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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第六章 ~聖戦士編・前編~

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◆191 モンスターの侵入

 南門に押し寄せるモンスターたち。

 後に駆けつけたアドルフ、レイナ、ライアンが目にしたのはおよそ二千の飛行モンスターだった。


「地を走るモンスターがいない…………これはまずいな」


 ライアンがそう零すと、この一年でランクBにまで上がったリードが、焦燥の面持ちで頷く。


「レイナとアドルフはどうしたんです?」

「外壁に回した。……が、これは我々もそちらに回った方がよいだろう」


 ライアンはそう言って手を上げた。後方に控える冒険者たちへの指示である。

 そして最後方の冒険者から徐々に南門へ入り、そのまま外壁へと上がって行く。


「これって……厄介よね……」


 レイナの言葉にアドルフが反応する。しかしその意図は理解していない様子だ。


「外壁通路に立てるのは幅で二人が限度。モンスターと対峙するなら一人。両側をうまく使っても三人まで……となると――」


 アドルフはそこでレイナの発言の意味を理解した。

 魔法士たちとの連携がとれない。それどころか、後衛であるはずの魔法士がモンスターと至近距離で戦う事になる。


「くっ……!」


 ライアンの額に冷たい汗が走る。

 案じる様子で後方を見つめ、外壁から街を見た。


(イツキ……無事でいるんだ……!)


 それから間もなくして、二千にも及ぶモンスターの大群は、波となって南の外壁を襲った。

 攻撃を縫うように避け、跳び越えながらモンスターたちは街に侵入したのだった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 一人突っ走ったチャーリーに任され、戦士大学で学生の隊列を組み指揮する男ドラガンが気付く。

 振り向いた先は南。目を細め、まだ小さな粒に見える飛行物体を視認した時、彼はその正体に気付く。


「急ぎ進軍します! 全隊前へ!」

「「はっ!!」」


 ドラガンの背には無数の武器。

 剣、小剣、細剣、重剣、槍、斧、弓。騎乗した馬には多くの矢筒が取り付けられている。

 既に戦士大学への住民の避難が始まっている。

 ドラガンは街へのモンスター侵入の事は告げず、静かに、ただ迅速に南へ向かった。


 一方、魔法大学では、学生をまとめていたリナがいち早く気付いた。そして魔育館前から中庭で集中するアイリーンに向かって叫んだのだ。


「アイリーン先生!」


 そしてアイリーンが気付く。戦闘に向かえない苛立ちからリナに遅れをとった事に更なる苛立ちを見せる。歯を食いしばり、リナの左右にいたクラリスとアンリを見つめる。

 そして戻ったトレースに向かい一つ頷いて見せると、トレースは三人に指示を出した。


「リナ、クラリス、アンリ。行きなさい」


 静かに頷く三人は、すぐに南に向かった。

 リナの背中を追いかけるように、息を切らせたオルネルがトレースの下へ走ってきた。


「トレース先生、俺も! 俺も行かせてください!」


 するとオルネルに駆け寄る魔法士が一人。

 他の学生より一際小さなその魔法士は、チワワーヌのタラヲを肩に乗せたティファだった。

 オルネルの隣に立ったティファ。そしていつもとは違うティファの様子にトレースが気付く。

「イツキが……! ナツがまだポチズリー商店にいるみたいなの!」


 オルネルはその言葉に驚き、北にあるポチズリー商店の方を見た。

 魔法大学と戦士大学はベイラネーアの中央に存在し、少しはずれた北区にポチズリー商店がある。

 南に向かいながらモンスターと戦えば多少は叩く事が可能だ。

 しかし、相手は飛行型モンスター。地上から戦う戦士や魔法士に全てのモンスターを倒す、というのは現実的に考えて不可能だった。

 更に言うならば、魔法大学大学長のテンガロン、六法士、常成無敗のアイリーン、まだ見習いながらにいる魔法学生たちの魔力を前に、モンスターが中央区を避ける事は容易に想像できた。

 焦りを隠せなくなったティファは、アイリーンを背に走りだそうとした。瞬間――


『待ちなさい!!』


 アイリーンの叫ぶような念話連絡。

 ティファだけでは万一の場合危険。そういった判断だった。

 アイリーンは今、肉声で喋る事が出来ない状態。声を出してしまったならばそれはベイラネーア中に届いてしまう。

 そんな中、ティファの前に立つオルネル。

 先に向かったリナの無事を祈るように強く目を瞑った後、強い意志を乗せた瞳を見せる。

 アイリーンが静かに頷き、再度ティファを見る。


『オルネルと共に向かいなさい』


 オルネルならば――そう思ったアイリーンは、ティファに指示を出す。

 トレースが高学年の学生の指揮をとっていた時、二人は見合い、駆けだした。

 魔法大学外へ出たオルネルは走りながら魔法陣を宙図(ちゅうず)する。


「……ハウス!」


 白い光の中から現れるマイガーが着地すると同時にオルネルの隣を走った。

 オルネルの心情を読み取ったのか、マイガーが周りを覆う異様な気配にただ一言尋ねる。


「状況は?」

「東西南北から無数のモンスターが出現。各門で冒険者が応戦中!」

「にしちゃ北門に向かってるように見えねぇな」


 マイガーの、質問とも独り言ともとれる発言にタラヲが反応する。


「ポチズリー商店だ。あそこにまだイツキやナツがいるそうだ」

「あぁん? あの二人なら別に心配する必要ねぇだろ?」


 イツキは戦えないが状況判断が出来る人間だ。

 そしてナツも今やランクCの冒険者。二人は銀の優秀な人材である。

 マイガーはそれを理解していたからこそそう言った。


「子供たちよ……」


 ティファが言うと、マイガーは現在ポチズリー商店が抱える子供たちの顔を思い浮かべた。


「シアンにベル、リンダ、アカネ、リム、リオ、ライ――」


 ポチズリー商店にいる子供。

 全ての名前を言おうとするマイガーに、タラヲは怒りを見せた。


「貴様! タオとレイン、マキ、それにナツミを忘れているではないか!」

「わぁーってるよ! 後で言おうと思ってたんだよ!」


 喚き散らす二人の使い魔。


「五月蠅いぞお前ら! あいつらが今危険なんだ! マイガー、巨大化だ!」

「しゃーねぇな! 糞ガキ共を助けに行ってやるか!」

「糞ガキとは何事だマイガーよ! リンダとアカネはもう立派な大人だ! シアンとベルはいつも喧嘩をしているが、向上心があり、なにより真っ直ぐだ! それに――ぬぅおおおおおっ!?」


 言い掛けるタラヲの言葉を遮るように、その前脚を掴みオルネルの後ろ、マイガーの背に乗ったティファ。


「しっかり掴まってなさい!」


 オルネルの背中とティファの胸に挟まれたタラヲが苦しそうにもごもご唸っている。


「そうだぜ! 落ちたくなかったらオルネル(糞野郎)の首にでも掴まっときな! なんなら、絞めたっていいんだぜ!」

「馬鹿な事言ってる場合か! 場所はわかるな!?」

「……お前ぇ、何度偶然を装うようにあそこまで歩いたと思ってるんだ……」

「あ!? 何か言ったか!?」


 マイガーの小さな皮肉はオルネルに届く事はなかった。

 深い溜め息をとらえる事が出来たタラヲだけが気付く。


(お互い主(あるじ)には苦労しているようだな……)


 力強く大地を蹴り、一瞬にして家屋の屋根まで跳び上がったマイガーの背は、決して乗り心地のよいものではなかった。背はゴツゴツしていて、動きは粗暴。

 場合が場合ならば、ティファもマイガーに悪態を吐いただろう。

 しかしそんな場合ではない。仲の良い友人に危機が迫っている。ティファは歯をぎしりと鳴らし、ポチズリー商店がある北区を見据えた。

 するとティファの緑の瞳に巨大な黒影が映る。


「っ! 双黒龍!?」


 見てわかる程の巨大な竜族モンスター。

 漆黒の鱗で覆われた身体、紅の瞳。巨大な翼と、胴体から繋がる首程に長い尻尾。

 特徴的なのは首から背にかけて生える無数の骨盤。


「双黒龍っ? 聞いたことないぞ、そんなモンスター!」


 オルネルが過去携わったモンスター関連の情報を頭から探すが、そんな情報は出てこない。そう聞くと、ティファは思い出すように言った。


「アズリーさんの資料にあったのよ。確か二千年くらい前に絶滅したって書いてあったはず……」

「ったく、何でアイツはそんな資料なんか持ってるんだよ!?」

「知らないわよ! でも……確か双黒龍には弱点がない。そんな事が書いてあったような……」

「何でだよ!? 竜族だろうと背後は死角。そうじゃねぇのか?」


 ティファが指差す先。

 オルネルはその先に双黒龍の尻尾を見た。


「その理由が、アレよ……」

「……っ! あれは尻尾じゃない! 首か!」


 前後に生える首に気付いたオルネル。

 目を細めるマイガーが舌打ちしながら速度を上げる。


「ありゃ強ぇな……」

「あぁ、あれはランクAを超えている」


 マイガーの灰色の毛を強く握るオルネル。

 その意図を感じ取ったマイガーは、それ以降、軽口を叩く事はなかった。

 オルネル、ティファのこれまでの戦闘。その討伐モンスターの中にランクSに該当するものはない。

 正面に見える双黒龍。ランクSの上位に存在するであろう存在を前に、オルネルとティファは魔法士。タラヲの戦闘力では一秒ともたない。近接で交えるであろう存在はただ一人、己自身。

 伝説の霊獣「灰虎」の化身と呼ばれるマーダータイガー。誇り高い種族故か、マイガーは巨大な存在を前に怯む事も、二の足を踏む事もなかった。

 睨むように鋭く双黒龍を見据え、心を、魂を奮わせて速度を上げた。

 程なくしてポチズリー商店の屋根をオルネルが捉える。

 そしてオルネル、ティファ、タラヲ、マイガー四名の耳に届く、聞き慣れた声。

 イツキの悲鳴が響く。

すみません。二つだけCMさせてください!


【CM①:アース・スターノベルフェア】

秋葉原の書泉ブックタワーにてアース・スターノベルフェアが開催しております。

そちらで「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」をご購入いただくと、限定SSペーパー「タラヲの助言」がゲット出来るそうです。

アース・スターノベル作品を購入すれば別作品の限定SSペーパーを選んでもOKなようです。

購入すると応募券がもらえます。応募券に必要事項を書いて購入されたレジにて応募すると、抽選で複製原画がプレゼントされるそうです。(私も欲しい)

サイン本も何冊か置かせて頂いております。


応募期間は2016年11月15日~2017年1月8日なので、お近くにお住まいの方、その間秋葉原を訪れる方は、是非行ってみてください。



【CM②:フィリスのアトリエ出演】

発売から一か月経ってしまいましたが、壱弐参ってやつがPS4・PSVITAで発売中の「フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~」に声の出演をしております。

ニコ生などで壱弐参の声を知ってる方、是非購入して探してみてください。

実際は本名で参加してるので、どの役か! ってのは内緒です。探してください!


以上、売名行為でした。

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