、春華は皆違った感情を零した。

 二階の通り側、一番奥の部屋…………はて? あそこは確か、二年前に我輩がドアノブと奮闘していた場所ではなかったか?

 ティファが深い眠りに入り、我輩が入れなかった……部屋。


「そう、アズリーの部屋だ」

「と、という事はこれはアズリーさんの文字!」


 アドルフが興奮気味に再度羊皮紙を覗く。


「そうだったそうだった! アイツぁこんな軟弱な字ぃしてたぜ!」

「それで、これは一体なんの工程書なんです? 見たところ……回復魔法? いや、何だ? この複雑な公式はっ? ぬっ……相変わらず生意気だねぇ……!」


 イデアの静かな怒気。

 ふむ? イデア程の魔法士が解読出来ないとは、相当難解な魔法式、もしくは魔術式なのだな。

 ティファならば、いや、リナならば解読出来るやもしれぬな?


「現在この解読をララとツァルに任せている。ツァル殿の話によれば、非常に有用な物である事がわかっている」

「……これ、何て読むのでしょう? 肉球の跡が多くて読めませんね? チタンデ?」

「「チタンデ……」」


 レイナの後に続くように皆が復唱する。

 チタンデ……何とも奇怪な名前よ。

現代状況早見表

※所属によって名前が重複する場合があります。


【十二士】

[六法士]

ビリー(十二士筆頭)

ガストン(王都守護魔法兵団司令官)

シュトッフェル

テンガロン(魔法大学長)

ラッセル

アミル


[六勇士]

チャーリー(元十二士筆頭・元戦士大学長・王都守護勇士兵団司令官)

ドラガン(戦士大学長)

キャサリン

ジェイコブ

ナターシャ

エッグ(六勇士ドラガンの弟子・王都守護勇士兵団司令補佐)



【王都守護魔法兵団】

ガストン(司令官)

ヴィオラ(団長)

フユ(司令補佐)

プラチナ(フユの使い魔)

オルネル・アダムス(特殊精鋭部隊隊長)

マイガー(オルネルの使い魔)

リナ(特殊精鋭部隊副隊長)

バラード(リナの使い魔)

ジャンヌ(???)


【解放軍(レジスタンス)】

アイリーン(元六法士・現解放軍(レジスタンス)リーダー)

トレース(元魔法大学講師)

ウォレン(元魔法大学学生自治会長・ジェニファーの弟)

ジェニファー(元六勇士・ウォレンの姉)

ダラス


【魔法大学】

テンガロン(大学長)

ティファ(学生自治会風紀)

タラヲ(ティファの使い魔)


【銀】

ブレイザー(リーダー)

ライアン(副リーダー)

ブルーツ

ベティー

春華

ナツ

シャイニー(ナツの使い魔)

イツキ(事務専門)

リード

マナ

レイナ

アドルフ

イデア(元魔法大学生)

ミドルス(元魔法大学生)


【その他】

ララ

ツァル(ララの使い魔兼ララの教育係)


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羊が出てきてこれで残る十二支は……ウサギはまだだったか?
[一言] 素材がないのでは
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