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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ 作者:壱弐参

第五章 ~古の放浪編~

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137 ソドム

 俺たちが飛ばされた場所。
 それはほぼフォールタウン南部のあのダンジョン付近であっていた。
 五千年は遡っているものの、どことなく知った風景や山々が存在する。
 だとすると、ここから北上すればフォールタウンになる場所に着くのだろう。
 もしかして、それがさっきジョルノが言ってた「ソドム」ってところか? あの時代の地名はほとんど覚えてないからなぁ……。トウエッドが昔からあったのを知ってたからあの時ジョルノに嘘を言えたんだ。それについてリーリアが確認しなかったのは運が良かったとしか言えない。
 で、そのリーリアだが…………俺に「弱すぎ」と一瞥した後、ずっと俺に見向きもせずに先頭を歩いている。
 俺の隣には、呑気に欠伸(あくび)をしている勇者ジョルノ。
 そういえばさっき鑑定眼鏡で見た時、全てのステータスを見る事が出来たな。本当はトゥースで試したかったんだが、どうやら成功していたみたいだな。この一ヵ月、鑑定眼鏡の能力も向上しておいて良かった。
 まぁ、あの桁違いの能力を見た瞬間、これは失敗と思ったんだが、あれ程の戦闘を見せられては仕方ない。
 しかしこの二人、現段階では「聖戦士候補」となっていた。これは一体どういう事だ? 他にも候補がいるという事だろうか?

「それにしてもポーアさん。アンタ、この時代に魔法を使うとは珍しいね」
「そうですかね……はは」
「魔法なんて膨大な知識量を使うもんは、長命なエルフの連中に任せておけばいいと思ってたんだけど、アンタの知識量は確かに凄い。相当な努力をしたんだろうな」

 そうか、エルフの寿命は確か二百年から三百年程だった。
 魔法は人間が編み出したものだが、いざ手をつけるとなると長命なエルフがやった方がいいのか。
 だが、思った通り…………この時代のエルフはまだダークエルフとは呼ばれていない。トゥースの話じゃこの頃から呼ばれ始めたと言っていたが、間違いだったのか?
 半信半疑だが、魔術もまだ存在しないと思っておいた方がいいか。いや、まぁ俺たちのこのレベルじゃ……使わない訳にはいかないんだろうけど、この二人の前で魔術を使って大丈夫か?

「見えたわ。ソドムよ」

 目を細めて遠くを見つめるリーリアの肩越しに、俺もそれを捉える。
 飛ばされた場所から歩き、走り、襲われて一日。ようやく着いたようだ。
 しかしこの場所……やはりというか何というか……。

「マスター、あれって……」
「あぁ……」

 この要所を街にしておかない手はないよな。
 造りや街並みは全く違うが、あれは正にフォールタウンと同じ場所。

「いや~、相変らず殺風景なところだねぇ」
「そんな事はどうでもいいわよ。それより、ポーアのお守りにも限界があるんだからちゃっちゃと向かいましょう」
「へいへ~い」

 聖戦士候補の厳しいお言葉。
 俺には苦笑するしか出来ない。当然ポチも同じ気持ちだろう。
 ジョルノも否定をしないって事は、少なからずそう思っているんだろう。
 くそっ、何が何でもこの世界で力を付けてやる。俺たちが過去に飛ばされたのには理由がある。絶対にだ。
 戻りたくない訳じゃないが、戻る手段を探すのと並行して自分を強化すればいいだけの話だ。
 ここで力を付け、その()を元の時代へ持って帰る。少なくとも、俺の役目はそれだと思っている。

「ぷぷぷぷ、マスター……お守りですって! あー、おかしい!」

 おや? 同じ気持ちのはずじゃなかったのかな?

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 あの二人には、感謝感謝……そして感謝をし、ソドムの入口で別れた。
 ポチが同行を勧めていたのに、別れたのは理由がある。
 確かに側にいた方がいいのだろうが、側にいるという事は、側にいれるだけの力を持たなければいけないという事。
 足手まといになっては、歴史が変わりかねない。
 だからこそ俺たちは、初心に返らなければならない。
 しかし、あんな危険なモンスターが闊歩しているというのに、街の警備があの程度で大丈夫なのだろうか?
 と、思ったのが間違いだった。鑑定眼鏡で見ると、門を見張る男、女たちの実力たるや平均レベル百八十と、俺の知らない世界の住人だった。
 とんでもない実力者が集まっているのか、これが普通なのかはわからないが、それを確かめる必要があるだろう。
 俺とポチは、この時代の冒険者ギルドへとやって来た。造りは古いが新しい建物だ。そう、ここに入り、この時代の冒険者たちの実力を見ておくのだ。
 ふふふふ、我ながら頭が良い。

「…………あぁん?」

 見るからに悪人面の男が…………受付だった。
 扉を潜るなり、眉間に寄る皺と殺意を同時に目にしたのは初めてかもしれない。

「誰だよお前? 見ねぇ顔だな?」
「魔法士のポーアといいます。冒険者の登録をしたくてここへ来ました」

 俺が名乗ると、男はジロジロと見定めるようにジロジロと睨んできた。
 足下から頭頂部まで、それはもう気持ち悪いくらいに見られている。

「ふん」

 俺から目を切った男は、ポチに視線を移し、またもや同じ事を繰り返す。
 ポチはポチで胸を張って、見てもらう事については嬉しいようだ。視線は気にならんのか、お前は。

「こいつの名前は?」
「シロといいます」
「……ふ~ん。このご時世にこんな動物と契約するとは…………物好きな男だなお前。そんなんで冒険者やる気あんのか?」

 これは、「何故モンスターや、強力な獣と契約しなかったのか?」と聞いてるんだな。
 なるほど、種族で使い魔の実力を見る典型的なタイプみたいだな。
 ポチは一瞬ムッとしたが、怒りはしない。こんな事はある意味日常的な事だからだ。元の時代でもそれはあったし、使い魔を差別する者はいる。
 ポチはポチなりにそれを理解しているからな。

「はぁ~あ、めんどくせ。とりあえず、それに手を乗っけな」

 男は顎先でそれを差し、俺の視線を誘導した。
 カウンターの前には、強力な魔力を帯びた小さな魔法陣があった。いや、これはもしかして…………?

「さっさと乗っけな、俺ぁ忙しいんだよっ」

 そう急かされ、俺は言われるがままにそこに手を乗せる。
 こんなものは現代にはなかった。一種の儀式の一つか何かだろうか?
 すると、身体が一瞬金色に光り、そして身体の周りの渦巻くようにゆらゆら覆い始めた。
 それを確認した男は、ポチにもやれと促し、ポチもそれに従った。
 二人の身体を覆う金色のオーラ…………これは一体?
 男は指をとんとんと動かし、カウンターを叩いて鳴らしている。どうやら何かを待っているみたいだ。
 すると、俺の身体を覆っていたオーラが飛散した。と、共に脳内に流れる音。
 ………………………………これは?

「っ! こ、これはまさか……レベルアップッ!?」
「あんだよ、どんな田舎に住んでたんだよ? レベルアップは初めてか? ポーアさんよぉ? どこの世界でも皆、これを使ってレベルアップすんだよ」
「あの、モンスターを倒した時では……」
「それはレベル百までだ。百一以降はこうして、《限界突破》の魔術陣に触れてレベルを上げるんだよ」
「なっ!? これが限界突破の魔術陣っ!? なんでこんなものがここ――――」

 俺が驚いている中、それ以上の声でそれを止めたのは、隣でオーラを飛散させたポチの声だった。

「ままままますたぁあああああああああっ!? 頭の中でレベルアップのファンファーレが止まりませんよぉおおおおっ!!」
「ど、どういう事だよそれっ!?」
「別に驚く事じゃねーよ」

 やれやれという感じで肩を小さく上げた受付の男が、面倒臭そうに説明する。

「レベル百になってからこれまで、それ程の敵を倒してきたって事だろ? 別に珍しい事でもねぇよ」

 そ、そうか…………ポチは大分前からレベル百になっていた。
 という事は、それが解放された今、蓄積されたEXP(経験値)が正常な数値になり、一気に…………。

「つーかお前たち、レベル百でよくこの最前線へやってきたな?」
「最……前線?」
「見たところお前、レベル百一だろう? そんなレベルでこんなとこに来るとか……自殺志願者か何かか? ハハハハッ」
「………………」
「お、治まりました…………」
「どんだけ使い魔をこき使ってたんだか…………。寝首をかかれねぇようにしな、新顔(ニュービー)。ハハハハハッ!」

 受付の男が大きな笑い声を上げると、ギルドの中は笑いの渦となって俺の耳を叩いた。
 だが、俺にそんな事はどうでもよかった。
 第一に、この世界には既に魔術が存在する。
 第二に、限界突破の魔術は設置型、そしてどうやって作ったか超小型の魔術陣だった。
 第三に………………俺は……いや、俺たちは――――――

「マスター……私のレベルは一体……? 頭の中でファンファーレが三十回程なったのはわかったんですが……!」

 ――――――――――――――――――――
 ポチ
 LV:132
 HP:5611
 MP:1498
 EXP:29816310
 特殊:ブレス《極》・エアクロウ・巨大化・疾風・剛力・軽身・剛体・攻撃魔法《下》・補助魔法《中》・回復魔法《下》
 称号:上級使い魔・極めし者・狼聖・番狼・魔法士・要耳栓・名付け親・菓子好き・愚者を育てし者・(はや)き者・剛の者
 ――――――――――――――――――――

「ひ、百三十二だ……」
「百三十二っ!?」

 ――――――――――――――――――――
 アズリー
 LV:101
 HP:3129
 MP:35277
 EXP:10988401
 特殊:攻撃魔法《特》・補助魔法《特》・回復魔法《特》・精製《特》・剛力・剛体・疾風・軽身
 称号:悠久の愚者・偏りし者・仙人候補・大魔法士・上級錬金術師・杖豪・六法士(仮)・恩師・ランクS・首席・パパ・腑抜け・SS殺し・守護魔法兵(仮)・剛の者・(はや)き者・使い魔以下
 ――――――――――――――――――――

 この時代に来て……たった二日。
 俺たちが探し求めていた《限界突破》を見つけてしまった。
申し訳ありません。
発売初週故、しばらくCMさせてください。

本作、「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」第三巻が本日発売致しました。
完走目指して頑張ります。是非応援の程、宜しくお願い致します。

【書き下ろし短編】
「麗しの弾丸ダンカン日和」

【初回購入特典】
「ララのラララ」

【店舗購入特典】
『リナとバラードの譚詩曲バラード』=くまざわ書店様
『不自由なトゥース』=アニメイト様
『人買いのすゝめ』=とらのあな様
『ツァルの苦悩』=WonderGOO様

一週間程宣伝させてください。

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これからもアズリーとポチを宜しくお願い致します。
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