239 混乱に次ぐ混乱
昨日サボ――――やむにやまれぬ遊び的な事情があったのでお休みしてしまいました。
なので、本日は二話投稿とします。
2017/6/24 一話目の投稿です
未だ理解していないポチを置いていくようで悪かったが、俺はジョルノの言葉を疑いつつも確信に迫っていた。
ベイズ・ダグラスが悪魔であるバディンだったとしたら、ブライト少年を誘拐しようとした事も、フェリス嬢を誘拐しようとした事も、政敵であるアダムス家の財産を狙った事も頷ける。
フルブライド家、アダムス家の両家に通じるのは武力だ。ジュンもポルコも聖戦士が認める程に強い。その血筋であるブライト少年とフェリス嬢が力を付け始めたら、何かと面倒だろう。
誘拐出来たとしたら、革新派の目的を達しつつ、闇でブライト少年とフェリス嬢……いや、両家を滅ぼす事も可能だ。
神聖国が革新派のものとなれば魔王軍にとって都合のいい事だらけだ。
――――――――という事は、イディア皇后は悪魔と繋がっていた……?
「うん、ようやく追いついたみたいだねっ」
ウィンクをしながらジョルノが言ってきた。
そういえばフルブライド家の仕事はジョルノが紹介したと言ってもいいが、あれも何か狙いがあったんだろうか?
「ジョルノさん、俺にフルブライド家の仕事を斡旋したのは理由があったという事でしょうか?」
「あの時はまだ、というのが正解だね。ポーアさん。あなたは保険のようなものだった。ポーアさん……いや、君たち二人ならば、何かやってくれそうな気がしたからね。当時弱かったけど、僕、そしてリーリアはね――――僕たちに守られながらもソドムまでの道のりを生き抜く事が出来た。たかがレベル百の二人がね」
そうか、やはりジョルノは俺たちの情報を知っていた。
もしかしてリーリアの心眼と何か関係があるのだろうか?
「ブルネアまでの道のりが一緒になったのは本当に偶然だったんだけどね。情報が情報だけに僕たちも次の一手を考えなくちゃいけなくなった」
「情報って…………っ! もしかして商戦団から聞いたっていう、乾きの砂漠のアランの街が滅ぼされたって話ですかっ!?」
「そういう事っ。ポーアさんの指摘で悪魔が北上している可能性が確信に変わったからね」
「確信って事は――つまり、お二人がブルネアに行った理由は、その可能性を調べるため……」
「うん。あのジャイアントマーダラーは、悪魔が起こしたんだろうね~」
今度は苦笑するジョルノ。
そんな軽そうに言うなよ。街一つ滅んでるんだぞ?
「そこで、ちょうどポーアさんのレベルも多少上がった頃だったし、僕の駒になってもらおうかなーと思った訳さ。……僕の予想を遥かに超える成果ってのは意外だったけど――」
「さぁ、理由を聞かせてもらいましょうか?」
俺とジョルノのそんなやり取りに割って入ってきたのは、鮮血の……いや、鮮血塗れのリーリアだった。
何この人、真っ赤っていうか、血から生まれたんじゃないかってくらい赤いぞ?
…………なるほど、もう赤帝牛だけで対処出来る数しかモンスターは残っていないか。
極力モンスターの経験値を赤帝牛に回したいのだろう。
「それは僕も是非知りたいねぇ? 炎龍討伐の話は風の噂で聞いたけど、あの段階でのポーアさんなら絶対に対処出来ないと思っていた。今回の戦闘でその実力は確認出来たけど、よもや、ここまでの成長をするなんて、誰が予想しただろうね?」
横目で俺を見ながらニヤリと笑うジョルノ。
どうして聖戦士ってやつは、こう、貪欲なんだ?
「マスターマスターッ!」
ポチが肩をゆっさゆっさと揺すってくる。
「何だよ? 今大事な話してるんだ――――」
「――――という事は、イディア皇后は悪魔と繋がっていたって事ですか!?」
…………うん、ようやく追いついたみたいだね。
俺は深い深い溜め息を吐き、これまでの経緯を二人に説明した。勿論、禁断の修練についても包み隠さず。
ジョルノは微笑みながら、リーリアは睨みながら聞いてくれた。
血塗れのエルフ女から終始怒気のようなオーラが溢れていたのは気のせいだろうか?
「ハハハハハ、驚いたね。まさかポーアさんが最後の一人だったなんて」
「私たちより早く聖戦士になるなんて生意気、と言う他ないけど…………認めましょう。その力は本物だ。勿論、私自身は納得していないけどね」
「折角のそのアーティファクトも、神様に使用を制限されたってところが笑いどころだったかな、ははははは」
現状、俺とポチしか使えないからな。
ジョルノやリーリアに使えたらそれが一番なんだろうが、神の力が弱まると俺たちの聖戦士の加護の力も弱まってしまうだろうから、それはやはり出来ないだろう。
今の俺たちと、ジョルノたちとのレベル差は、もしかして魔王との戦いの際に丁度よく縮まっているのかもしれない。もしかして神はそこまで読んでいるのか?
だとしたら人知の及ぶところじゃないな。流石神と言うべきか。
「それにしても頑張ったね、ポーアさん。まさか絶望の使徒を一人で倒すなんて……」
「魔力が飛躍的に伸びたようでしたから、こちらのやりたい事が出来るようになったんです」
「あー、そういえばマスター。昔研究してましたねぇ? 魔力さえあれば発動に足る魔法と魔術」
「まぁ、あれは高望みし過ぎなやつもあったけどな。それでも使える魔法や魔術、それに加えて戦術が増えた事に変わりはないよ。それより、これからどうするんです?」
俺の質問にジョルノは珍しく困った顔を浮かべた。
「何せ相手が相手だからね~、ここは聖帝様にお任せするのが一番いいと思うよ?」
確かに、相手はイディア皇后だ。
悪魔と通じていたとはいえ、バディンが死んでしまった以上裏の取りようがない。
いや、もしかしたらミャンが知っているのかもしれないな。
これらを含めてポルコに報告すればいいだろう。
だが、何か嫌な予感がしないでもない……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「イディア皇后が――」
「――いなくなったですってぇえええええええええっ!?!?」
「しー! しー! しー!」
物凄く慌てるポルコ・アダムス。
大声を出したのは当然ポチだった。もう少し時と場所を選べないものかね、我が使い魔は。
悪魔がやってきた空間転移魔法陣を見つけ消滅させた俺たちは、使い魔杯が行われていたコロシアムの来賓席まで戻っていた。
聖帝は安全のため、レガリア城へ避難したそうだが、ジュンが付いているから大丈夫だそうだ。
「ザッツ皇子共々姿をくらませたようだ。事が露見するのを見越して逃げたと思われる」
「意外でしたね。証拠がない以上、ごねて罪を逃れようとするのかと思いましたが……」
「それも時間の問題、と考えたならば早く動いた方がいいと判断したのだろうね。つくづく底が見えないお方だ……と、それにしてもポーア君? また強くなったのかね? 身体を覆う魔力が……最早人間とは呼べないレベルで尋常じゃないよ?」
逞しい顔でさらっと言ったな。
五千年も蓄えた知識に聖戦士としての力が加われば、そんな事にもなるよな。
この強さがないと魔王とは戦えない以上、これは諦めるしかない、か。
「ゴホン。兎に角、今日は君たちも疲れているだろう。陛下の計らいでレガリア城の客間を使ってよいとの事だ。私も後程向かうので、そこでくつろぐといい」
「そ、それって私もいいんですかっ?」
ポチが嬉しそうに自分を指す。
そうだよな、使い魔とはいえ獣であるポチにとってみれば珍しい事だ。
「使い魔杯の覇者を丁重にもてなせとの命令だ」
「聞きましたマスター!? 覇者ですって覇者! 敗者から一字抜けてるだけだというのに、ここまで意味が変わる言葉も珍しいですよ!」
ようやくポチへのご褒美ってところだろうな。
もしかしたらあの約束も忘れてくれるかもしれないな。
「これでトロピカル猫まんまも食べられるとか、今日は幸せの日か何かですか!?」
しっかり覚えてたわ。
「ジョルノ君も行くだろう?」
「是非お願いします」
「リーリア君は――――」
「結構です」
リーリアは愛想のない顔を見せ、そっぽを向いてしまった。
まぁリーリアの場合は赤帝牛もいるし、柄じゃないのだろう。
ポチビタンデッドを飲んでいるから疲れこそないが、やはり今日は色んな事があったな。
……あれ?
そういえば、ブライト少年にフェリス嬢を任せたきり会っていないが、チャッピーたちは一体どうしたんだ?
「チャッピー仮め~ん、参上!」
「ちょっとそこのチキン! いい加減その悪趣味な眼鏡を外しなさい!」
「む、現れたな我儘娘! いつもいつもいつもいつも父上を困らせてばかり……! そのねじ曲がった性格! お尻ぺんぺんの刑である!」
ブライト少年は知らない振りをしているが、チャッピーに「もっと言ってやれ!」という感じの視線を送っている。
「誰が我儘よ! 誰が! 生意気なチキンにはご飯抜きの刑よ!」
「ぐはぁっ!?!? 世界が…………割れる!?」
壮大なご飯抜きの刑だな。
レガリア城門前で、我が子は一体何をやっているのだろう?
「ぐはぁっ!? マスター…………私のお墓には……毎日、千ゴルド相当の食事を備えてくださいお願いします絶対ですからね忘れたら怒りますからねぐふぅ……」
お前もかよ。




