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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第七章 ~聖戦士編・中編~

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206 条件

「おい! 何勝手に返事してるんだよっ?」

「だって二倍ですよ二倍!」


 そんなポチの瞳の中には既に食べ物の影が見えた。え、幻術魔法?

 いやいやいやいや、そう簡単に了承する訳にはいかないんだってーの!


「何だったらアンタの欲しいものと交換って手もあるのよ? ここが賭場なんだから、賭けが成立してるんだったら私たちは何でもいいのよ」


 ぬぅ……本当に子供らしくない。

 ここは少し痛い目を見てもらうしか……――いや、待てよ?

 もしかしたらこれはかなりのチャンスかもしれない。

 だが、この条件を二人が受け入れるかどうか……それが問題だな。

 給金の二倍どころの話じゃなくなるが、もしこれを呑んでもらえれば俺たちがこの時代に来た目的の一つが達せられる。


「へぇ? てっきり断られるかと思ってたけど、その目はやる気ね?」

「師匠、僕たちを負かそうだなんて思わない事ですね」


 そう言ってブライト少年は足下にある革袋をちらりと見た。


「そ、それはっ!?」


 ポチが何かに気付き、革袋に近づく。


「ひゃ、百ゴルド金貨がこんなに沢山っ!? ください!」


 もらえる訳ないだろうに。

 あの量で全て百ゴルド金貨だとすれば、総額五十万ゴルドは入ってるんじゃないか?

 凄いもんだな、人の上に立つ人間の豪運というのは。


「父上、これは分が悪いのではないか?」

「大丈夫だ」


 そう、相手が条件を呑めばそれでいいのだ。


「聞こうじゃないの、アンタの条件を?」

「私が欲しいのは……『限界突破』の魔術とその媒体。そちらにそれが用意出来ますか?」

「あんなのが欲しいの? 大抵の街には置いてあるじゃない?」


 きょとんとするフェリス嬢に、ブライト少年が顔を寄せて言う。


「フェリスさん、師匠はその『街単位で一つ』という貴重なものを欲している……そういう事です」

「……確かに、それだけの価値があるかもしれないわね。いいわ、私が父上に掛け合ってあげる」


 いや、空間転移魔法陣の価値はそれ以上だ。


「更に条件があります」

「なぁによ? まだあるわけ?」

「いえ……仰ってください、師匠」


 フェリス嬢の悪態を制止し、ブライト

 流石にブライト少年はこの価値に気付いている……か。


「これをお教え出来るのはフェリス様、ブライト様のどちらか一人です」

「なーんだ、それなら――」

「――そして、たとえ教わったとしても、生涯誰にも教えてはなりません」

「…………誰にも」


 ブライト少年が小さく呟くと、ポチが俺のマントをくいっと引っ張った。


「マスター、確かに良い案ですが、ちょっと強気に出過ぎじゃありませんか?」

「いや、普段から強気なお前に言われてもなぁ……」


 俺たちがこそこそと話してる間に、ブライト少年とフェリス嬢も何か相談しているようだ。

 俺としてはこれで対等……そう思っている。

 しかし、その価値を対等だと思えないフェリス嬢にとっては中々に嫌な条件だろう。

 あちらは勝ったら空間転移魔法を教えてもらえるのに対し、こちらは勝負を受けるだけで二つの条件がある。

 この条件の意味と価値に一番納得しているのはブライト少年。さて、どう出る?

 ……おっと、そうきたか。素早く宙図(ちゅうず)したが、あれは念話連絡の魔術。

 ブライト少年が連絡をとった先は……おそらくポルコ。

 さて、現アダムス家当主はこの条件をどう見るか…………。

 そして、後ろで苛立っているフェリス嬢の手綱をどう握るかだが?


「わかりました。ではその条件、フルブライド家でお受けしましょう」

「ちょっとブライト君っ? 私はまだ納得してないわよっ」


 さぁ、どうするのかな?

 と思っていたら、フェリス嬢に振り返ったブライト少年に戦慄した。

 目を輝かせ、懇願するような……祈りを捧げるようなあのポーズ……!?


「フェリスさん。僕が空間転移魔法を覚えれば、いつでもアダムス家に遊びに行けますよっ♪」


 頬を赤らめるフェリス嬢はたじたじとしながら頷く。いや、あの表情で迫られたら頷く以外に手はないよな。


「絶対遊びに行かないですよね?」

「行く訳ないだろう?」


 ポチとの会話が聞こえてしまったのか、ブライト少年は咳払いを一つしてから場を仕切りなおした。


「さぁ師匠、僕はいつでも構いませんよ?」


 対面に座った俺を前にカードをきり始めるブライト少年。

 ふむ、中々様になっている。

 しかし、ポルコがアダムス家を選んだのには理由がありそうだな。おそらく破天荒なフェリス嬢よりブライト少年の方が御しやすいと判断したのだろうが……あの様子じゃ、もしかしたらそれは間違いだったかもしれないぞ?

 出来る事なら空間転移魔法は渡したくない。時代故という事もあるが、俺の足跡をこの時代に残したくないからな。

 いや……まぁ銅像とかポーアとか名乗ってしまってる時点で、足跡も何もないのだが……「これ以上」と言った方がいいか?


「公平を期すために私が配りましょう」


 俺の使い魔なのにどこが公平なのだろうと考えるのはやめておこう。

 この場合、ポチがイカサマをしないというのは、二人に理解されてるようだし。

 フェリス嬢は後ろでブライト少年を見守るか。

 どことなく目が乙女な気がするが、ブライト少年のあの輝く腹黒い顔を見たのであれば、それも仕方ないか。

 ポチが肉球をぺたんぺたんとしながら器用にカードをきり、俺とブライト少年に配っていく。


「勝負は三回」

「構いません」


 大丈夫、いざとなれば懐の聖王が味方してくれ――――


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「あっるぇ~っ!? 何で!? どうしてこうなったっ!?」

「もう! ホント馬鹿馬鹿マスターですね! 二回連続で負けちゃったじゃないですか!」

「いや、どう考えてもおかしいだろう!?」

「何がですかっ!」

「ブライト様の手札だよ! 一回目はフォーカードで二回目はフルハウスだぞ!? 俺の……俺のフラッシュがぁ……っ!」

「二回目なんてノーペアでしたよ!」

「うるせぇ!」


 俺たちが言い合いをしている中、俺は横目で捉えた。

 不敵な瞳と、口を三日月形にして浮かべる黒い笑みを。

 な、なんだあの恐ろしい顔は……? も、もしかして…………っ!?

 咄嗟に場を見直した俺だったが、そのカードたちは既にフェリス嬢によってまとめられ、店に返却されていた。

 そう、場に残っていたのは――


「これで、空間転移魔法を教えてもらえますねっ♪」


 ブラックとホワイトを混ぜたような名を持つ、黒帝の先祖様。

 …………やられた。イカサマだ。

 俺の運のなさを差し引いても強運過ぎる。

 まさか勝負の場にイカサマを出してくるとは…………くそ、勝負を正面からしか捉えなかった俺のせいか。

 せめてレオンが起きてくれれば……いや、俺のせいだな。

 おのれブライト少年め……アキちゃんにさせられた恨みをここで返した、そういう訳か。

 まぁそれ以上にブライト少年は空間転移魔法に興味津々だったしな。勝負はどんな事をしても勝つ。

 確かに必要な事だ。なるほど、生徒に教えられた……いや、思い出させてもらった、かな。

 うーむ、恐ろしい子供だ。

 将来絶対恐ろしい人間になるだろう。もしかしたら既になっているか?

 しかし、これで限界突破の魔術とその媒体を得られる約束はとりつけた。

 相手が相手だけに流石に騙されるという事もないだろう。今回のポーカーは置いといてな。


 ニコニコとするブライト少年と、ふんと鼻を鳴らすフェリス嬢。

 この二人が共謀すると恐ろしいまでの強敵になる。これからも気を付けなくちゃいけないな。

 さーて、もう二人も満足したみたいだし、帰るか。

 そう思って二人とポチを連れ、賭場を出ようとした。

 ……………………あれ? 誰かいないような気が?

 皆も誰かいないと気付き辺りを見渡している。うーむ、誰がいないんだ?

 なんかこう……黒くて紫色で鳥っぽいヤツがいないような気がするぞ?


「マスター、チャッピーどこ行ったんです?」

「………………どこ行ったんだろう?」

「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」第五巻が発売中!


※お気に入り登録数が15000件をこえました。本当に感謝です。

感想、お気に入り、評価ポイント……とても励みになってます。


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①遂に発売!!

「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」が第五巻が全国書店にて発売中です。

買っていただくと作者のモチベーションがあがると共に続刊に繋がります。購入報告には土下座します。


②特典情報

巻末特典⇒「女の子成分」というタイトルのちょっとしたお話。

ポチがフェリス嬢と共に、こそこそしている話です。


初回特典⇒「ファーストコンタクト」というアズリー&ポチの出会いに触れています。

第一巻はポチの命名に触れましたが、今回はそれよりも前のお話です。


!店舗特典!


○「TSUTAYA」様フェアデジタル特典

⇒タイトルは「女の子成分の中身」です。

もう少し詳しく書いてあります。巻末特典を読んだあと、楽しんで頂けたらと思います。


○「とらのあな」様特典

⇒タイトルは「大食い女王杯」です。

マサキやランドルフ、ジャンボとの大食い勝負に制したポチ。

ブルネアで出会うは最強の敵リーリア。……そんなお話です。


○「アニメイト」様特典

⇒タイトルは「ぶらいとしょうねんのせいちょう」です

ブライト少年とアズリーが、一緒にお風呂に入ります。それだけです。たぶん。


○「くまざわ書店」様特典

⇒タイトルは「俺が魔王でお前が聖戦士!」です。

地の文が一切ない会話SSです。「145 聖戦士の顔」のストーリー冒頭の「魔王ごっこ」をもう一度。

最後に壱弐参から(正確にはアズリーたちから)皆様へのメッセージを入れております。


○「Wonder Goo」様特典

⇒タイトルは「スーハ―エッグ」です。

ほんと、タイトル通りのお話です。場はリナが親善試合にのぞむシーンです。

すー! はー!


○「啓文堂」様特典

⇒タイトルは「観察対象、聖戦士ジョルノ」です。

ブルネアにいたジョルノを、アズリー探偵が尾行するお話です。



どれも気合い入れて書いたので、是非宜しくお願い致します!


③サイン本情報

東京、秋葉原の「書泉ブックタワー」様、神奈川県藤沢市の「Bookプラザ文華堂」様にて壱弐参のサイン本(五巻)を置かせて頂いております。

是非宜しくお願いいたします。

※数に限りがあります。


④ニコ生視聴ありがとうございました!

ご覧になった方、「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」のラジオドラマ、いかがだったでしょうか?

壱弐参のアズリーとガストン

中島さんのアイリーン

吉田さんのポチとトレース

筒井さんのナレーション

まだタイムシフトで閲覧が可能だと思いますので、プレミアム会員の方は是非観てやってください。


⑤YoutubeCMのナレーション

作者:壱弐参の声:壱弐参による宣伝でした。

CMナレーションの現場はあまりありませんでしたが、楽しく声を入れさせて頂きました。

声のお仕事! いつでも待ってます!(真顔

あの最後の「ほいのほいのほい」というセリフ、かっこよく入れるつもりでしたが、「ふざけろ」という指示に屈しました(ぁ


⑥コミカライズ決定!!

なんと、「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」のコミカライズが決まりました!

漫画の担当は「荒木(あらき) 風羽(ふう)」先生です。

素敵で可愛らしいイラストを描いて頂ける先生です! アズリーがかっこよく、ポチが可愛い……( ゜д゜)スゲェ

という訳で、アズリーとポチが絵になって動きます。

連載開始は2017年の4月からという事です! 是非、宜しくお願い致します!!


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がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

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壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
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