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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第五章 ~古の放浪編~

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162 クッグの村

 あれから七日か。もう間もなく正面にレガリアが見えてもいい頃だが……。


「おっ! おう、あれがレガリアだぜ」


 隣を走るガイルが言った。


「お~」


 流石に現代よりは小規模だし城も小さいが、確かにあそこはレガリアの地。

 どうやら今日中にはクッグ村に着けそうだな。

 この七日間でガイルとはよく話すようになった。

 俺が危険地帯でのフォローを何度かすると、急に話し掛けてくれるようになったんだ。

 モンスターの強さは出て来てもランクS、ほとんどがランクBやAばかりだったが、先頭を走る者への負担は大きい。

 動きやサポート能力を認めてくれたのかもしれない。

 ここまでの道、危険地帯は走り、比較的安全な道は足を緩めた。


「よーし、ここからは歩きだ!」


 ガイルの話では、これ以降は全て歩き。

 この速度ならば今日の夕方くらいには着きたいとの事だったが、大丈夫そうだ。

 シロやガイルとはよく話したが、道中ブライト少年とほとんど話せてないのが実情だ。

 まぁ護衛団の先頭を走る俺たちと、中央を走る馬車の中にいるブライト少年では仕方がないか。

 キャンプの時も似たような状況だったしな。

 ジュンの話だと、ここら辺のモンスターは低レベル者が倒せると聞いていたが、本当のようだな。

 遠目で捉えるモンスターはランクF~D。モンスターもこちらを警戒しているようで襲われる回数も少ない。

 うん。これならなんとかなりそうだな。


 昼の休憩の時、俺はポルコに話しかけられた。


「ポーア君」

「何でしょうポルコ様?」

「ここらはもう安全だろう。もしよければ私の馬車まで来てくれないかね? 無論シロ君も」


 もう後はガイルたちに任せてこっちへ来てくれ。何か話がある……そういう事らしい。

 ポチの同伴も許すって、ホント貴族にしては珍しいな。

 俺とポチは顔を見合わせてからポルコに頷く。

 馬車の中には当然誰もおらず、ポチが我先にと入り、俺もそれに続いた。


「かけてくれたまえ」

「失礼します」


 俺が座るとポルコも対面の席についた。

 因みにポチは俺の足下で伏せている。


「さて……何から話したものか……」


 ポルコは少しある顎鬚を撫で、考えているようだ。

 この言い方、いくつか話があるという事か。


「フェリスの件だが、君はあの子をどう思う?」

「どう、と仰られますと?」

「魔法士に向いているか……という点だ。この半月、君がフェリスの魔法指導を行ってくれた事はジュン殿から聞いて知っている。という事は、私がフェリスに教えていた事も知ってるだろう?」


 最下級のリトルファイアとキュアーしか教えてなかったって事か。

 フェリスがポルコの前でとっている猫被りには、やはり気付いているのか。

 いやはや、親は恐ろしい。


「フェリス様には、下級系の魔法。この基礎は半月で仕込みました」

「ほぉ、それは素晴らしいものだね」

「これ以上はやはりレベルの向上も必要なので教えていません。そもそもポルコ様に断りもせず魔法を教えてしまい、申し訳ないとも思っています」


 右手をあげポルコが言う。


「気にする事はない。あれはあれであの気性だからな」

「ありがとうございます。それで、最近になって杖術を教えたところ――」

「そちらの方が才があった……と?」

「はは、そんな印象は受けましたね」


 苦笑して答えると、足下のポチが顔を上げた。


「でも、魔法の才がないという訳ではないと思いますよ! マスターが教えたとはいえ、半月で色々覚えましたからね」

「はははは、ありがとうシロ君」

「どういたしまして!」


 温かい目をポチに向け、ポルコは話を続けた。


「しかし杖術まで教えていたとはね。少々君を過小評価していたかもしれないな」

「それくらいで十分ですよ!」

「お前は黙ってろ」


 ポチの口を強引に塞ぐ。

 んーんーと唸るポチの頭を、ポルコがひと撫ですると黙ってしまった。

 こいつ、ポルコが優しいからって調子にのってるな? ニヤニヤする細目が物凄く嫌味に見える。

 おのれ……。


「では別の話だ。我が家にいる間だけで構わない。フェリスの警護も頼みたい」

「え?」

「これはジュン殿にも話を通してある。フェリスが君の指導をせがむならそれもお願いしたい。勿論、どちらも報酬を支払おう」


 ポチの嫌みの視線が変わり、俺と目を合わせる。


「警護はともかくとして、先程戦士としての才をお話ししたばかりですよ?」

「君になら…………どちらもお願いできそうだと思ってね?」


 確かにトゥースやブルーツに戦士としての動きは学んだが……しっかりちゃっかり観察してるな、この人。

 再びポチを見ると、ポチはこくりと頷いて見せた。

 好きにしろって事か。


「……わかりました。やれるだけやってみます」


 少し笑って見せたポルコと共に、俺たちはそのまま雑談しながら目的地、クッグ村へと向かった。

 それから四時間程馬車が進むと、外から気合いの入った護衛団の掛け声が届いた。


「どうやら着いたようだね」

「えぇ」

「お話楽しかったですー!」

「はははは、私もシロ君とポーア君の掛け合いを楽しませてもらったよ」


 馬車の進みがより一層緩やかになる。

 そしてゆっくりと止まる。屋敷に着いたようだ。

 御者に開けられた扉から出ると、そこはジュンの屋敷が丸二つは入ってしまいそうな程の巨大な屋敷だった。

 いや、城と言ってもいいかもしれない。

 庭は広く、外壁の四方に小さな塔があり、そこを何人かで固めている。外壁だけのジュンの屋敷とはちょっと違うな。

 門外からクッグ村を見てみると、こちらは別世界だ。

 のどかな空気の漂う小さな村だ。現代でもそうだが、この規模の村なら村人が困窮していても不思議ではないはずだが、そうは見えない。

 それ程ポルコの統治が素晴らしいのだろう。少し話してみて改めて思ったが、傑物の類かもしれないな。

 威厳があるが優しく、人望もある。ポチも気に入ったみたいだし、リーリアが認めるだけはあるか。


「マスター! これは期待できますよ!」


 食事が、だろう?

 そんなポチを脇目に、ポルコは護衛団に指示を出し、そのまま屋敷の警備に当たらせた。

 あいつらの給金てどれくらいなのだろうか?

 冒険者よりは少ないだろうが、その分安全なのはわかる。

 この護衛団……二十人規模のチームの場合、チームの安全を優先させる場合もあるしな。

 ガイルの場合、そちらの方がいいと判断したのかもしれない。


「ポーア君」

「はい?」

「少し村の周りを見てくるといい。これからの指導には必要だろう? 後程屋敷に来てくれたまえ。戻ってきたらガイルに話すといい。彼はあの衛士小屋にいるから」


 確かにそうだろうな。

 この辺りの地形や生息するモンスターの情報を頭に入れた方がいい。

 俺たちはポルコに礼を言ってから村まで出てみた。


「ホントに静かな村だな」

「緑も多いし現代とは全然違いますねぇ」

「あれ? 現代で来た事あったっけか?」

「ありますよ! 覚えてないんですかっ? ランクSの昇格審査後にベティーさんと一緒にスキュラを倒しに行ったでしょうっ!?」

「あー……あったあった。あの滅びた村か」

「ホント、忘れっぽいんですからっ」


 ツンツンするポチ。そんなに目立つような場所じゃなかった気がするけど、ポチのヤツよく覚えてたな。

 そういや、あの時ポチ変な行動をとったような気がしたけど…………はて? 何したんだっけか?


「村は問題なさそうですね。この時代に外壁ではなく柵だけってのは少し不安ですが、そうしてないのはそこまで危険がないからでしょう」

「そうだな。次は外出てみるか」


 その後、ポチに乗って村を回ってみたが、ジュンの言った通り危険なモンスターは発見できなかった。

 確かにこれならブライトを成長させる事が出来るだろう。

 俺もポチも、ここで(、、、)鍛錬しなくちゃいけない。

 ポルコの話だと、警護は日中のみで構わないとの話だ。

 あれだけの護衛団がいるならそれもそうだろう。

 となると夜からは俺たちがここで経験値を稼がなくちゃな。


「ここで上げられるんですか? レベル」

「おう、楽しみにしとけよ、ポチ」


 ニヤリと笑った俺の顔を見て、ポチが大きく吠えた。

 いつもは得意げに話す俺をけなすポチだが、今日はそうしなかった。

 珍しいこの反応は過去に数える程しかないが、こういう時は上手くいく事が多い。

 さて、どうなるだろうか。

突然の小ネタ集

①私の別作、「転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)」でも、第一部の最後の方で「クッグの村」は滅びた村として出てきますが、別モノです。

②アズリーの心情(地の文)、キャラの言葉の中に出てくる「やつ」・「ヤツ」・「奴」で使い分けをしています。

やつ⇒標準、敵でも味方でもない。

ヤツ⇒好き、好意的な感情をもってる。

奴⇒敵意、もしくは対抗心がある。


そういうのを意識して書いてたりします。

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