動く人形 中編
フレインはあれからすぐに部屋へ戻り、2人が言っていた「落ちるもの」が何なのかを確かめようとした。
部屋へそっと入るフレイン。まず気になるのが朝にもあったあの人形だ。
床に落ちて…………いない……。
あるはずのところのない人形に気味を悪くしたフレインは、視野を広げるように部屋を確認する。
すると人形はデスク上にポンと足を前に伸ばし、座るように置かれていた。
「えぇ……」
さらに気味が悪くなるフレイン。でも気になっているのは他にある。
「落ちるもの……」
フレインは部屋内の、比較的上の方に設置されてるものを見渡す。照明、棚、エアコン…………報知器……。
フレインは直感で報知器に何かあると察し、イスを報知器の直下に持ってきて、登り、それをチェックした。
構造は比較的簡単で、パカッと開くまでには時間がかからなかった。そして中を確認すると……。
「電池が……ない……」
身がぶるっと震えるフレイン。明らかに2人はまだ、火をメインにイタズラを仕掛けてきている……。
フレインは椅子を降りるとすぐに部屋を出て行き、報知器に合う四角い電池を買いに行った。
「えぇ……なんで……」
報知器に電池を取り付けてもなにも聞こえてこない。起動音の一つくらいはあるだろうと思ってたフレインだったが、さらに悪い状況を想像した。
「まさか……」
目に見える配線は問題ない。だが、機械部分の中を覗き込むと、器用に配線が切断されているのが見えた。
「はあ……」
フレインは椅子から降りて、取り出したスマホで総務に電話をかけた。
電話がつながり、報知器を交換してもらう手はずを整える。フレインは意味もなく部屋の真中を見渡す。
すると、さっきデスクの上で座っていた人形が、仰向けで倒れている。
「…………えぇ……」
言葉を失うフレイン。
「もしもし? どうかされました?」
総務からの声でハッと気がつくフレイン。電話はすぐに終了した。
「…………」
無言のまま人形を見つめるフレイン。
その時だった。
「おい、邪魔するぞ!」
ジュリアが部屋の中に入ってきた。