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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第五章 ~古の放浪編~

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138 マサキとランドルフ

「ふふん! 百三十二! 百三十二ですよ、マスター!」

「……あぁ、よかったな」

「それで~、マスターはいくつでしたっけ~」


 この横目でニヤニヤする使い魔を早くなんとかしなくちゃいけないんだが、それよりも今は色々と考えなくちゃいけない事がある。

 受付の男に詳しい話を聞くと、どうやらあの魔術陣に手をかざさなくちゃ、蓄積したEXP(経験値)を解放出来ないようだ。

 つまり、あの魔術陣の公式を何とか取得するしか、現状元の時代に戻っても意味がない。

 かといってその秘密がわかる訳もなく、冒険者ギルドの人間がそれを教えてくれるとも思えない。

 しかし、ここで一つの謎が出来る。

 それはトゥースの存在だ。

 あいつのレベルは、自称二百七十四だと言っていた。

 この五千年で上げたにしては低いが、根っからの引きこもりだからな、あいつは。とまぁ、それは俺が言えた事ではないんだが、あいつは確かにその場でレベルを上げていた。こうしたひと手間を加える事はないはずだ。

 これはもしかすると、あいつの言っていた《限界突破》と、ここでの《限界突破》の魔術は、似て非なるものなのかもしれないって事だ。

 出来ればどちらの秘密も知りたいところだ。


「百一さん百一さん」

「誰だよその百一さんってのはっ!」

「百三十二は思うのです。こんなところで何をしているのか、と」


 いつの間にか名前が変わった俺たち。

 そう、それより何より、俺たちは今、最大級の問題に直面し、膝を抱えながら冒険者ギルドの前に座っている訳だ。

 それは――――


「仕方ないだろ、金がないんだ。金が……」

「稼げばいいんじゃないですか?」

「無理だ。聞けばここは魔王軍と戦う最前線の街。どの討伐依頼も今の俺たちにクリア出来るものじゃなかった。他の街に行こうにも、護衛を雇わなくちゃならないぞ?」

「確かにそうですけど……」

「くそ、結局金なのか。愛だの友情だのあろうが、それを育むには金が必要だって事か! おのれ、ちょっと賢者のすゝめに書いておこう」


 と、俺がペンをとり、懐から賢者のすゝめを取り出そうとすると、後頭部に軽い衝撃を感じた。


「あいた。って、何すんだよ!?」

「正座」

「あん?」

「ちょっとそこに正座しなさい、マスター」


 何やら怒っていらっしゃるポチさん。こういう時のポチには反抗してはいけない。何せ、過去に一年口をきいてくれなかった事もあるくらいだ。

 俺はポチに言われるがままに正座する。


「シロさん、ちょっと地面が痛いです」

「我慢してください」

「はい……それで、どうしたのでしょうか?」

「いいですか、マスター? 我々は冒険者ですが、出来る仕事がない以上、何かやらなくてはいけないのです!」

「でも――」

「でもじゃありません! 見栄を張っている時ではありませんよ! とにかく今は仕事を見つける時です!」


 ……なるほど。

 確かにポチの言う通りではある……か。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「いらっしゃいませぇっ!!」

「あら、新しい人? 大変よねぇ、ここも入れ替わりが激しくて……あ、おカボチャ一つと、お玉ねぎ二つ」

「へい! あ、奥さんこちらのレタスはどうでしょうっ! 新鮮でみずみずしくて美味しいですよ! お肌にもいいですからね! 美人な奥さんですが、更に美しくなれるかと! さ、いかがです?」

「もう、やぁ〜ねぇ。お上手なんだからっ。仕方がないわ、そのレタスも二つお願いしちゃおうかしらっ」

「へへ、毎度ぉっ!」


「おい、何か向こうで大食いのマサキが大食い勝負に負けて、賞金とり逃したってよ!」

「まじかよ、あのマサキが!? 一体誰だよ、マサキに勝ったやつって!?」

「なんでも、誰かの使い魔って話だぜ!?」

「お、おう……ちょっと見に行ってみようぜ!」

「おしきた!」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「……いらっしゃい」

「おうおう、随分若ぇ店番だな? そんなんで武具扱えんのかよ?」

「……扱うのは親方なんで」

「ふん、雰囲気だけは一丁前じゃねぇか。おら、預けてた武器、出せよっ」

「……引き換え票はお持ちで?」

「ったく、おらよ」

「……毎度」


「おい、あのマサキに勝ったやつ! ついに大食い四天王のランドルフを打ち破ったってよ!」

「まじかよ、あのランドルフが!? だがやつは四天王最弱……。キャミィやフドウ、そしてジャンボには敵うまい」

「それがよ、今向こうで四天王最強のジャンボと勝負してるって話だぜ!?」

「お、おう……ちょっと見に行ってみようぜ!」

「おしきた!」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「おにーさん♪」

「なんだよ気持ち悪ぃな……」

「いやー、最近大変じゃないです? 魔王軍の進行とかで〜、お疲れじゃないですか!?」

「あっれ〜、あんちゃんそっちの人!? こんなとこで客引きなんて珍しいなっ」

「こっちの方が〜、屈強なお兄さん方が多いと伺ったので」

「かっかっかっか! 口がうめぇなあんちゃん!」

「うち〜、いい子揃ってますよ〜? どうですー? 可愛い女の子に愚痴の一つや二つ……こぼしてみませんか〜? 今なら空いてる時間帯ですから女の子二人つけられますよ〜?」

「いやー、参ったな〜。ちょっとは負けてくれんだろうな?」

「へい、あっしにお任せくださいっ♪」


「おい、超新星のシロって使い魔が、遂に大食いクイーンのリーリアに挑戦したらしいぞ!」

「まじかよ、あのリーリアに!? ジャンボ二人分って言われる最強の胃袋の持ち主だぞ!? 何もんだそのシロってやつぁっ!」

「とにかく今から始まるらしいから見に行こうぜっ!」

「おしきた! 悪ぃなあんちゃん。また今度行くから、そん時は宜しくな!」

「へへへ、かしこまりました〜♪」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「おいポチ、お前俺の客取るんじゃねーよ!」


 宿に戻り、扉を開けて早々に、ポッコリ膨れた腹をポンポンと叩くポチを怒る。

 呼び方の使い分けが馴染んできたような気がするな。これなら間違える事はないだろう。


「けぷっ……いやー、食べました食べました。しょうがないじゃないですか。いつの間にかギャラリーが増えちゃって……うっぷ……」

「んで、リーリアには勝てたのか?」

「えぇ、圧勝でした!」


 圧勝なら腹に余裕もたせて食べればいいのに……。


「まさか聖戦士候補とあんな再会を果たすとは思いませんでし――ぷぅっ」


 そのお腹、押したら身体の体積以上のモノが出てきそうだな。


「ったく、こんな事のためにポチビタンデッドを作った訳じゃないのに……休み無しで働き詰めとは……」

「でも、そのおかげで、結構お金貯まりましたよね?」

「お前の賞金とやらがとんでもない額だしな。この時代の金で三万ゴルドは貯まったはずだ。これなら護衛を雇って比較的落ち着いた土地に行けるはずだ」

「おー、それは良かったですー! それなら……最後にひと稼ぎして来ますかね!」

「え…………まだ食うのかよ?」

「最強の敵が………………私を待っているのです!」


 何故か、ポチの背中は大きく……当然お腹も大きかった。

 あいつ、何で太らないんだ?

 それよりも最強の敵って誰だろう?


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ポチ曰く、大激戦の末に勝てたらしいけど、ホント、誰と戦ったんだろう。

 そのおかげで必要以上の資金も貯まり、ワンランク上の護衛をお願いする事が出来た。安全マージンってのは大事だからな。

 ソドムとの縁は殆ど無かったが、この一週間、色々な事を学べた気がする。

 そして今、ソドムの北門前で冒険者ギルドを介して雇った護衛を待っているところだ。


「遅いですねー?」

「まさか騙されたか?」

「いくら古代とは言え、冒険者ギルドが騙すのは流石にないと思いますけど……む?」


 ポチが上空に反応し、俺もそれに続き、仰ぐように上空を見て、振り返りながら背後に降り立つ二人を見る。


「あ」

「あ」

「あ」

「…………こいつらか」


 何故引き合う。

 何故引き合わせるのだ……神よ。

 俺たち二人の前に現れた二人は…………一週間前に護衛をしてくれた二人だった。

申し訳ありません。

発売初週故、しばらくCMさせてください。


本作、「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」第三巻が本日発売致しました。

完走目指して頑張ります。是非応援の程、宜しくお願い致します。


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一週間程宣伝させてください。


いつも読んで頂き本当にありがとうございます。


感想・ブックマーク・評価、励みになっております。


これからもアズリーとポチを宜しくお願い致します。


※初日のデータとしては好調だと連絡がありました。皆様、本当にありがとうございます!

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