140 三つ巴改め、三つ巴
申し訳ありません。少し頭を捻らなくちゃいけない設定だったため、時間がかかってしまいました。
ブルネアに向かう途中、休憩、休息の度に俺はジョルノが見つけた穴場でモンスターを殲滅した。
ある時はオーガの集団を水葬し。ある時はリザードマンの巣を水で埋め。そしてマンドラゴラトレントの森を崖の上から焼いたりしていた。
最近モンスターが可哀想になってきたが、どれも人間にとっては危険な存在である事には違いない。戦場では情けは無用……か。これはブルーツに教わった事だ。そういえばあいつ、元気にしてるだろうか? あいつの事だ、元気にやっているに違いない。
定期的にレベルを上げたかったのだが、途中訪れた街に限界突破の魔術陣は存在しなかった。やはり貴重なものだという事か。小さな街や村にはなくて、要の土地でそういった貴重なものが置かれる。
ブルネアにはあるらしいが、それまでレベル百一というのも大変だな。
俺が遠隔攻撃でモンスターを討伐しているその間、ポチはリーリアと二人きりな訳だが、特に話はしていないようだ。
ポチの胃袋に嫉妬しているのか、食事の際、張り合うように食べてるのは目に見えてわかるんだけどな。
最後の休憩地点、ここより先はブルネアまで一気に向かうという場所で、俺とポチは既視感を感じ、それを見上げた。
「巨人の通り道ですね……」
「て事は、やっぱりブルネアってのは……」
そう、ベイラネーアの事だ。
訛りとか響きとかの関係でそう残ったのだろう。
となると、ベイラッドドラゴンから変化した名前のバラッドドラゴンは存在しないのかもしれないな。
「お、ようやく知ってる場所に出たかい? ブルネアに行く途中、ここは必ず通るからねー」
「ジョルノ、乾きの砂漠からでも回りこめるわ?」
「あーダメダメ。あっちにあったアランの街。どうやら滅びちゃったらしいよ? あの街で休めなかったらほぼノンストップでブルネアまで行かなくちゃいけないから、今となっては大規模なパーティじゃないと通り抜けるのは無理だろうね」
「アランの街がっ? 初耳ね……」
「この前商戦団と会ったろ? その時僕も聞いたんだ」
「アランの街はどうして……?」
「絶望の使徒を街に招いちゃったみたいだね〜。始めは有力者から始末してたみたいだけど、壊した要所からモンスターを呼んで、呆気なく……だそうだ」
現代の乾きの砂漠近辺に街は存在しない。
なるほどな、この時代に滅ぼされてしまったのか。
だが、絶望の使徒…………そこまで知能が高いのか。
人間の姿になれる存在だと言っていたが、本当にランクSSのモンスターが変異したものなのか?
もしかしたら神の使いが言っていた事は違うのか? しかしあの爺さんが嘘をついてるとは思えない。
「けど、あの街の心眼使いは何故それを見落としたの? 最悪の失態じゃないっ」
語気を強めてリーリアが言った。同じ心眼使いとして悔しいのだろうか。それとも恥じているのだろうか。
「流石にそれはわからないさ。あの規模の街となると、心眼使いは一人しかいないだろうし、過労による疲れからか…………もしくは察知されない使徒だったのか……どう思う? ポーアさん?」
「あ、えっと…………心眼が効かない使徒なんているのでしょうか?」
「現状は確認されていない。だが、敵さんも馬鹿じゃないからねぇ~。心眼使い同士であれば見破れないから……そこを突いてきたのかもね~」
ジョルノはこんな事を軽く言うが、本当に勇者なのだろうか?
「という事は、ジョルノは我らエルフの中に魔王軍の味方をする者がいると言いたいのか?」
リーリアが目を細めて剣の柄に手を置いた。あぁ、そういえば彼らエルフは誇り高い一族だと聞いた事がある。
トゥースは通り越して我儘なだけだが、一瞬空気が割れた気がするぞ……。
「そんな事は言ってないさ」
「ではどういう意味だ」
「身体を乗っ取られでもしたら起こり得る事だって言ってるんだよ。今は――――」
「あっ」
三人がばっとこちらを向く。
急に思い出したから思わず声が出てしまった。
「どうしたんだい、ポーアさん?」
「いや、魔法か魔術なら出来るんじゃないかなーって思いまして」
「魔王軍の中でそれが使えるのは悪魔の奴らだけだ。確かに奴らなら可能かもしれないが――」
え? 今、リーリアは何て……。
「――奴らがそんな小細工をするようには思えないわ」
「ちょ、ちょっと待ってください。悪魔が魔王軍にいるんですかっ!?」
俺より先に聞いたのは、勿論ポチだ。
「当たり前だよ、モンスターの親玉は悪魔。こんなの常識のはずだよ?」
「そ、それはつまり、魔王が悪魔って事じゃないですか!」
「……本当に知らないみたいだね。ポーアさん、しっかり教えてあげないと~」
「あ、あぁすみません……」
知らないから教えられない。そんな事はポチにしかわからない。
それからジョルノは、溜め息を一つ吐いてから説明を始めた。
一瞬リーリアの表情が曇ったのは気のせいじゃないはずだ。
「いいかい? モンスターってのは悪魔が世界を滅ぼすための尖兵だって言われてるんだ。滅ぼすと言っても結局は縄張り争いのようなものだけど、人間という種を消しにくるという事に変わりはない。布告の段階では家畜としては使ってくれるとか言ってたけど、そんなのは生きてるとは言えない。だから僕たちは立ち上がってこうして戦ってるわけさ」
「それは知ってますが、魔王がモンスターの王ではなく、悪魔だというのはどういう…………」
「はぁ……百年くらい前の事さ。エルフは《悪魔召喚の儀》を行って《魔術》を得た。悪魔の力を借りてね。以来エルフはダークエルフと蔑まされるようになったんだ」
なるほど。やはり既にそう呼ばれているのか。
だからリーリアはあんな顔を……。
ジョルノはそういう事をあえて口にしていない。いや、最前線であるソドムではそう呼ばれていなかった。
それはきっと、リーリアの活躍によって得たものなのかもしれない。
「《悪魔召喚の儀》が、何故成功したのかも知らないのかい?」
「何らかの対価を払って……という事までは知っています!」
ポチが身を乗り出しながら答えた。
「そう、それこそが最大の肝でね。一部のエルフが対価として支払ったのは他でもない、《悪魔による人間界の介入》さ」
………………。
「……それってどういう事です? ハハ」
薄く、恐怖を含んだ小さな笑い声を出しながら、ポチが聞く。
「この世に存在しないはずの悪魔が存在するのは、その対価が原因だと言っているんだ」
「そんな!? 一部だけのエルフだけが決められる事ではないはずですっ!」
「悪魔にそんな事は関係ないさ。エルフは魔術を得る対価として、この世に悪魔という絶望をもたらしたんだ」
そりゃ…………ダークエルフと呼ばれる、か。
だが、そういう事なら何故現代の悪魔は、現代に復活しようとしている魔王を倒そうとしているんだ? 同じ悪魔同士だろう?
いや、人間同士でも争うんだ。悪魔同士が争わないという事はないはずだ。何らかの対立があると見て間違いないだろう。
「……では、悪魔と魔王って……何が違うんです? 普通に存在する悪魔と、一定の周期で復活する悪魔……一体何が?」
「うーん、実際に戦った事ないから魔王の強さはわからないけど、単純に強さだと思うよ~? 使徒の中にモンスターもいれば、悪魔もいるけど、その程度なら僕とリーリアでなんとかなるしね」
さらっととんでもない事を言ったけど、やはりこの二人が協力すれば、悪魔を倒す事が出来るのか。
そうだ、これを機会に聞いてみるか。
「それにしてもお二人はとてもお強いですが、お二人以外にも高名な方はいらっしゃるんです?」
ジョルノは「う~ん」と腕を組んで唸った後、ちょうどいい岩に腰掛けたリーリアに顔を向ける。
「私に聞くか? ふん……そうね、《アダムス家》の男……それから《フルブライド家》の娘には驚いたかしら……」
「あー、確かに」
おや、どちらも聞いた事があるような家の名前だな?
一人は…………ウォレンの家で、もう一人は…………あれ? 誰だったっけ?
すると、俺の捻る頭の横で、ポチが肉球で口元を隠しながら小声で言った。
「アダムス家って言ったら、いじめっ子グループのリーダーの人ですよね、確か」
あー、現学生自治会副会長のオルネル君か!
今回、最後のCMです。ご容赦を。
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完走目指して頑張ります。是非応援の程、宜しくお願い致します。
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