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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ 作者:壱弐参

第七章 ~聖戦士編・中編~

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238 黒幕の正体

 バディンが自らの命を絶ち、魔王軍との形勢が一気に傾いた。
 リーリアは魔王なんじゃないかってくらい暴れてたし、ポチと赤帝牛も大いに暴れていた。
 ジョルノはいつもの通り涼しい顔をしていたけど、楽に戦っているように見えた。
 逃げ散らばるモンスターもいれば、吸い込まれるように俺たちに挑んで来たモンスターもいた。
 やはり魔王軍といえどモンスターの集まりだ。(かしら)である悪魔(バディン)がいなかったら脆いものだ。
 勿論、油断出来るモンスターなんていないんだけどな。
 ハハハハ、凄いなリーリア。それはオーガキングの頭じゃないかい?
 それを……あぁそう? そんな風にしちゃうんだ? あーあ、ランクSSのマザーを押し潰しちゃって? まだ斬り刻むの? あぁこれからだと? すり潰しちゃう訳ですね?
 そんなパーティの。いや、主にリーリアの暴れっぷりをチラチラと見ながら、俺は遊撃に回り皆の手助けに専念した。

「…………ふぅ」

 そんな俺の息が漏れたのは、戦闘が粗方治まったからだ。
 既に俺とポチは隣同士で座り込み、未だ暴れまくるリーリアと赤帝牛のコンビを見つめている。

「あの二人、仲がいいんじゃないですかね?」
「やっぱりそう思うか? 相性も良さそうな感じがするんだよな」
「あ、跨りましたね」

 何あれ、悪魔か何かじゃないか?

「暴れ牛を乗りこなす鬼ってところか」
「うまい! と言いたいところですが、どちらも事実みたいなものですから何とも言えませんね」
「どうだった? 今回の戦闘?」

 俺は気になっていた事をポチに尋ねた。

「うーん……始めは緊張しましたが、途中から無我夢中でしたね。何かこう……元気もりもりもりーって感じでした」
「どういう事だよ?」
「何でしょう? もしかして私、天獣の力を上手く扱えていなかったのかもしれませんね」

 ポチは自分の二つの肉球をじーっと見つめながら言った。

「それがこの戦闘で大分こなれたと?」
「使い魔杯の時、赤帝牛さんと戦ってた時は気付きませんでしたけど、今回、赤帝牛さんの隣で一緒に戦っていて、色々学べた気がしました」
「旅に出る時にシロが言ってた、『レベル外の強さ』ってやつか」
「近いですね。逃げるより敵の懐に潜り込む方が安全だったり、巨大化のサイズを調整したり、ブレスを吐く時間を長くしたり短くしたり――――私もまだまだ勉強が足りなかったという事ですね」

 いつになく真面目なポチに、俺は何も言えなくなってしまった。
 八百年も俺の使い魔をやっていて、これ以上勉強しようというポチの気概に、圧倒されてしまったのかもしれない。
 俺の聖戦士としての力を目の当たりにして、ポチの中の何かが変わったのか?
 それとも、ポチ自身、他に感じる事があったのだろうか?

「ところでマスター?」
「何でしょうシロさん?」
「あの悪魔、倒さなくてよかったんですか? まさか自害するとは思いませんでしたけど……」

 ポチが気付いてたって事は、他の皆も気付いてたんだろうな。
 バディンの最後に。

「ん~……アイツが悪魔だってのはわかってたし、絶対的に人間の敵だっていうのもわかってた……でも、アイツと戦ってる時、何故か楽しかったんだよな?」
「聖戦士として存分に戦えたからです?」

 キョトンと首を傾げるポチ。

「いや、アイツと戦う事が……だな。多分それはアイツ自身も楽しんでいたからなんだろうな」
「……その顔は他にも何かありそうですね?」

 ずいと踏み込んでくるポチ。流石、よく見てるな。

「多分、いち早く俺を認めてくれたからなんだろうな……」
「あ~、マスターが悪魔側に傾いちゃった訳ですねっ?」
「砕けて言い過ぎだろう。まぁ、大まかに言えばそんなところだな」
「面白そうな悪魔だったんでしょうね。私も少し話してみればよかったかもしれません」

 ふんふんと鼻息を吐くポチ。
 ……お? ジョルノが戻って来たな。
 おーおー、相変らず整った顔で澄ましてくれちゃって~。
 いいないいな。勇者ってのは本当にカッコイイんだなー。
 俺も魔法士より勇者になりたかったものだ。

「お疲れ様です」
「ですー!」
「お疲れ様。いやー、流石に疲れたね、今回の一件は……!」

 伸び(、、)をした後、ジョルノは首をぽきぽきと鳴らした。
 俺は懐からポチビタンデッドを取り出し、ジョルノに手渡す。

「何だい、これ?」
「シロの(よだれ)です」
「………………じょ、冗談だよね? これを飲めって言うのかい?」
「騙されたと思って飲んでみてください、(よだれ)
「騙されてますから飲んでみてください、私の(よだれ)

 お前も騙す気満々じゃねぇか。
 俺は座りながら膝を抱え、恐る恐る瓶の蓋を開けるジョルノを見ていた。
 すんすんと鼻をヒクつかせ、ワインに空気を取り入れるかのようにスワリングをしている。
 あ、ようやく気付いたか。

「何だ、美味しいじゃないかっ?」
「ですよね! 私の涎!」

 お前、恥ずかしくないのか?
 いや、胃酸の評価で喜んだポチの事だ。涎くらいじゃどうって事ないのだろう。

「む? ……へぇ、ポーアさんはこんな事も出来るのか……」
「道に落ちてたんですよ」
「シロ君の涎が、かい?」

 おっと、しまったぜ。
 まぁ別に隠す必要もないけど、大っぴらに宣伝したいものでもないんだよな。

「……そういう事なら他言はしないよ」

 凄いな。古代の聖戦士は空気も読む。
 現代の聖戦士の――――

「凄いですー! 美味しいです私の涎!」

 ――――使い魔は、空気なんて存在自体スルーするぞ?
 つーか何でコイツは俺のポチビタンデッドを持ってるんだ?
 ……さては作成中に何個か盗んだな、コイツ。
 普通、主人の物を盗むかね?
 …………………………………………ところで、どこから出したんだ? その瓶。

「それにしても、ここまで一気に問題が片付くと、後に来る問題が大きくなりそうで怖いよ、ハハハハ」

 問題が……一気に片付く?

「どういう事ですか、ジョルノさん?」

 ポチも気になったようで、早速俺の気持ちを代弁してくれた。

「あの絶望の使徒、(すなわ)ち悪魔が、今までどこにいたと思っているんだい?」

 はて? 魔王の所にいたんじゃないのだろうか?

「心眼持ちのリーリアが聖都レガリアに着いた時、いや、近づいた時に――あの悪魔は消えたんだよ」
「え? …………どこから?」
「勿論、聖都レガリアからさ」

 俺もポチも同じ方向に頭を(ひね)る。
 何だ、ジョルノのヤツ? 一体何を言っているんだ?

「ポーアさんなら知ってると思うんだけどなー? だって散々振り回されたでしょう?」

 (ひね)り過ぎて俺とポチはこてんと地面に倒れる。

「……楽しいかい?」

 凄い残念な人を見つけたような目だ。

「いえ、何を言ってるのかさっぱりなんですよ、ホント」
「もっとわかりやすく説明してください!」

 ポチの訴えは(もっと)もだと思う。
 ジョルノは面倒臭そうに頭を掻き、溜め息を吐いた。

「フルブライド家の子息を誘拐しようとしたのは?」
「チキアータ」
「雇い主は?」
「ダグラス家」
「アダムス家の息女を誘拐しようとしたのは?」
「無名」
「雇い主は?」
「ダグラス家」
「北の魔女チキアータの弟子として付いていた娘、名前は?」
「ミャン・ダグラス」
「何故貴族の娘が親の下から離れて、内乱罪に問われるような出来事に手を貸していたのかわかるかい?」
「そりゃ…………親を助けるため?」
「違う。操られていたのさ」

 ……………………………………何だって?

「つ、つまりミャンはダグラス家当主、ベイズ・ダグラスに操られていたっ?」
「本人も操られていると知らないだろうねぇ。チキアータの方にはお金を積めばなんとでもなるしねっ」

 いや、ここでウィンクされても困るんだが……。

「さてポーアさん。ここで問題だ。もし、ベイズ・ダグラスが既にこの世から消えていたとしたら、ミャンを操っていたベイズ・ダグラスは、一体どこのベイズさんなんでしょう、かっ」
「………………」
「ヒントその一。腹黒で……もしかしたら身体も黒いかもー」

 腹黒って、ブライト少年じゃ――――……

「…………っ!」
「ヒントその二。元の身体は大きいけど、人間の姿に変異していたー」
「まさか…………!」

 いやいや、ありえないだろうっ!

「ヒントその三。変異していたけど、心眼持ちのリーリアが聖都レガリアに近づいたから、仕方なくその場を離れたー」
「嘘だろ……っ!」

 いや、だがそうなら全てに説明がつく……!

「大ヒ~ント! さっきまでココ、ここでポーアさんと………………戦って、いた」

 バディンが…………ベイズ・ダグラス!
七章もあと少し!
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