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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第七章 ~聖戦士編・中編~

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207 掟

 チャッピーのヤツ、一体いつの間にいなくなったんだ?

 俺とポチは賭場の中、そしてその周辺を探してみたがチャッピーの姿は見当たらなかった。

 腹が減ってモンスターを狩りに行ったか? いや、ここからモンスターがいる場所だと、チャッピーが俺たちと離れすぎて使い物にならなくなってしまう。

 そもそも俺たちに黙って外出するはずがない。


「いませんね、チャッピー」

「あぁ、こんな事は初めてだ」


 紫死鳥となった今、ポチの鼻はあてに出来ない。

 そこで俺はストアルームを宙図(ちゅうず)し、中からある物を取り出した。


「何よそれ、ばっちぃわね? ……それ、あのチキンの羽?」


 そういえばフェリス嬢は、チャッピーの事をそんな風に呼んでいたな。

 確かに臆病だし未だに親離れ出来ないが、アイツは伝説の霊獣《紫死鳥》だぞ? 大人になっていじめられても知らないからな?

 だが、あのチャッピー……どうしても現代で出会ったあの紫死鳥と同じ個体だと思えないんだよなぁ。

 今やチャッピーはほぼ成体と言ってもいいし、声もしっかりと通るようになった。やはりあの紫死鳥と声が違う。

 それに…………それに俺たちは元の時代へ戻る時、チャッピーをこの時代へ置いて行かなくてはならないはずだ。リナたちがいる時代に連れて帰る事が出来る訳じゃない。

 俺とポチはそれをチャッピーに話せずにいる。

 チャッピーは連れてってもらえるものだと思っているようだが、いつか……いつか話さなくちゃならない俺たちの問題。

 チャッピーは、この厳しい世界で一人寂しく生きていく事が出来るだろうか?

 勿論ブライト少年とは仲が悪い訳じゃない。彼と共に生きる事も可能だろう。

 しかし、ブライト少年の寿命は人間のソレだ。天獣と呼ばれる紫死鳥のチャッピーは、その後どうするのだろう。

 長く考えずにいたが、目的の一つである限界突破の魔術を手に入れる確約をもらった今、これは早急に話さなくてはならないだろう。

 チャッピーが見つかったら出来るだけ早く話しておく必要がある。

 そう思いチャッピーの羽を握りしめる。


「ほい、マスターチェイス&ライトアップ!」


 するとチャッピーの羽が光り、ゆらゆらと宙を漂い始めた。


「これは……持ち主の下へ誘導してくれる魔法ですか?」

「流石ですねブライト様。持ち主……というよりは主(あるじ)の一部でないと効果を発揮しません。髪や爪、こういった羽なんかでも大丈夫ですよ」

「何よ、私たち習ってないわよ」


 へそを曲げそうな真っ黒君と、既に曲げてるお嬢様が一人。


「ハハハハハ」

「誤魔化せてないわよっ!」


 教えたくないんだよ。

 今回の空間転移魔法もそうだが、未来に生まれる魔法を何故こんな太古で教えなきゃならんのだ。

 下手に歴史が変わっても…………ん? そういえば、どこかで古い空間転移魔法を見た記憶があるぞ?

 確かリーリアの水晶を運んだ時――


「ほら、羽を追わなきゃダメですよ、マスター!」

「おっと、そうだった」

「ったく、世話の焼けるチキンよね」


 あなたが言うと世界は世話で満ち溢れると思います。

 ポチに後を追い、俺たちはエッドの街の奥へと走って行った。


「ここって……神山ですよね?」


 ブライト少年が俺に聞く。静かに頷いた俺を見て、フェリス嬢が溜め息を漏らす。


「これを登るの? 冗談じゃないわよ」


 神山エッドと呼ばれるエッドの名所。

 と言っても外部の人間がおいそれと入れる場所じゃない。

 近くで見る事は可能だが、登るとなればエッドに許可をもらわなければならない。


「って、考えてる場合じゃないよな。シロ、二人を頼む」

「お任せを」


 ポチが巨大化すると、フェリス嬢、そしてブライト少年が背に乗る。

 幸い人気(ひとけ)はないし、チャッピーが神山に登ってるのであれば連れ戻さなくちゃならない。


「ほほい、インビジブルイリュージョン・カウント4&リモートコントロール!」


 気象型魔法を使い、周囲に溶け込むように姿を消す。


「……これも習ってないわよ?」


 じとりと睨みを見せているだろうフェリス嬢の目は……見えない。


「全て教えていたら、生徒の成長は止まってしまいますからね」


 とりあえずもっともらしい事を言ってから、俺たちは浮遊を続ける羽を追いかけはじめた。

 俺もポチも正面で揺らめき光る羽だけを追い、山道を行き、時にはけもの道を走った。

 神山というだけあって、ほとんど人が手を入れた形跡はない。

 これは姿を消す必要はなかったかな?

 そんな事を考えていたら、羽の速度が減速しはじめた。

 そして木の影からチャッピー特有の体色。深紫(こきむらさき)の色を捉えた時、俺とポチはすぐに足を止めた。


「ちょ、ちょっとっ何――」

「シッ!」


 フェリス嬢の悪態を一言で制止すると、俺とポチは身体を低くしてその色を追った。

 深紫(こきむらさき)の体色を持つ鳥が……二人(、、)。正確に言うと、見えたのはチャッピーと、もう一頭の紫死鳥だった。


「ど、どうなってるのよ……」


 フェリス嬢の困惑を拾う余裕もなく、俺は俺の中の困惑と戦っていた。

 紫死鳥がこんなところに現れるとは。

 二人で……何か話してる? そしてその声は、俺の過去の記憶を呼び覚ましていった。


「貴様、何故人間と行動を共にしている」


 ――…………コイツだ。


「先程から何の話をしているのかわからんな。私が父上たちと行動を共にして何が悪い」

「父上? 人間が? あのような下賤な連中が貴様の親だというのか? 反吐が出るな」


 コイツだ……コイツだコイツだコイツだ……この声だ!

 俺たちの時代で俺たちと会ったのはこの紫死鳥だ!

 しかし何故チャッピーとっ? 何故チャッピーをここに呼び寄せたっ?


「貴様、父上たちを愚弄するとただではおかんぞ。それと、私の名はチャッピーだ」


 何故かいつもよりチャッピーが勇敢に見えるのは、相手が同族だからか?

 この時代の紫死鳥とはいえ、レベルは……百六十か。明らかにチャッピーより強い。

 これは早急に援護した方がいいか?

 そう思い、俺が立ち上がろうとした時、マントの端を押さえる何かに止められてしまった。

 止めたのは……ポチ。

 何だ? 何故止める?

 いや、ポチは種族改変によって紫死鳥になった。ならばあの二人から何か感じるものがあるのかもしれない。

 もしくは、もう少し様子を見ようという事か。

 俺は再び身を隠し、場の動きを見守った。


「名か……そのようなものに現(うつつ)を抜かすとは、紫死鳥も安くなったものだ」

「現を抜かす?」

「ふんっ」


 鼻息を荒くした紫死鳥が嘲笑(あざわら)っているように見えるが、チャッピーは言葉の意味自体を理解していないようだ。


「わかる言葉で喋れ」


 ほらな。相手もようやくその意味を知ったみたいだ。

 からかった相手がからかわれたと自覚していない。

 つくづく論争に向かない相手だな、チャッピーは。


「まぁいい。掟は掟だ」

「掟?」

「人間が親ならば仕方がない。紫死鳥とは生まれ落ちた時より母であり父である紫死鳥に戦闘訓練を施される」


 なんて厳しい種族だ。

 赤ん坊の頃から戦闘訓練とか、まともに動けないだろうに。

 チャッピーなんかポチの毛皮の上で寝小便をしてたっていうのに。

 しかし、「母であり父」って事は……もしかして、紫死鳥は無性生殖を行う種族なのか?

 なるほど、だとしたら個体の希少性……いや、伝説と呼ばれる理由がわかる。


「成体に近づき、母を超える力をつけた時、我々はその母を食い殺すのだ」

「…………」


 段々と雲行きが怪しくなってきたな。


「紫死鳥は世界に一頭。これは昔からの掟だ」


「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」第五巻が発売中!


※お気に入り登録数が15000件をこえました。本当に感謝です。

感想、お気に入り、評価ポイント……とても励みになってます。


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①遂に発売!!

「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」が第五巻が全国書店にて発売中です。

買っていただくと作者のモチベーションがあがると共に続刊に繋がります。購入報告には土下座します。


②特典情報

巻末特典⇒「女の子成分」というタイトルのちょっとしたお話。

ポチがフェリス嬢と共に、こそこそしている話です。


初回特典⇒「ファーストコンタクト」というアズリー&ポチの出会いに触れています。

第一巻はポチの命名に触れましたが、今回はそれよりも前のお話です。


!店舗特典!


○「TSUTAYA」様フェアデジタル特典

⇒タイトルは「女の子成分の中身」です。

もう少し詳しく書いてあります。巻末特典を読んだあと、楽しんで頂けたらと思います。


○「とらのあな」様特典

⇒タイトルは「大食い女王杯」です。

マサキやランドルフ、ジャンボとの大食い勝負に制したポチ。

ブルネアで出会うは最強の敵リーリア。……そんなお話です。


○「アニメイト」様特典

⇒タイトルは「ぶらいとしょうねんのせいちょう」です

ブライト少年とアズリーが、一緒にお風呂に入ります。それだけです。たぶん。


○「くまざわ書店」様特典

⇒タイトルは「俺が魔王でお前が聖戦士!」です。

地の文が一切ない会話SSです。「145 聖戦士の顔」のストーリー冒頭の「魔王ごっこ」をもう一度。

最後に壱弐参から(正確にはアズリーたちから)皆様へのメッセージを入れております。


○「Wonder Goo」様特典

⇒タイトルは「スーハ―エッグ」です。

ほんと、タイトル通りのお話です。場はリナが親善試合にのぞむシーンです。

すー! はー!


○「啓文堂」様特典

⇒タイトルは「観察対象、聖戦士ジョルノ」です。

ブルネアにいたジョルノを、アズリー探偵が尾行するお話です。



どれも気合い入れて書いたので、是非宜しくお願い致します!


③サイン本情報

東京、秋葉原の「書泉ブックタワー」様、神奈川県藤沢市の「Bookプラザ文華堂」様にて壱弐参のサイン本(五巻)を置かせて頂いております。

是非宜しくお願いいたします。

※数に限りがあります。


④ニコ生視聴ありがとうございました!

ご覧になった方、「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」のラジオドラマ、いかがだったでしょうか?

壱弐参のアズリーとガストン

中島さんのアイリーン

吉田さんのポチとトレース

筒井さんのナレーション

まだタイムシフトで閲覧が可能だと思いますので、プレミアム会員の方は是非観てやってください。


⑤YoutubeCMのナレーション

作者:壱弐参の声:壱弐参による宣伝でした。

CMナレーションの現場はあまりありませんでしたが、楽しく声を入れさせて頂きました。

声のお仕事! いつでも待ってます!(真顔

あの最後の「ほいのほいのほい」というセリフ、かっこよく入れるつもりでしたが、「ふざけろ」という指示に屈しました(ぁ


⑥コミカライズ決定!!

なんと、「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」のコミカライズが決まりました!

漫画の担当は「荒木(あらき) 風羽(ふう)」先生です。

素敵で可愛らしいイラストを描いて頂ける先生です! アズリーがかっこよく、ポチが可愛い……( ゜д゜)スゲェ

という訳で、アズリーとポチが絵になって動きます。

連載開始は2017年の4月からという事です! 是非、宜しくお願い致します!!


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がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

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壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
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