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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第六章 ~聖戦士編・前編~

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201 アズリーと薫

「さ、今日はポルコの坊やからの紹介だ。どんな相談だい?」


 早速本題か。


「まぁ、言わなくてもわかってるけどね」

「実は《称号消去》の魔術を使えると聞いてここまで来ました――って、えっ?」


 わかってるって言ってたな、今。

 にやりとする薫に、俺はぞくりと悪寒を感じた。

 しかし、この人の圧力、今まで感じてきたものとどこか違う気がする。

 相手を飲み込むような重い魔力。殺気はないのに気を抜いたら殺されてしまいそうな空間。

 んー……どこかで感じた事のある感覚。

 はて? どこだったかな?


「手を見せてみなさい」


 言われるがままに両手を正面に出す。

 外ではポチとチャッピーがまだカコンカコン言っている。まぁポチに消したい称号はなかったし、外で大人しく待っていてくれるならそれはそれでいいんだけどな。

 あれで大人しいというのかわからないが。


「なるほど……潤子(じゅんこ)が言ってた事は本当だったようだね」

「潤子……さん?」

「今ポルコの坊やとアンタの連れの坊やが会っている人間。私の姉さ」


 そういう事か。

 今二人が会ってるのは薫の姉の潤子。

 …………はて?


「あの、その潤子さんが言ってた事……というのは?」

「アズリーさん、アンタこの時代の人間じゃあないね?」


 薫は一瞬で俺の心臓を掴みにかかった。


「…………仰っている意味がわからないですね」


 自分自身でも気付いた動揺の漏れは一瞬。

 しかし、じろりと見る薫はどうやらその動揺を拾ってしまったらしい。


「嘘嘘嘘……アンタの中身は嘘が沢山詰まってる。今の内に吐き出しておかないと後で痛い目をみるよ」


 俺の小さな溜め息に観念の色を見たのか、薫は今までの不敵な笑みから、自然と綻びるような笑みへと変えた。

 うーむ、中々に強敵だな。


「薫さんが仰った通りです。俺と外にいるポチ(、、)はこの時代にいるはずのない存在です」

「よろしい。正直な子は嫌いじゃないよ。……おや? アンタのその眼鏡、面白い仕掛けがしてあるね。私の()と同じだ」


 鑑定眼鏡の事もわかっている。

 つまり薫の眼とは……――


「――魔眼」

「そう、私の魔眼はアズリーさん、アンタの眼鏡と同じ働きを持っている。これがどういう意味かわかるかい?」

「……俺が白状しなくても、称号からある程度の推察が出来た……と」


 薫は再びにこりと笑った。

 背筋を伸ばし、眼鏡を外して脇に置く。

 すると、一瞬俯いた薫の左の眼は、顔が上がる頃には黒い瞳から白へと変色していた。


「まぁ今回の件は、潤子から聞いた事をアンタに聞いてみただけ……」

「潤子さんも魔眼を?」

「あの眼は特別だ。私なんか比にならない力を持っているよ」


 魔眼を持つ姉妹……か。

 うーむ、ポルコはその潤子の魔眼を頼りにここまで来たという事か。

 一体、どんな能力なのだろうか?


「その内嫌でも知る事になる」


 顔に全て書いてあるぞ、と。そんな目を俺に向ける薫。


「さぁ、視てみようか。質問はその後聞こうじゃないか」


 そう快活に言った薫に、俺は不思議と安心感を抱いた。

 なるほど、この人はガストンに似た空気を持っている。

 あの爺さん、元気にしてるだろうか? 八十の半ばに迫っているというのに、あの人は死にそうにないからなぁ。

 そういえば、リナたちもそろそろ魔法大学を卒業か。王都守護魔法兵団に行ったら、リナもオルネルも絞られるんだろうなぁ。

 そんな今となっては懐かしい顔を思い浮かべていたら、白色の魔眼で俺の情報を視ていた薫が、額に不自然な量の汗を見せていた。

 おや? どうしたんだい、薫さん?

 爽やかな笑みを浮かべて顔を傾げた俺に、薫は表情を変えずに天井を見上げた。

 何か、凄く嫌な予感がする。

 いや、俺も正直なところアレ(、、)は無理だろうと思っていたんだ。


「……私の手に余る称号が一つある」

「やっぱりありましたかぁ…………」


 ――――――――――――――――――――

 アズリー

 LV:172

 HP:24115

 MP:182887

 EXP:231786693

 特殊:攻撃魔法《極》・補助魔法《特》・回復魔法《特》・精製《特》・剛力・剛体・疾風・軽身・剛心

 称号:悠久の愚者・偏りし者・仙人候補・大魔法士・特級錬金術師・杖聖・六法士(仮)・恩師・ランクS・首席・パパ・腑抜け・SS殺し・守護魔法兵(仮)・剛の者・(はや)き者・使い魔以下・古代種殺し・魔王(仮)・マッド・禁忌を犯せし者・千の魔を知る者(サウザンドマジシャン)・聖戦士(仮)・村の英雄・天獣の父

 ――――――――――――――――――――


「この《悠久の愚者》……アズリーさん、アンタという存在に定着してしまってる。歪んだ……いや、ここまできたら真っ直ぐ、だね。それ程の想い(、、)を、さて、誰から向けられたんだか……」

『カコン』

『カコン』

『『カコーン♪』』


 俺の感情の揺らぎと、外から聞こえた声への反応に薫が気付く。


「そうかい。そういう事かい。足音からして犬と鳥か……アンタの使い魔かい?」

「狼なんですが……そちらが使い魔で……お恥ずかしい限りです」

「恥ずかしくなんかあるもんかい。こりゃあその狼がいなくならないと、とれないねぇ」

「やはりそうですか。けれど、それ以外は消去出来るという事でよろしいでしょうか?」


 俺の言葉に薫はにこりとして頷いた。

 なるほど、やはりポチからの熱ーい眼差しだったか。

 ポチがいなくならなきゃ消えない称号。

 なるほど、これは互いが死ぬまで付き合うしかないって事だな。

 不老であるが故に、病気だけは気を付けている俺たちだが、いつ不治の病にかからないとも限らない。

 戦闘以外でも、これからは気を付けなくちゃいけないな。

 それから薫は、顔に汗を滲ませながら俺の称号を消去していった。

 どうやら相当な集中力を要するようで、一つ称号を消す度に、その疲弊度は明らかになっていった。


「……ふぅ、これで最後だね」

「本当に、どうもありがとうございました。ほい、ギヴィンマジック」


 薫の足下に広がったギヴィンマジック。


「魔力は大して使っちゃいないが……いい男だね、気に入ったよ」


 あぁ、そうか。

 ならこっちかな? 俺は懐にあったポチビタンデッドを手渡した。

 再び作ったポチビタンデッドは、今ストアルームに大量保管されている。

 ちょっとやそっとの事ではなくならないだろうし、世話になった薫のためだ。少しも惜しくない。


「何だい、これは?」

「ささ、どうぞグビっとっ」


 小瓶の蓋をきゅぽんと開け、薫は俺の言われるがままにポチビタンデッドを飲み干す。


「うん、美味しいじゃ……――っ!」


 身体の、体調の変化に気付いた薫は、言葉を失ったように俺を見た。


「……そうかい、この世の理すらも捻じ曲げる程の強い執念(ちから)。見事なものだね。ありがとう。とても美味しかった」


 ホッと息を吐いた薫は、どこが嬉しげな様子だった。

 今回称号消しをしてもらったのは五つ。

『偏りし者』、『腑抜け』、『マッド』、『禁忌を犯せし者』、『使い魔以下』だ。

 後者四つは完全にマイナス効果のある称号だった。特にポチが付けた『使い魔以下』。

 百一さん百一さんと呼ばれ続け、べったりとこびりついていたらしく、これを消去した時の薫の顔は疲労感でいっぱいだった。

 そして長く共にした『偏りし者』。

 これはHPとMPのバランスを変化させる働きがあったらしく、消去してもそのバランスが元に戻るというだけだった。具体的には称号がある状態ではHPがかなり減ってMPがかなり増える。逆にない状態だと、HPとMPが元に戻るだけ。

 HPの量を危惧していた事もあったので、今回無理を言って消してもらったのだ。

 これらを消去した事によって、俺は身体に少しの軽さを感じた。

 どうやら、戦力アップという面では顕著に効果が表れたらしい。

 ……ん、この気配は?


「さて、お話しをしようじゃないか。……入っておいで」

「あふん!」

「いちゃい!」


 薫の鋭い言葉と同時に、ポチとチャッピーが戸から倒れ込むように侵入してきた。

 やっぱり聞き耳立ててやがったか、あの二人。

 案内をした丁髷の男はきっと入口まで戻ったんだろうな。

 無造作に埃を払った二人が、綺麗チェックを互いにしている。

 そしてそろりと俺に近付き、背後に隠れるようにして座った。

 そうか、ちょっと怖いのか。

 俺の背から鼻先だけ出したポチ、そして(くちばし)だけ出したチャッピー。


「ポチです!」

「チャッピーだ!」


 そうか、俺たちの話を聞いていたか。

 因みにチャッピーは、俺たちの名前が偽名だという事を知っている。

 使い分けが出来ないから呼称は変えてないけどな。

 すんと鼻息を吐いた薫は、再び顔を綻ばせた。


「薫よ」


 さぁ、いよいよ聞こうじゃないか。

 俺たちの秘密を知る、その理由(わけ)を。

明日のニコ生、時間があれば宜しくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 読んでる途中だけど、ポチに死亡フラグが立ったように思えて不安で仕方ない...
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